番外編「石見一家の異世界奮戦記 5」

 見晴台のような塔の頂上。

 そこの一段高い場所に、直径三メートル程ありそうな円形の台座があった。


「これがそうか。さて、どうやればいいのやら?」

 父さんが首を傾げながら言う。


「あ、それに関しては守護神、様から聞いてきました」

 イヨさんが何か詰まりながら言った。


「守護神様から? あの、今はどうされているの?」

 母さんがイヨさんに聞くと


「ちょっと事情があって、あたしを皆さんと合流させるのが精一杯だったとか。そして自分が謝っていたと伝えてと言ってました」

「そうだったのね。それでどうすればいいの?」


「ええ。あたしと道彦、そしてお義父さんと政彦さんが神力を使えばこの台座から何かが出てくるそうです。それで宇宙へも行けるはずだって」


「なるほど。じゃあって、イヨさんも神力使えるの?」

 俺はふと思って聞いてみた。


「ええ。あたしもスサノオ様、そっちで言う素盞鳴尊の子孫だからね」

「へえ、じゃあ俺達って遠い親戚みたいなもんだね」

「そうね。でも今はあなたの義妹よ。年上だけどね」


「あ、そうか。しかし兄弟揃って年上のヨメかあ。まあ道彦とイヨさんは二つ違いだけど、俺とマウは桁が違い過ぎ」

「政彦~、あたしだって言われたくない事あるって、前に言ったはずだにゃ~」

「グエエエ!?」

 マウが後ろから思いっきり俺の首を絞めて来た、し、死ぬ。

 

「道彦。マウちゃんってもしかして、今のあたしよりも年上?」

「本当の歳は知らないけど、今は僕や兄さんと同い年だよ」

「は?」


 そしてなんとかマウの機嫌を取った後(今すぐアレ咥えさせろとか言った時はどつき倒したが)


「さてと、やるか」

 父さんと俺、道彦とイヨさんが台座に向けて手をかざし、気を送った。


 するとその台座が光輝いて、何かが出てきた。

 それは


「きゅ~」

 猫くらいの大きさの竜だった。

 羽は生えているが、えと……あ、もしかすると必要時に大きくなって、その背に乗せてとかか?


「なあ、あんたって俺達を宇宙に連れて行けるの?」

 とりあえず竜に話しかけた。

 

 すると竜が俺の前に飛んできて鳴きだした。

「きゅ! きゅきゅきゅ!」

「え、台座に乗れってか?」

「きゅ!」

 竜が小さく頷いたので、俺達は台座に乗った。

 すると


「きゅ~!」


「うおっ!?」

 台座が光に包まれて浮かび上がっていき、あっという間に宇宙空間に辿り着いた。



「うわ、本当に宇宙に来れた」

 そこは四方八方真っ暗、でもないな。

 太陽の光もあるし、それに


「星がいっぱいだにゃ~」  

 俺達の世界と同じかは知らんが、まるでプラネタリウムのように星が輝いていた。



「ね、ねえ。あれが地上なのかい? 何か丸いけど?」

 イヨさんが驚きながら道彦に尋ねる。

 

「そうだよ。僕達の世界も、あっちの世界もあんなふうなんだよ」

「そ、そうなの? ……よく見ると、綺麗ね」

 イヨさんはそう言って、地上をジッと眺めていた。


「蒼く光り輝く僕達の故郷、地球。それをずっと守り続けたのが兄さん達だよ」

「ええ、それは聞いたわ。政彦さん達は英雄だって」

 あ、そうだったんだ。てか英雄は言い過ぎ。


「道彦も異世界を救った英雄だにゃ」

 マウが道彦に向かって言うと


「それは義姉さんもでしょ。てかどっちも救ったじゃんか」

「あ、そうだったにゃ」


「ふふふ。夫と義兄夫婦と弟夫婦が世界を救った英雄かあ。それじゃ、あたしもここで頑張ろうかしらね」

 イヨさんが何か言いながらこっちを見ていた。



「皆、あれを見て」

 母さんが指さした先には、銀色に輝く巨大な球体型の宇宙船が浮かんでいた。


「と言うかあれ、小惑星だな」

「多分人工衛星の化け物みたいなもんだな」

 俺と父さんが続けて言うと


「あ、気づかれたみたいよ」


 何十機もの小型UFOがこちらに向かって飛んできた。


「どうする? こっから迎撃出来るの?」

 道彦が身構えながら尋ねる。

「見たところ出来そうね。じゃあ」


「きゅ、きゅきゅきゅ」

 竜がまた俺の前に来て鳴きだした。


「ん? 自分がやるって?」

「きゅ……きゅー!」

「うわあっ!?」


 竜が大きな声で鳴いた途端、宇宙空間に稲妻が走り


「うえええええええ!?」


 UFOが全部木っ端微塵になっていた。


「あれってお前がやったの?」

「きゅ! きゅきゅっ!」


「え?『そうだよ。ここはボクに任せとけ』ってか。ああ、頼むわ」

「きゅ~!」


「ねえ兄さん、さっきから思ってたんだけど、何でこの子の言ってる事分かるの?」

「ん? あ」

 道彦に言われて気づいたが、そういやなんでだ?


「あの、あたしの弟は動物の言葉が分かるんだけど、もしかして政彦さんもそんな感じじゃないかしら?」

 イヨさんがそんな事を言うが


「うーん、俺は動物の言葉なんか分からんけど?」

「いえ、竜の言葉だけ分かるんじゃない? でもそっちの世界には居ないから、今まで気づかなかったってとこじゃないかしら?」


「そんなんありか? まあそれは置いといて、早くあの星に行こう」


 その後何度かUFOや戦闘機みたいなのが飛んできたが、竜が稲妻で尽く返り討ちにしていった。


 敵もまさかあんなデタラメなのがいるって思わなかっただろうなあ。



 そして俺達は小惑星に降り立った。

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