第2話 初めての召喚

 翌朝空太が目を覚ますとそこは見慣れた自分の家の天井ではなく、石造りの天井だった。


「夢でなかったんだな。不安もあるけどちょっとワクワクするな」


 少し考えていると部屋のドアがノックされ一人のメイドが入ってきた。


「おはようございます。よくお眠りになられましたか?朝食の準備ができています。どうぞこちらへ」


 と言われるまま部屋を後にする。食堂につくとクラスのほとんどの人が集まっていた。朝食を食べ終わると空太達のところへ一人の男が近づいてくる。


「おはようございます。初めまして、私はこの国の神官ライオリックといいます。昨日王様が言われていた召喚時の特別な力についてお話させていただきます。みなさま、『ステータスオープン』と唱えてください」


 空太は言われた通り「ステータスオープン」と唱える。すると目の前に様々な情報の書かれたウインドウが出てきた。


「なんだこれ? Lv1?魔法?スキル……」



相田 空太

Lv.1

HP:26/26

MP:14/14

攻撃力:12

防御力:10

素早さ:9

魔法:火魔法Lv.1

スキル:言語理解、解析



「みなさま唱えてもらえたでしょうか。おそらく今みなさまの目の前には一つウインドウが開かれていると思います。今表示されているのがみなさまのステータスとなります。続いて各項目の説明に移りたいと思いますがよろしいでしょうか?」


 ライオリックが空太達に説明を続けていいか尋ねると声に出さずうなずいた。


「まず上からご自身の名前と現在のレベルが表示されています。レベルは特訓や魔物との戦闘により上げることができ、レベルが上がるとステータスが上昇します。次にHPですが、敵の攻撃を受けると減少します。HPが0になると命を落とします。ですので自分のHP残量には気を付けてください」


 空太は命を落とすといわれ少し体が震える。


「次にMPですが魔法を使用すると消費します。MPが0になると魔力切れの症状を起こし、MPが回復するまでの間行動不能になります。攻撃力、防御力、素早さは見てのとおり、どれだけ相手にダメージを与えれるか、受けるダメージをどれだけ減らせるか、どれだけ早く動けるかを表しています」


「ふむ、この辺りはよくあるRPGと同じようなものだな。魔法とスキルか」


 と空太がつぶやく。ライオリックから説明を受けた内容は今までやってきたゲームと大差なかったためすんなりと受け止めることができた。


「次に魔法について説明します。魔法の欄に書かれているものが現在使用できる魔法の種類です。魔法は生まれつき使えるものと練習して使えるようになるものがあります。練習しても1つも使えない人もいますがみなさまは召喚時に何かしらの魔法を取得しているはずです。スキルの説明に移ります。おそらく言語理解、解析、光の加護のスキルが発現していると思います」


「あれ?光の加護?そんなものないぞ」


 そう呟きながら空太はもう一度自分のステータスに目を通す。


「まず言語理解ですが、これは今私が話していることが分かったり話すことができるものです。解析は自分のステータスの詳細情報が見れたり、他の人の情報が見れたりするものです。1回試してみましょう。見たい項目に『解析』と唱えてください」


いわれた通り空太は気になる項目に解析を唱える。すると、



相田 空太

Lv.1

HP:26/26

MP:14/14

攻撃力:12

防御力:10

素早さ:9

魔法:火魔法Lv.1

 ・ファイアーボール:消費MP……6

  小さな火球を飛ばすことができる

スキル:言語理解、解析



「魔法の詳細情報が出てきた。ファイアーボール?攻撃する魔法か」


 自分の魔法の欄を解析することでカード召喚の詳細情報が現れる。


「見れたでしょうか?自分の情報は詳細まで見ることができますが、他の人のステータスは解析で詳細を見ることはできません。最後に光の加護についてですが、異世界召喚された勇者の最大の特典です。加護の強さによって効果は変化しますが、レベルアップ時のステータス増加量が高くなります」


「なにそれずるい、俺ないんだけど」


 空太は周りの人についているのか確認するため解析を行う。すると強さは異なるが周りの人には全員ついていた。


「俺だけついてないのかよ。ということはレベルが上がっていくにつれてお荷物になるの確定? まじかよ」


 空太はレベルが上がった時の周りとの変化について考える。どう考えてもお荷物になる未来しか見えなかった。


「これで一旦説明を終わります。今日は昼から発現している魔法の練習を行いたいと思います」


 そう言いライオリックはその場を後にする。


「とりあえず他の人のステータスを確認するか」


 そう呟き空太は他のクラスメイトのステータスを確認する。空太以外の全員に光の加護が付いているのを確認し、落胆する。そして逆にステータスを確認され、光の加護が付いてないことが分かると、聞こえないようにこっそりと笑われる。


