第53話 急用

「僕の方もまだだったね。僕の名前はレオンハルト。こっちの大きいのがマウリでこっちがククロ」


「レオ、こいつらって?」


 レオが後ろの二人の名前を言ったところでマウリが声を上げる。


「ああ、彼らは昨日初めてアレントまで来た人なんだ。それでちょっと出張所とかの場所を教えたんだ」


「なるほど、初めて来た冒険者か。それならここまでの道のりで何だか拍子抜けしてるんじゃないか?最初の迷宮に比べて1本道で単調だったり、魔物の強さもそこまで強くなくて」


 マウリと呼ばれた大男が空太にそう話しかける。ここまで空太が戦ってきた魔物はリブラルでもよく戦ったゴブリンがほとんどで強さも空太のレベルが上がったのもあるがそこまで強いものはいなかった。


「まあ、ここは6層からが本番だからな。といっても1本道は最後まで続くけど」


「素直に6層から気をつけろって言いなさいよ」


 マウリがそういうと隣に居たククロと呼ばれた女がやれやれといった様子で突っ込みを入れる。突っ込まれたマウリは小声で「だって恥ずかしいし」とつぶやいていた。


「うん、マウリの言う通りアレントは次のボスの階層の先6層からが始まりといってもいい。まあ気を付けてね」


「ありがとうございます。そいえばさっき言ってた最後まで一本道って……。もしかしてレオさんたちってこの迷宮を……」


「うん、さっき攻略が終わっ――」


「レオさーん、大変です」


 レオの声は階段とは反対の方向――空太が進んできた方向から走ってくる帽子をかぶった男の声にかき消された。男はそのままレオのもとに走ってくると息を切らしながら耳打ちをする。


「なんだって。本当かい?マウリ、ククロ急いで国に戻るぞ」


 レオは2人にそう言うとバッグからマジックアイテムを取り出し壁に投げつけた。マジックアイテムは壁に当たった途端に砕け光を放つ穴が開いた。


「空太君、ちょっと慌ただしくてごめんね、攻略頑張って。それじゃ」


 マウリ、ククロ、伝言を伝えた男が穴の中に入っていき最後にレオが空太に声をかけて穴に入っていった。レオの体が完全に穴の中に入ると徐々に穴の大きさは小さくなっていき元の壁に戻った。


「行っちゃいましたね」


「うん、とりあえず5層に集中しよう」


 そう言うと空太達は階段を登っていった。



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