cigar

木村凌和

幕間 いつか

 じりじり。煙草の先を火が燃やしている。ゆらりゆらりたなびくしろい煙が、視界の真ん中を縦に割っていた。いつまで経っても黒いままの、かつて屋敷であったもの。木までが真っ黒く焦げたまま突っ立っている。

 焼け跡に動くものはない。煙草の煙だけが一本だけでしろく遊んでいる。

 ここは、いつまで経っても変わらない。これからもそうだろう。俺と同じだ。

 メイズはわざと口角を上げて、咥えていた煙草をつまんだ。口から吐き出した息と煙が合わさって視界をしろく埋める。煙は嫌いだ。

 これっぽっちだけになった煙草を指先で弾き、身体を反転した。向けた背の向こうに、過去の炎がちらつく。もう燃えてなどいない炎が、熱が、この背を焼き尽くしてしまいそうだ。

 そんなものはない。なくて構わない。この振り切れない幻の中にさえあれば、俺は、私は、いつまでもどこへでもいける。

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