第27話「報われない思いを抱く者」
「おのれ……ん? おおそうじゃった。思い出したぞ。よし」
「何?」
「なあお前さん、ワシらの仲間にならんか?」
ダイマドはいきなり光を勧誘しだした……って何で!?
「ねえ、それ千年前にも言ったね。でも断ったよね」
あ、そうだったんだ。以前もかよ?
「ああ。あの時のお前さんが報われない恋をしとったからのう」
それを聞いた光は悲しそうな目で振り返って俺を見たが、すぐにダイマドと向き合った。
「どうやら今もみたいじゃな。どうじゃ? ワシなら性転換くらいできるぞ。いや、男のままでもワシの力なら。だから」
「断るよ。そんな小細工で振り向いてもらっても嬉しくない」
光は首を横に振った。
「そうかい。では惜しいが、死ね」
ダイマドの手に光り輝く球体が現れた。
あれって何だ!?
「あ、あれは……近いどころかほぼ神力だ!?」
弘法大師様がダイマドを見ながら叫んだ。
「え、そうなんですか!? でもあいつ気づいてないんですよね!?」
「ああ。あと一歩進めば自ずと望みの力が手に入るのに。むしろ何故気づかん?」
「あいつは頭が良すぎるから却ってわからないんですよ」
マウがまた口調を変えて弘法大師様に話しかけた。
「なるほど。そうかもしれませんな……様」
え?
弘法大師様がマウの事を別の、たぶん元の名前で言ったんだろうけど聞き取れなかった。
けど「様」付けで呼ぶって?
「なあマウ、お前って何者なんだよ?」
俺はマウに尋ねたが、
「私は……ふにゃ? あたしって何だったっけ?」
「言う前に元に戻るなー!」
「ねえ、ダイマドさん」
あ、光がダイマドに話しかけてる。
「なんじゃ、気が変わったか?」
「ううん、少し教えて欲しいんだ。どうして千年前も今も僕を誘ったの?」
「さっき言ったじゃろが。お前さんが報われん思いを抱いているからと」
「うん、でもそれを利用して同士討ちとか悪巧みしてる雰囲気を感じなかった。まるで本当に僕を応援してくれているようだったんで」
光がそう言うとダイマドが、
「……どうせ皆死ぬんじゃ、冥土の土産に教えてやろう。ワシもかつて報われん恋心を抱いとった」
「え?」
「たとえ宇宙がひっくり返っても叶わん思いをのう。そのせいかな、同じ様に悩んでいる者を見るとついお節介をしたくなるんじゃ。それがたとえ敵であってものう」
ダイマドはほんの少しだがその皺だらけの顔に笑みを浮かべ、優しい目で光を見つめていた。
「どうやらあやつには人の心の痛みを知り、それを思いやる気持ちがあるようだな。だから神力が使えるのかもな」
弘法大師様がダイマドを見て呟いていた。
「ダイマドさん、もっと早くそれ聞きたかったよ」
光は涙を流していた。
「ヒャヒャヒャ、聞いてどうしてた? 味方になったか?」
「うん、そうだよ」
え!? な、何言ってんだよ!?
「でもね、それは僕が宇宙魔王の味方をするのじゃなくて、あなたが僕達の仲間になって欲しかったって事だよ」
あ、そういう事か。驚かすなよ。
「それは無理じゃ。ワシは宇宙魔王様とあの方を裏切る事は死んでもせぬわ」
「そうだよね。だからせめて僕があなたを」
そう言って光は涙を拭い、両腕を前に突き出した。
「ふ、ワシとて何もしてなかった訳ではない。たとえお前さんが覚醒しても、千年前のようにはいかんぞ」
「それは僕も同じだよ。今の僕は前世の自分の一族の子孫、そして伝説の大剣豪で大河童の子孫でもあるんだから……はあっ!」
光が気合を入れたかと思うと、その右手が赤く輝きだし、そして左手は青く輝きだした。
「な、何!? それはまさか!」
ダイマドがそれを見て信じられない、という表情になっていた。
「あ、あれって何なんだ!?」
「あれは『妖の炎』と『清き水』の力。まさか光殿があの力を両方同時に使えるなど私にもわからなかったぞ」
弘法大師様も予想外だったのか、あれって。
「弘法大師様。『清き水』ってのは
兄ちゃんが尋ねると弘法大師が
「皆知っておろう。光殿のご先祖、池免武蔵殿がお鈴殿という女性と契った事を」
「にゃあ。あのおじいちゃん祝言もあげず(ズキューン!)(バキューン!)してたんだったにゃ~」
ドゴオッ!
「せっかく弘法大師様が綺麗に言ってんのに台無しにすんなー!」
「痛いにゃー!」
「……まあ続きを聞いてくれ。そのお鈴殿の父君は今の御代でも有名な剣豪の息子だが、母君は炎を操る妖狐一族の者だった。そして奇しくもお鈴殿は前世の光殿と同じ様に生まれたのだ」
「ええ!? と、という事は前世の光って人間と妖狐のハーフ? じゃあ」
「いや。お鈴殿は前世の光殿の子孫ではなく、一族の別の者の子孫だ」
俺が尋ねようとしたら弘法大師様が先に言った。
「え、前世の光には子供がいなかったんですか?」
「光殿は生涯独身だったからな。聞いているのだろ?」
……そうだ。前世の俺は生涯独身だったって。
だから光も。
「それは後でな。ところで『水』と『炎』、両方の力を合わせるとどうなる?」
「あ、そういえば漫画にそんなのがあったな。あれは水じゃなくて氷だったけど」
「ぐ、このままやられてたまるか! 喰らえい!」
ダイマドが光の球体、エネルギー弾を放つと
光が両手を組んで二つの力を一つにし、そして叫んだ。
「妖武火水波!」
その手から渦巻き状に合わさった赤と青の光がエネルギー弾目掛けて放たれ、
それらがぶつかったが赤と青の光があっという間にエネルギー弾を消し去り、その勢いは衰えずダイマドに向かっていき
「な、ギャアアアアーーー!」
それをかわし切れなかったダイマドは消滅した。
「もしあなたがまた生まれ変われたらさ、できれば仲良く、ね」
光はダイマドがいた辺りに向かって手を合わせながら言った。
――――――
「とうとう私だけになってしまったか。だがこの宇宙魔王軍司令官ネイロ、命に変えてもあの力を」
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