第3話 ギルド

「おはようございます。朝ですよ、相田さ……きゃあああああ」


 空太は起こしに来たメイドの叫び声で目を覚ました。


「ん。もう朝か」


「そ、それなんなんですか。魔物ですよね?なんで城の中に」


 そこへ悲鳴を聞きつけた兵士が部屋に入ってくる。


「どうしたんですか?ってなぜ魔物が」


 入ってきた兵士は火炎の子犬に向けて武器を構える。そこへ


「やめてください、こいつは俺の相棒です。武器をおろしてください」


 と空太が間に入る。


「そこをどけ。人類に仇なす害獣がこの城の中にいてはだめだ。どかないとおまえも斬るぞ」


「誰が何と言おうとここはのきません」


 空太と兵士のやり取りが徐々にヒートアップしていく。すると他の部屋にいたクラスメイトもだんだんと集まってくる。


「どうしたんだ?相田君、こんな朝から。それにその子犬はいったい」


 空太と兵士の間に光が割って入る。


「こいつは魔物だ。そしてそこの少年がその魔物を庇っている」


「どういうことだい?それにどこから……。それより兵士さん、ここは一旦王様に報告してどうするかを決めましょう」


「王様のもとへ魔物を連れて行けというのか」


「檻かなにかはありますか?それに相田君もそれでいいかな?」



 子犬は一旦檻に入れ王様と話し合いをするということで話がまとまった。王様にあいに行く間も兵士は、檻に入った子犬と庇った少年を睨んでいた。



 王の間でアルカルドに説明を入れる。

「ふむ、そういうことか。相田君とやら、その魔物はどこから拾ってきたんじゃ?」


「こいつは拾ってきたんじゃありません。俺が召喚しました」


 空太の召喚したという発言に周りに控えていた兵士たちがざわつく


「魔物を召喚?あいつは人間なのか?」


「皆の者静粛に。相田君、この城の中でなぜ魔物を召喚したんじゃ」


「魔法を試してみたかったからです」


「ふむ、そなたの処遇じゃが……」


「王様、そこの少年は魔物を召喚することができる危険な存在です。即刻処刑する方がいいと思われます」


 最初の兵士が処刑を求める。するとそれに賛同し、多くの兵士たちが声を上げた。


「相田君、そなたに一つ問う。お主は人間か?気分を悪くしたのなら済まない。しかし魔物を生み出すのは魔族しかできないことなんじゃ」


「俺は人間です。こいつが召喚出来たのも魔法のおかげです」


「ふむ、しかし城の中、さらに言えば国の中で魔物が召喚できる者がいるのは危険すぎる。お主にはしばらく過ごせるだけの資金を与える。数日のうちにこの城、いやこの国から離れてくれんか?」


 突然国を出ていくよう言われる。しかしアルカルドの言うことももっともであったため、何も言い返すことができなかった。


「わかりました。ご迷惑をおかけしすみません」


 その日の昼過ぎ、1匹の子犬を連れて歩く少年が1人、城門から街の中へと消えていった。



「この世界にきて1か月たつけど初めて城の外に出たな。でもまさか魔法のせいで追い出されるとは思わなかったな。とりあえず資金はもらえたけど有限だし、まずはお金を稼ぐ方法と泊まる場所を探さなきゃな」


 空太がこれからすることを決めながら歩いていくと武装した人がやけに出入りしている建物を見つけた。その看板には『冒険者ギルド』と書かれていた。


「冒険者ギルドか。ちょっと入ってみるか」


 そう思った空太は冒険者ギルドのドアを開ける。すると外からは想像のつかなかった喧騒に包まれる。ある場所では装備をしっかりとつけた人とそうでない人が話し合いをしている。またある場所では酒を飲みあい騒いでいた。壁の近くでは壁に貼られている紙を見ながら考え込んでいる人もあった。


「とりあえず受け付けっぽいところに行ったらいいのかな」


 部屋の中央の奥にあるカウンターのもとへ歩いていく。


「いらっしゃいませ。依頼の申し込みですか?それだと向こうのカウンターの方になります」


「いえ、ここはどういう場所かちょっとわからなくて」


「えっと、ギルドへお越しになるのは初めてでしょうか。簡単な説明をしましょうか?」


「はい、お願いします」


「かしこまりました。ここ、冒険者ギルドでは登録された冒険者の方と依頼者の取持ちをさせてもらってます。依頼者の依頼の難易度とそれに見合った冒険者を紹介、もしくは冒険者にそこの壁に貼られた依頼を選んでもらい依頼を受けてもらっています。依頼を達成すると依頼者から報酬をもらいます。ここまでは大丈夫ですか?」


