第19話「敵はとんでもない奴」
その日は何事も無く授業も部活も終わり、家に帰った。
そして夕飯時になった頃、信一兄ちゃんが家にやってきた。
昼間に「夜になったら家に行くからな」とは聞いていたが。
「なあ兄ちゃん、どうして光もいるんだよ?」
兄ちゃんは光を連れてきていた。
「この話は宇宙人達と戦ってるメンバー全員に聞いて欲しいからだよ」
そのメンバーとは俺、マウ、奈美、ラッテ、光。
この五人で人知れず戦ってきたんだ。
「お前達には本当に感謝してるよ。できれば俺も一緒に戦いたいんだがな」
兄ちゃんは申し訳なさそうに言ってくれた。
「信一は別の敵と戦ってただろうが。やはり人知れず、ずっとな」
いつの間にか玄関先に来ていた父さんがそんな事を言ったが、別の敵って?
「あ、政彦はまだ知らなかったんだな。俺の家、岡崎家の役目を」
「え、何それ?」
「まあ、話は夕飯食べてからにしようか。さ、信一も光君も」
父さんがそう言った。
そして夕飯後、兄ちゃんが鞄から一冊の本を取り出してテーブルの上に置いた。
それはかなり年季が入っているようだった。
「その本はうちのご初代、岡崎三郎様が何年もかけて纏めたものだ。言い伝えではこれは本当に必要な時が来るまで中身が見れないように、特殊な封印を施していたそうだ」
「そんなものが……そしてそれを読めたという事は、今がその時」
「ああ、そういう事だ」
「信一兄ちゃん、そこには何が書かれているのよ?」
奈美が尋ねた。
「簡単に言うとな、今から約千年前、この地球に星からの脅威が現れたんだ」
「え、それってマウス星人の事?」
そう言った時ラッテがビクッとした。
彼女は今は地球人の姿をしているが、そのマウス星人であるし。
「いや違う。マウス星人の前に攻めてきた奴等がいたんだよ。マウちゃんは実際に見てるから知ってるだろ?」
兄ちゃんはマウの方を見て尋ねたが、
「ふにゃ~? 覚えてないにゃ~」
マウは首を傾げてそう言った。
「え、マジで?」
兄ちゃんの顔に縦線が走ってるように見えた。
「兄ちゃん、マウは見た目中学生くらいに見えるけど、中身は千歳以上の婆さんだからボケ……グエエ!?」
「政彦~、あたしだって言ってほしくない事あるんだにゃ~」
「わ、わかったから放してくれ!」
マウがドス黒いオーラを放ちながら俺の首を絞めてきた。
こいつもそういうの気にしてるんだな。
「うーん、当事者なら書かれてる事が本当かどうか、書かれていない事も知ってるかと思ったが、覚えてないんじゃ仕方ないな」
兄ちゃんは腕を組んで俯いた。
「なあマウ、もしかして封印された影響でとかか?」
俺はふと思って聞いてみた。
「たぶんそうだにゃ。でもちょっとだけ思い出したにゃ。たしかにマウス星人の前に何かと戦っていたにゃ」
「何かってそこに書かれている奴だよな。兄ちゃん、そいつってどんな奴?」
「ああ。ここに書かれているのは宇宙魔王とかいう奴だ」
「へ、宇宙魔王って何?」
「ああ、そいつは全宇宙を支配して一大宇宙帝国を築こうとしていた奴らしい」
「で、千年前に地球侵略に来たけどマウが倒したと?」
「マウちゃんだけじゃなくて他に五人の戦士がいたらしいんだ。その六人で宇宙魔王を倒したって書かれている、だが」
「だが?」
「宇宙魔王は千年後に蘇るって言い残して消えたらしい。それが文献に記されてる日付からぴったり千年後だとしたら……あと三ヶ月後だ」
「な、何だって!?」
俺達全員が声を上げた。
「文献によると宇宙魔王ってのはマウちゃんと五人の戦士達が死力を尽くしてやっと倒せたくらい、とんでもない奴みたいだぞ」
それを聞いて俺達はやはり、驚くしかなかった。
「ね、ねえ、今そんなのが蘇ってきたら私達で勝てる?」
奈美が冷や汗をかきながら兄ちゃんに尋ねたが
「五人の戦士達はマウちゃんと同じ位強かったらしい。だとしたら?」
「うん、無理ね。マウさんと互角って今は政彦だけでしょ?」
「そうだな。だが五人の戦士達も魔王が蘇る頃に生まれ変わってくるらしいぞ」
「え? それどういう事?」
「千年前の脅威が去った後、かの弘法大師様が六人の戦士達のうち妖怪であるマウちゃんは竹筒に封印し、人間である残りの戦士達には狙った時代に転生できる術をかけた。と文献に書かれていたんだ」
「え、そうだったのか? マウって美少年ペロペロさせろって暴れたから封印された訳じゃなかったんだ」
「いや、暴れたのは事実らしいが弘法大師様に説得された後、自分の意志で封印されたって書かれているぞ」
「そうなのか?」
俺がマウに尋ねたが、
「それも覚えてないにゃあ。でも言われてみればそんな気もするにゃあ」
うーん、封印されると記憶もなくなるのか?
それともこれは弘法大師様も予想外だったのか、ん?
ちょっと待てよ、弘法大師様?
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