番外編「石見一家の異世界奮戦記 3」

 俺達は部屋の前まで来たが、伯母さんだけ部屋に入ってもらって物を持ってきてもらう事になった。

 母さん曰く「女の子の部屋だし、本人の許可無く野郎が入っていいものではないでしょ」って。

 それもそうか、となって出てくるのを待っていた。


 しばらくして、銀色のネックレスを持った伯母さんが出てきたが涙目になっていた。

 俺達はそれを見て何も言えずにいたが


「マウさん、あなたの術って娘の全てが見えるの?」

 そんな事を聞いてきた。

「にゃ? ううん、そこまで見えないにゃ」

「そう……ホッ」


 あれ? 何か安心したようだが、もしかして知られたらまずい事でもあるのか?

「あ、ごめんなさいね。さて、ここじゃなんでしょうから、客間に案内しますわ」




 客間に着き、全員が席に着いた後

 マウがテーブルに置かれたネックレスに手をかざし、「にゃにゃにゃ~にゃにゃ~」とか気が抜ける呪文(?)を唱え続けるもんだから、全員笑いを堪えていた。

 そして


「見えたにゃ。イマさんは空高くにいるにゃ」

 マウがそう言って皆を見渡し、


「攫った敵は、宇宙人だにゃ」

「な!?」

 俺達は驚きの声をあげた。


「なるほど。銀色のって宇宙服なのかも」

 道彦がポンと手を叩いて言う。


「空高くって事は、宇宙船で宇宙空間にいるのか?」

 父さんがマウに尋ねると

「たぶんそうだにゃ。でも、宇宙には魔法や神力でも辿り着けないにゃ」

「やっぱそうか」


「母さん、この世界にロケットってあるの?」

 道彦が母さんの方を向いて言うと


「無いわよ。ここは魔法や自然界の力、破邪の力を使う術が主体的で科学に力を入れる人が少ないのよ」

「じゃあ、こっちからは行けないんだね」

「ええ、浮遊魔法でどこまで行けるか試した人もいたみたいだけど、大気圏に入る前が限界だったみたいね」

 それでも充分凄いと思うが。


「攻めて来るのを待って、宇宙船を奪う……いや奪っても操縦出来るかどうか分からんし、使用者以外が触れたら途端に爆発ってのもありそうだな」

 父さんがブツブツそんな事を言ってた。


「なあ、何か宇宙へ行ける方法知らないのかよ?」

 俺もマウに聞いてみるが

「知ってたらもう言ってるにゃ」

「そうだよな」


「確実ではないが、方法はあるぞ」

 伯父さんがいきなりそんな事を言った。

「この世界の中央には『エテールの塔』という空高くそびえ立つ塔があるんだ。伝説ではそこの最上階から天界へ行けるという事だが、約三百年程前の記録を見ると実際には何も起こらなかったそうだ」


「でも、後になって何か分かったという事ですか?」

 俺がそう言った後、

「最近になって私の実家にある蔵から新たな古文書が見つかったの。それを元に再度調査をと思っていた所だったのよね」

 伯母さんがそう言い、

「塔の最上階には不思議な台座があるそうだ。古文書はそれを使ったものが記したようで、『高く舞い上がって行くと、だんだんと空が黒くなった。ふと地上を見ると、蒼く美しかった』とあったんだ」

 伯父さんがその後に続いて言った。


「それって宇宙から地上を見たんでしょうね。でないとそんな表現できないでしょうし」

 道彦がそう言い

「そうだな。私もそちらの世界の書物を読んだので、それは分かる」

「あれ、こっちの本をって、母さんが送ったとかですか?」 

「いや、時折守護神様が授けてくれるんだよ」


「……あの、守護神様ってあまり人の世に手出し出来ないんじゃ?」

「勿論何から何まではダメだが、ほんの少しアドバイスするという形なら構わないと仰ってたぞ」


 そうだったの?

 って、こっちの守護神である彦右衛門様も、なんやかんやで手助けしてくれてるもんな、っと。


「じゃあ俺と道彦で行ってきますよ」

「うん」

 俺と道彦が立ち上がり


「待って。わたし達も行くわ」

「そうだぞ。敵の戦力は未知数だしな」

 母さんと父さんも手を上げた。


「分かったよ。じゃあマウとユウはここで待っててくれ」

「あたしも行くにゃ!」

 マウも手を上げて言うが、


「おい、以前ならともかく今のお前じゃ無理だよ」

「でも、政彦が美女宇宙人に誑かされないか不安だにゃ」

「あのな、そんな訳あるか」




「ほう、マウさんは以前は妖怪で女神様だったが、力を封じて人間になったと?」

「ええ。政彦と結婚するにはその方法しかなかったのよ」

 母さんが伯父さんにマウの事を説明していたようだ。


「力を封じて? ……マウさん、ちょっと私の前に立ってくれない?」

 伯母さんが何か思いついたのか、マウにそう言った。


「にゃ?」

 マウが首を傾げながら伯母さんの前に行くと


「ふむふむ。……よし、いけそうね」

 そう言って伯母さんは腰に下げてた袋から、翡翠の人形を取り出した。

 よく見ると猫の形をしている。


「少しジッとしててね、はっ!」

 伯母さんが手をかざすと


「にゃっ!?」

 マウの体から大きな光の塊が飛び出した。

 そしてそれが伯母さんが持ってた人形に吸い込まれるように入っていった。


「さ、これを持って力が戻るよう念じてみて」

「は、はいにゃ?」

 マウがそれを持って念じると、その体が光り輝きだした。


 光が止むと、そこには猫耳と尻尾がある一人の少女。


「あ、妖怪に戻ったにゃー!」

 以前の妖怪猫女であるマウがそこにいた。


「見立てどおりね。あなたは人間になった際、その力を体の中に封印されていたのよ。だからそれを人形に移し替えたの」


 それってたけさんと同じだ。

 たしかとある陰陽師に力を人形に封じてもらったって聞いた。

 光は人形に力を封じる事が出来なかったのか、知らなかったのかもな。


「伯母さんって、そんな事も出来るんですね」

 道彦が驚きながら尋ねる。


「ええ。私も王家の血を引いているからね。それに我が家の言い伝えにあったのは、もしかするとマウさんや皆の事だったのかもね」

「え? それってどんなものですか?」


「言い伝えによると『この世界に未曾有の危機が訪れた時、異世界から救いの猫女神と勇者達がやって来る。だが猫女神は力を封じられ戦えなくなっているが、この手段なら解ける』という話だったのよ」


 俺達が勇者かはともかく、猫女神はドンピシャだろ……。


「王妃様、ありがとうございますにゃ」

 マウが伯母さんにお礼を言うと


「ええ。でもマウさん、今のあなたじゃおそらく長くても一時間しか連続で使えないでしょうから、気をつけてね。それと、娘の事を」

「はいにゃ。必ず助け出すにゃ」


「すまん。私も着いて行きたいが、王である以上ここを離れる訳には」

 伯父さんが項垂れながら言うと

「わたし達に任せておいて。兄様は国を守ってね」

 母さんが胸に手をやって言った。


「ああ……そうだ、輝彦さん」

 伯父さんが父さんの方を向く。

「は、はい?」

「もう今更かもしれませんが、あの時きちんと言えなかったので、……妹を、ユウカをよろしくお願いします」

 そう言って頭を下げた。

「ええ、分かりました」




「皆、気をつけてにゃ」

 ユウはここに残って怪我人の世話をしたり薬を作り貯めてくれるそうだ。

 頼んだぞ。

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