「はい、依頼をこなして報酬を得るでいいんですね」


「はい。依頼者が冒険者に直接交渉しにくかったり、冒険者がきちんと報酬を得られるように冒険者ギルドは存在しています」


「なるほど。冒険者になるには何か条件とかがあるんですか?」


「えーと、登録料と冒険者証を作るために少しお金がいるのと、犯罪歴がないかを調べさせてもらいます。犯罪歴があるとすみませんが登録はできません」


「わかりました。冒険者になりたいのですがどのカウンターに行けばいいですか?」


「登録するのはこちらのカウンターでも大丈夫です。まずこちらの水晶に手をかざしてください」


 空太は言われた通り水晶に手をかざすが何の変化も起きない。


「はい、大丈夫です。犯罪歴があると水晶の色が変化しますので。登録料の方ですが銀貨1枚と、冒険者証の発行に銀貨1枚の計銀貨2枚になります」


 空太はアルカルドに渡された銀貨を2枚渡す。アルカルドに渡されたのは金貨1枚と銀貨5枚だったためまだ余裕があった。


「ありがとうございます。冒険者証ができるまで冒険者について説明させていただきます。最初に自己紹介をさせていただきます。私は冒険者ギルドの職員マリーと言います。よろしくお願いします」


「よろしくお願いします。俺は相田 空太です」


「はい。まず初めに冒険者にはランクがあります。下はFから上はSSSまであります。冒険者ランクはDまでは依頼を達成することで上がります。Cから上には昇格試験を受けていただき、合格すると昇格することができます。また各ランクで1か月間依頼をこなさないとランクが1つ下がります。Fランクだと冒険者でなくなりますのでご注意ください」


「なるほど、依頼の方にもランクがあるんですか?」


「はい、難易度に応じてランク分けがされています。現在の冒険者ランクと同じランクのものまで受けることができます」


「なるほど、ありがとうございます」


「いえ、次に依頼の受け方についてです。依頼の受け方は全部で3つあります。1つ目がそこの壁に張り出されている依頼書をこちらのカウンターまで持ってきてもらい依頼を受ける方法です。これが一番多い方法ですね。2つ目は依頼者からの直接交渉です。ある程度ランクが上がると依頼者から直接依頼をされることがあります。そのときはあそこのテーブルを利用して、依頼内容の確認や報酬の取り決めを行ってください」


「なるほど、しばらくは壁の依頼を受けてランクを上げることになるな」


「最後は私たち冒険者ギルドからの依頼となります。倒すのが困難な魔物の討伐や素材の採取を主に依頼します。ですがギルドからの依頼は冒険者ランクがA以上の冒険者だけなのでまだまだ先のことになります」


「ありがとうございます。最後にすみませんが教えてもらいたいことがあるんですが」


「はい、何でしょう」


「恥ずかしい話ですが、貨幣の価値と安い宿屋を教えてください」


 マリーはびっくりした様子を見せるがすぐに「わかりました」と言い説明を始める。


「まずこの国では5種類の貨幣を使用しています。安いものから順に銅貨、大銅貨、銀貨、金貨、白金貨です。大銅貨は銅貨10枚の価値、銀貨は大銅貨10枚の価値があります。金貨、白金貨も同様に1つ下の貨幣10枚と同じ価値があります」


「ありがとうございます。すみませんこんなこと聞いて」


「いえいえ大丈夫ですよ。あとは宿屋の場所ですね」


 そう言うとマリーはカウンターの下から地図を取り出す。


「ここが冒険者ギルドになります。この前の道をまっすぐ行きこのお店を曲がり、路地を進んでいくと、ここが宿屋になります。この地図も一緒に渡します。あと少しで冒険者証もできると思いますのでもう少しお待ちください」


 宿屋への行き方をペンでなぞりながら詳しく説明をする。説明が終わるとマリーは地図を空太に差し出す。


「ありがとうございます」


 そう言うとマリーは奥の部屋へと入っていった。


「とりあえず依頼書を見てくるか、Fランクだから簡単なものだけだと思うけど」


 依頼の張られている壁のもとへと移動する。


「薬草の採取、荷物の運搬……。いろいろあるな。とりあえず薬草の採取をやってみるか」


 そう呟きながら受ける依頼を決める。


「まだ冒険者になってないから受けれないけどとりあえずお金の面は大丈夫になったな」


「相田様、冒険者証ができましたのでカウンターまでお越しください」


 建物内にマリーの声が響き空太が呼ばれる。


「相田様、最後に冒険者証に魔力を入れてください。魔力を入れることで最後の手続きが完成します。やり方は先ほどの水晶と同じように手をかざしてください」


「わかりました」


 水晶の時と同じように手をかざす。すると何も書かれていなかったカードに文字が浮かび上がる。


「ありがとうございます、もう大丈夫です。これで冒険者の手続きは終了です」


「ありがとうございました。さっそくなんですけど依頼を受けても大丈夫ですか?」


「はい、大丈夫ですよ。では依頼書を持ってきてください」


 空太は再び壁の方に行き薬草採取の依頼書を手に取る。


「すみません、これでお願いします」


「薬草の採取ですね。一応薬草のサンプルをお持ちします」


 マリーは奥の部屋に行き薬草のサンプルをとる。


「これが薬草になります。薬草は街の外に生えていますので、依頼書に書いてある本数採取してこちらにお持ちください」


「わかりました、ありがとうございます」



 そういうと空太は冒険者ギルドを後にする。外に出た後マリーからもらった地図を見ながら街の門へと移動していった。

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