第二部

第18話「新たな始まり」

 寄生宇宙人ウイル星人をやっつけてからどのくらい経ったっけ?

 とにかく俺達は進級して高校二年生になっていた。

 その間にもいろいろな侵略宇宙人が攻めてきたが、まあなんとか撃退していた。


 

 そして夏休みも終わり、二学期に入ったある日の登校途中


「あと一年待てば政彦と祝言あげれるにゃ~。そしたら毎日(ズキューン!)して……ジュル」

 マウがヨダレ垂らして戯けた事をほざいていた。

「そうはいかないわよ。政彦は私と」

 奈美が何か呟いてるが聞こえなかった。


「ところで入谷先生、どこ行っちゃったんだろうね」

 光が心配そうに呟いた。

 

 俺達の学校では入学したら三年間そのままクラス替えはないので、本来なら入谷千代先生がずっと担任のはずだったんだが……。

 

 それは春休みの事だった。

 理科室で爆発が起こって大破、その直後から入谷先生は行方不明。

 先生が爆発の前に理科室に入っていったのを目撃した生徒がいたので、それに巻き込まれてとも言われてるが、

「でもご先祖様が、先生はあの世にいなかったって言ってたわよね」

 奈美が誰にともなく尋ねる。


「じゃあどこか違う世界に行ったのかにゃあ?」

 マウがそんな事を言ったが、違う世界ってようするに異世界か。

 そんなの漫画だけ、とも限らんか。

 だって目の前に妖怪がいるし宇宙人だって攻めて来たんだし、三百年前のご先祖様が普通に話しかけてくるし。


「まあ、亡くなっていないってわかるだけマシか」

「そうね。ご先祖様はまだ先生を探してくれているようだし」

「ああ、ずっと入谷先生だったらよかったのに、なぜアレが俺達の担任」

 俺がそう言った時、

 

 ゴン!

 

 後ろから誰かに頭を殴られた。

「イテテ……誰だ、ってああっ!?」

「誰がアレだ。全くこのガキは」

 そこにいたのは半袖の白いカッターシャツに紺色のズボン。

 短く揃えた髪、鋭い目つきの男性、それは

「あら、信一兄ちゃんじゃないの」

「おい奈美、今は先生だろが」

「あ、そうだったわね。ごめんなさい」

「おいおい。お前らは親父の身内だってのを隠してるんだろ」


 この人は俺達の担任で岡崎信一おかざきしんいち

 そして俺のじいちゃんの弟である理事長の息子。

 だから俺の父さんと奈美の母さんの従弟になる。


 教師になってまだ二年の二十五歳、俺と奈美からすれば先生ってより「兄ちゃん」だった。


 あと何で大叔父さんの子供がこんな若いかと言うと、じいちゃんと大叔父さんは歳が二十歳も離れているからである。


「うん。大丈夫とは思うけど特別扱いされたら何かなあと思って」

 奈美が

「あのなあ、息子の俺ですら全然特別扱いされてないんだから気にしすぎだと思うぞ。まあいい、それより早く行かないと遅刻すっぞ」

「え? うわあああ!?」

 俺達は慌てて学校へと走っていった。







 その頃、月の裏側から政彦達の様子を伺っている者達がいた。


「ふん、今の地球にも強い者達がいるのだな。だが俺達の敵ではないな」

 全身に毛が生えた筋肉質のオーク型宇宙人がそう言うと、


「油断するな。地球にはあの戦士達がいる」

 黒い鎧に身を包んだ宇宙人がそれを制した。


「おい、なんだあの戦士達とは?」

「わからぬか?」

「わからん」

 オーク型宇宙人が首を傾げていると、


「司令官、それはもしかして約千年前に我らや宇宙魔王様を倒した戦士達の事ですか?」

 黒鎧の宇宙人に尋ねたのは、髪も肌も白く顔つきが整っている女性宇宙人だった。

「司令官」と呼ばれている事から黒鎧が彼らのリーダー格らしい。

「そうだ。その戦士達だ」

「奴等の事か。クッ、奴等さえいなければ地球は宇宙魔王様の物に。そして今頃は地球を中心にした宇宙帝国ができていたのに」

 オーク型宇宙人は昔を思い出して歯ぎしりしていた。


「ですが司令官、地球人は千年も生きられませんし、冷凍睡眠装置を作る科学力もないはずです。だからもう生きてはいないでしょ?」


「いや、今もいるぞい」

 答えたのは皺だらけの横に長い顔で肌が茶色、その肌と同じ色のローブを纏った老宇宙人だった。


「参謀さんよ、それはどういう事だ?」

 オーク型宇宙人が老宇宙人に尋ねる。


「あそこにいる奴等こそがそうなのじゃ」

 老宇宙人は映像に映っているマウや政彦達を指差した。


「おい参謀さんよ。あいつらはたしかに強いが、全然姿が違うし別人だろ?」

 オーク型宇宙人が訝しげに言う。


「奴等は『輪廻転生』で現代に蘇ったんじゃ。もっとも最強だったあのおなごは我らの後にやって来たマウス星人を倒した後、現代まで冷凍睡眠と同じ状態になっていたようじゃが」

「な、なんだと!?」

 オーク型宇宙人はそれを聞いて驚き叫んだ。


「参謀殿、彼女はともかく他の者達が狙ったようにこの時代に輪廻転生できるものなのでしょうか?」

 女性宇宙人がおそるおそる尋ねると


「忘れたのか。彼等がかつて宇宙魔王様を倒した力は科学力ではない、それは」

「そうだ。『神力』『法力』『霊力』『妖力』とか言う」

「我々が未だ解明出来ない力ですね」

 オーク型宇宙人と女性宇宙人が続けて言った。


「ああそうじゃ。あの力はこの宇宙広しと言えど地球にしか存在しない。己で言うのもなんじゃが、宇宙一であるワシの頭脳でも解明できん。超能力とも違う。いったいあれは何なのじゃ?」

 老宇宙人は首を傾げた。


「……もし奴等が完全に目覚めてしまうと、我らが勝てる確率は低くなるな」

 黒鎧がそう言うと、


「それなら今のうちにぶっ潰せばいいだろ。司令官、俺が行ってこようか?」

 オーク型宇宙人が指をボキボキと鳴らしながら言った。

「ああ頼む。だが油断はするな」

「わかってる、任せとけ!」




「にゃあ~、何か今まで以上の敵が来る気がするにゃ……でも絶対に守るわ。私と皆で一緒に……ふにゃ?」

 マウの口調が一瞬変わったが、本人も何故かわからなかったようだ。

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