「みんなついてるのかよ。それにあの4人だけ加護が強かったし」


 ステータスを見て空太が思ったのは光たちのグループの4人だった。



満山 光

Lv.1

HP:29/29

MP:20/20

攻撃力:14

防御力:12

素早さ:12

魔法:光魔法Lv.3

スキル:言語理解、解析、光の加護Lv.5


山本 大河

Lv.1

HP:30/30

MP:12/12

攻撃力:15

防御力:18

素早さ:7

魔法:火魔法Lv.3

スキル:言語理解、解析、光の加護Lv.4


月村 香織

Lv.1

HP:20/20

MP:21/21

攻撃力:8

防御力:7

素早さ:10

魔法:水魔法Lv.3

スキル:言語理解、解析、光の加護Lv.4


宮本 飛鳥

Lv.1

HP:24/24

MP:18/18

攻撃力:12

防御力:11

素早さ:10

魔法:氷魔法Lv.3

スキル:言語理解、解析、光の加護Lv.4



「他の人は加護のレベルが1とか2なのにあの4人だけ高いな。この世界でもあの4人が中心になりそうだな。はあ、それよりこれからどうしよう」



 光たちのステータスを確認した空太はまたこれからのことに絶望する。それでも時間は進んでいき魔法の練習をする時間になり再びライオリックが現れる。


「ここでは魔法の練習はできませんので一度外に出ていただきます」


 そう言われ屋外へと移動していく。城の中庭へと通じる扉をくぐり抜けるとこの世界にきて初めての空を拝む。


「異世界なんだな、やっぱり。こんな光景あるはずないもんな」


 空太の目に映ったのは、中庭に生える芝と少し離れたところに見える城下町、そして空に浮かぶ巨大な大陸だった。


「ライオリックさん、あの空に浮かんでいるのは?」


 光がライオリックに尋ねる。


「あれは空の大陸アルカディアです。日々場所を移動させているので見れたのは幸運ですね。さて一度結界を張るのでその後練習を始めます」


 そう言いライオリックが魔法を唱えるすると 中庭の壁からある空間に薄い膜のようなものが張られる。


「結界を張りました。この中でなら魔法が暴発して街の方へ飛んで行ったり城を壊すことはありませんのでご安心ください。それではあの壁に向かって魔法を打ちます。打ちたい魔法を唱えてください」


 空太達は言われた通り壁に向かって魔法を唱える。すると火や水など様々な物体が壁へと打ち出されていった。


「おお、1回目から唱えられましたね。魔法は使えば使うほどレベルが上がるので出来るだけ使うようにしましょう。予定では発動するまでに時間がかかると思っていましたが予定を早めたいと思います。これから毎日魔法の練習と城の兵士と模擬戦を行ってもらいます。実力が……そうですね、レベルが5になると弱い魔物との実戦に移りたいと思います」


そう言いライオリックが一度城の中へ戻る。数分後一人の兵士を連れて戻ってきた。


「みなさん、こちらがみなさんの模擬戦の相手となる兵士長のガイアさんです。ガイアさん自己紹介お願いします」


「わかった。えー、初めまして。俺はこの城で兵士長をやっているガイアだ。魔法は使えないが近接戦闘には自信がある。これからよろしく頼む」


 ガイアが自己紹介をするその間に空太は解析を使いステータスを確認する。



ガイア・ファールス

Lv.43

HP:261/261

MP:80/80

攻撃力:121

防御力:116

素早さ:82

魔法:

スキル:守護



「本当だ、魔法がない。レベル高いな」


「それでは模擬戦を始めたいと思います。短刀型やロングソード型など様々な長さの木刀を用意してあります。自分に合うものを選んでください」


 と言われ木刀が出される。空太は色々な木刀を持ち試していく


「よし、これにしよう。1番振りやすいし」


 最終的に選んだのは短刀と同じ長さの木刀だった。



 ガイアとクラスメイトとの模擬戦が始まる。ガイアは振られる木刀を軽くいなしながら助言していく。


「そんな力任せに振ってると当たるものも当たらなくなるぞ」


 ガイアは生徒それぞれに的確にアドバイスをしていく。模擬戦を続けていくとだんだんと日が傾いていき。


「今日はここまでにしましょう。お風呂の準備と夕食の準備が終わっています」


 こうして特訓一日目が終わった。


 およそ一か月、毎日城の中庭でガゼルとの模擬戦、魔法の練習を続けてきた。毎日の模擬戦と魔法の使用で空太は少しずつレベルが上がっていきついに明日魔物と戦うことになった。


