第21話 道化師
一晩たち空太達は昨日と同じくギルドで魔石の回収の依頼を受け迷宮へと出発する。迷宮への道中、フォーチュンに抱きかかえられていた電気うさぎが光の粒子に変わっていく。
「あ……。マスター、うさぎさんが……」
フォーチュンは突然抱えていた電気うさぎが光の粒子になって消えたため、泣きそうな顔で空太の方を見る。
「ちょうど1日経ったんだな。フォーチュンごめん、伝えてなかったな。俺の召喚したカードは1日経過するかHPが0になるとさっきみたいに消滅するんだ」
「え?でも、私もマスターに召喚されたのに消えてないですよ」
フォーチュンは自分も空太に召喚されているのに電気うさぎみたいに消滅しないことに疑問を持ち空太に訴えかける。
「そのことなんだけど、フォーチュンはちょっと違う方法で召喚してるんだ。だからHPが0になると消滅するけど時間の経過ではしょうめつしないんだ」
「わかりました……。でも召喚できるのは1回きりじゃないですよね?もう会えないとかじゃないですよね?」
初めて召喚した火炎の子犬が消滅したときの空太と同じことをフォーチュンは口にする。
「それは俺にもわからない。俺も初めて召喚したカードが消滅したときはフォーチュンと同じことを考えたんだけど……。多分だけど、同じカードをまたドロー出来たら召喚できると思うよ」
空太は確信のない答えをフォーチュンに伝える。もしドロー出来るとしてもマジックタクティクスに収録されていたカードの種類は数百枚はあったため、1度引いたカードを引き直すのにはかなりの回数ドローしなければならない。
「うう、わかりました。またドロー出来たら召喚してください」
そんな約束をしながら空太はドローしたカードのうち1枚を手に取る。
「フォーチュンごめん、今日召喚するカードは昨日の電気うさぎと違ってもしかすると怖いって思うかもしれないんだけど……」
「えっと、たぶん大丈夫ですよ。その、」どんなのを召喚するんですか?」
「言葉で説明するより見た方が早いかな。『召喚:笑う道化師』」
魔法を発動すると2人の目の前に1人のピエロが現れる。その顔は特徴的な赤い大きな鼻と、まるで笑っているかのようなメイクが施されていた。
召喚された道化師は、2人の方を見ながらおどけた様子で声を出さずに礼をする。空太は何も気にせず「よろしく」と声をかけるが、フォーチュンは声を出すどころかピクリとも動かない。そこには放心状態のフォーチュンの姿があった。
「おーい、フォーチュン?起きてるかー」
空太がフォーチュンの目の前で手を振る。すると、ビクッと体を震わせてフォーチュンの意識が戻る。
「はっ。大丈夫です、起きてます。その今日召喚するのはどんなカードなんですか?」
意識の戻ったフォーチュンはさっき召喚した道化師のことは忘れた様子で空太に質問する。
「えっとここにいるピエロがそうなんだけど……」
空太が道化師の方に手を向けて伝え終わると同時に笑う道化師はどこからか出したボールでジャグリングを始める。最初は3個だったボールが4個、5個とだんだんと増えていくにつれてメイクの下の顔がだんだんと笑った顔になっていく。すると徐々にメイクした顔が崩れていく。それを見たフォーチュンは「きゅう」と声が漏れるとパタリと倒れた。
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