番外編「石見一家の異世界奮戦記 6」

 降り立った場所は何もない荒野だった。


 建物どころか敵の姿も見えない。


「さて、どっちへ行けばいいのやら」 

 父さんが首を傾げながら言う。


「マウ、どこにイマさんがいるか分かるか?」

「ちょっと待つにゃ。えーと」


- 王女ならそこから3km先にある、我らの基地にいるぞ -


「誰だ!?」


 俺が叫んだ時、上空に大きな影が浮かんだ。


「あれは立体映像だな。そしてどうやらあいつがボスのようだ」


 それは頭に王冠みたいなのをかぶっていてタコみたいな顔と幾つもの足?がある、何か漫画とかに出てそうな宇宙人だった。

 その横には、水色の長い髪で白いドレスを着た女性が猿轡と手錠をかけられて立っている。

 

 あれがイマさんだな。


「おい、イマさんをどうするつもりだよ!?」

 俺が大声で言うと


- どうするかだと? 知れた事。王女の秘めたる力を利用して、全宇宙を支配するのだ -


「秘めたる力って?」


- 我々が調べた所、王家はこの世を守る神の嫡流でもあるそうで、強大な力を持っているらしい -


「え、そうなの?」

 母さんの方を向くと


「そうよ。わたし達は守護神様の子孫でもあるの」


「うええ……神様の子孫同士が結婚して、俺達が生まれ」

 そして、未来ではあの子がか。



- 我らの科学力と王女の力があれば……そうだ、王女を返して欲しいなら基地まで来るのだな。まあ、来れぬだろうがな -


 見るとそこには銀色の宇宙服を着ていて、銃を持った兵隊らしき奴らがいたが


「とりゃあー!」


 チュドーン!


 あっという間に全滅した。


「数が多いだけだな。あいつら個々の戦闘力はたいした事ないわ」

 そうかよ。って父さん、いきなり技を放つな!


「あ、新手が来たにゃ」

 遠くから大勢の兵士達が駆けて来た。


「よし、俺達もやるか」

 そう言って身構えた時


「きゅ!」

 竜がまた俺の前に飛んできた。


「ん? なんだ?」

「きゅきゅきゅ~」

「え、『ボクに名前つけて』って? ちなみに女の子だよって?」


「ボクっ娘だったんだ……」

「それ、後じゃダメなのかい?」

 道彦とイヨさんがそう言うと


「きゅきゅきゅー」

「名前つけてくれたらもっと役に立てる? うーん……じゃあさ、鳴き声から思いついたけど、キュアってどうだ?」


「きゅー!」

 竜、いやキュアの体が突然光り出した。


 そして、光が止むと


「ええええ!?」


「やったきゅ! やっとちゃんと喋れるきゅ~!」

 そこに浮かんでいたのは、背中に竜の翼がある小学校低学年位の女の子だった。


「お、お前って竜人だったの!?」

 俺がそう言うと


「ボクは竜神様の一族の子なんだきゅ。お兄ちゃんが名前をつけてくれたおかげで、こうして人型になれたきゅ~」

 キュアが翼をパタパタさせながら言うが


「そうか。それはいいが、服を着ろ」

 彼女はすっぽんぽんだった。


「きゅ~? なんで?」

 キュアが首を傾げながら言うが

「あのな、お前は女の子だろが!」


「そうだきゅ。じゃあ、早速あいつらをやっつけるきゅ~!」


「あ、待てって! あ?」


 キュアが前に出た途端、敵軍の大多数が前屈みになったり、鼻血出したりしていた。


「ハアハア。あれ、誘ってるんだよな、だからヤッてもいいよね」

 涎垂らして何か戯言ほざいてる奴もいる。



「よし、ぶっ殺そう」

 俺がそう言うと

「うん。あんなのは跡形も無く粉々にしてあげようよ」

 道彦が怒りの形相になって言い

「いや、魂すら粉々にするぞ」

「ええ。そうしてあげましょ」

 父さんと母さんも額に青筋立てて言った。


「ハアハア……はっ? あ、あたしもあいつら殺るわ!」

「に、にゃあ!」

 イヨさんとマウが何か慌てていたが、まあ見逃そう。


「じゃあ行くぞ、そりゃああーー!」

 全員がフルパワーで必殺技や魔法を放つと


 チュドォーン!


 ギャアアアーー!

 

「変態共、二度と生まれ変わってくるな」

 俺がそう言うと


「見つからないよう気をつけようだにゃ、イヨさん」

「ええ」

 後ろで何かほざいていたが、聞かなかった事にしてやろう。



「さ、これ着なさい。わたしのお古だけど」

 母さんがどっから出したのか、キュアに魔女っ子っぽい服を着せていた。


「きゅ~、これかっこいいきゅ~!」

 どうやら気に入ったようだな。

 うん、よかった。




 一方、宇宙人達の基地では

「な、な?」

 ボスがガタガタ震えていたが

「そ、そうだ。あれがあった! おい、兵士達を退避させろ!」

「はっ!」

 部下に何か命じた後

「これなら奴らとて、フフフ」

 ボスは含み笑いをしながら呟いた。




 俺達は基地の前までやって来た。

 どうやら誰もいないようだが


「ん?」


 正門らしき場所の前に何か大きなパラボラアンテナみたいなのが置かれていた。


「あれ何だろ?」

 道彦がそう言った時それが光り出して、こっち目掛けて光線が飛んできた。


「うわわわっ!」

 俺達は咄嗟にそれをかわしたが、はるか向こうから爆音が聞こえてきた。


「ちょ、な、何よあれ!?」

 イヨさんが驚きの声を上げる。


「レーザー砲ってとこか。さて、ひとつぶっ飛ばすか」

 父さんが腕捲りして言うと


「お父さん、あれはあたしにやらせてほしいにゃ」

 マウが手を上げて言った。


「お、そうか。じゃあお願いするか」

 そう言って父さんが下がると


「にゃあ~……ふふ、久しぶりに真の力、見せてあげるわ」

 マウの口調が変わり、その姿が光り輝いていた。


 その光が収まると、そこには猫耳と尻尾があり、白くて裾の短いキトンのようなものを着ている女性、というか


「え? ねえ、彼女はいったい何者なのよ?」

「マウ義姉さんはね、猫女神バステト様なんだよ」

 イヨさんの問いに道彦が答えた。


「はああっ!」

 マウの両手から凄まじい勢いの気孔弾が放たれると、それがレーザー砲に命中し


 チュドーン!


 轟音を立てて吹っ飛んだ。


「ふう、力は落ちてないわね」

 マウが腕を回しながら言う。


「その姿もまた見れたな」

 俺がそう言うと

「ええ……にゃあ、ずっとはまだキツイみたいだにゃ」

 マウは元の姿に戻った。


「さて、中に入ってイマちゃんを助けるとするか」

 父さんを先頭に俺達は基地に突入した。




「お、おのれ。そうだ、これなら」

 ボスは何か策を思いついたようだった。

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