「ステータスオープン」



相田 空太

Lv.5

HP:37/37

MP:24/24

攻撃力:19

防御力:16

素早さ:15

魔法:火魔法Lv.1

スキル:言語理解、解析



「レベルは5になったな。魔法のレベルはまだ上がらないけど」


 与えられた部屋の中でステータスを確認する。ふとマジックタクティクスのサービス終了のことを思い出し、異世界にきてから使うことのなかったスマートフォンを取り出す。


「そういえばこの世界にきてそろそろ一か月になるな。電波はつながらないけどそろそろサービス終了だしやってみるか」


 そういいマジックタクティクスのアプリを起動させる。オープニングムービーが流れ終わるとログイン画面へとは飛ばずに「マジックタクティクスはサービスを終了いたしました」と表示される。


「やっぱりか。オープニングムービーだけでも見れたしこれでお別れか」


 そう言いながらアプリを閉じようとする。しかし画面に表示されていた文字が変化していく。「再インストールしますか? Yes/No」


「なんだこれ?再インストール?もう終わったのに……。それにインストールのための通信もできないし。でももう終わったし試してみるか」


 空太が「Yes」ボタンを押す。すると画面がホーム画面へと移動し、マジックタクティクスのアプリが消去されていく様子が映し出される。


「おいぃ。なんで消去されてるんだよ。再インストールするんじゃないのかよ」


 空太がどれだけ画面をタップしても消去は止まらない。完全にアプリケーションの削除が終わると画面に「ステータスを確認してください」と表示される。


「ん?ステータスの確認?ステータスオープン」


空太が泣きそうな声でステータスを表示させる。


「何にも変わってないじゃん」


 変化のないステータスが目に入る。もう一度スマートフォンに目をやると、再び文字が表示されていた。「魔法スロットがいっぱいです。新しい魔法と交換しますか? Yes/No」「新魔法:カード召喚Lv.1」


「魔法の入れ替え? 魔法は一種類だけしか覚えられないのか。これも1つの運命かもしれないし、Yesっと」


 Yesボタンを押し魔法を入れ替える。するとステータス画面に表示されていた火魔法が消えカード召喚が新しく刻まれる。詳細情報を見るためか解析を唱える。



相田 空太

Lv.5

HP:37/37

MP:24/24

攻撃力:19

防御力:16

素早さ:15

魔法:カード召喚Lv.1

 ・使用コスト……0/10

  コスト内のカードを召喚することができる。

 ・ドロー:消費MP……10

  MPを消費してカードを引くことができる。

 ・召喚:消費MP……20

  MPを消費してドローしたカードを召喚する。

  召喚したカードは固有の耐久値が0になるか一日経過することで消滅する。

スキル:言語理解、解析



「ドロー?召喚? 1回試してみるか。ドロー!」


 空太が魔法を唱える。すると手元に1枚のカードが現れる。


「おお、なんか出てきた。ってこのカード、マジックタクティクスのカードじゃないか。えっ?まじで。マジックタクティクスのカードが実際に召喚できるの?」


 大好きだったゲームのカードが手元に現れ喜びを隠せない。すぐに召喚したいがMPが全然足りなかった。


「すぐに召喚したいけど、MPが足りないし回復するまで待つか。でも楽しみだな」


 数時間後MPが召喚できるだけ回復した空太はさっそくドローしたカードを召喚する。


「召喚!」


 唱えると同時に部屋の中が明るくなる。光が収まると空太の目の前にはカードに描かれていたモンスターが現れていた。


「本当に召喚出来た。めっちゃ可愛いんだけど」


 現れたのは赤色の毛並みの入った子犬だった。召喚した子犬を抱きしめつつ空太は解析をかける。



火炎の子犬

コスト:6

Lv.1

HP:80/80

攻撃力:35

スキル:①火球Lv.1



「俺より強いし……。まあいっか、これからよろしく頼むな」


「わう」


 召喚に成功した空太は子犬とともに眠りについた。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る