番外編「石見一家の異世界奮戦記 7」
俺達は基地の中に入り奥へと進んで行ったが、敵には出会わなかった。
「もう兵力を減らしたくないから出さないんだろうね。でもこっちを見てる気配は感じるよ」
道彦が辺りを見渡しながら言う。
「なるほど。てか一人くらいとっ捕まえてボスとイマさんの居場所吐かせないか? 何処にいるか分からないし」
俺がそう言った時
「こっちよ」
母さんが分かれ道の左側を指して言った。
「え、分かるの?」
「ええ。イマちゃんは王家の家宝を身に付けているから、そこから発している気を辿れば」
「そんな事出来るなら早く言え!」
「あのね、流石に宇宙までは探知出来ないし、そもそもわたしの力だとこの基地の広さくらいが限界なのよ」
「あ、そうだったんだ。ごめん」
「ねえ母さん、家宝ってどんなものなの?」
道彦が興味津々に母さんに尋ねると
「グレートプレミアムショーツという伝説の下着で、略してGPSともいうのよ」
「へ、へえ(って、それどっかで聞いた事あるな? 何処でだっけ?)」
道彦は何か呟きながら首を傾げていた。
そして、大きな扉がある部屋の前に着いた。
「この部屋で間違いないわ」
母さんがそこを指さしながら言うと
「分かった。じゃあ開けるぞ」
父さんが扉を開けると、そこには何か計測器やらモニター、よく分からん機械類がたくさんあった。
そしてその中央にはタコ、じゃなかった宇宙人達のボスと、猿轡は外されていたが手錠はそのままのイマさんがいた。
「武器を捨てろ! さもなければ、こいつの命は無いぞ!」
ボスが器用に銃を持ち、イマさんに突きつけながら叫んできた。
「っておい、卑怯だぞ!」
「にゃー!」
「なんとでも言え! さあ、早くしろ!」
ボスが急かしてくる。
「くっそ……言うとおりにするか」
俺達が刀を捨てようとした時
「イマちゃん! わたし達がすぐに助けてあげるからね!」
母さんが妙な仕草でイマさんに話しかけた。
やっぱ取り乱しているのか?
「いえ、私に構わずこいつを討ってください!」
イマさんも何かやたら慌てて手を振りながら叫び返す。
「そうはいかないわ! ね、大丈夫だから!」
「でも!」
その後何度か言葉を交わし
「……ええ、分かりました。叔母様」
イマさんが俯きがちになった。
「フフフ。納得したようだが、どうやって助けるつもりだ?」
ボスがそう言うと
「助ける? その必要はないわよ」
え?
すると
「えーい!」
なんとイマさんが手錠を思いっきり引きちぎり
「な、何!? ウアアアア!?」
すかさずボスを掴んで壁に叩きつけやがったあ!?
「フフフ、兄様とサエはどちらも超一流の術者で剣術や格闘技も一流なんだから、その娘であるイマちゃんが弱い訳ないと思っていたわ」
母さんがニヤリと笑みを浮かべて言った。
「え、じゃあイマさんは、ワザと捕まっていたって事?」
俺が尋ねると
「そうよ。イマちゃんは敵の狙いが自分だって気づいたから、国民の被害を防ぐ為、そして隙あれば敵を倒す為に、あえて」
「そうだったんだって、どうしてそれが分かったの?」
今度は道彦が尋ねる。
「さっきまで聖王国軍の暗号手話で話してたのよ。でもわたしが知ってるのは昔のだから、伝わるかどうか不安だったわ」
ああ、あの仕草って、そうだったんだ。
「そ、そんな馬鹿、な?」
ボスがよろけながら言うと
「よくも国を荒らしてくれましたわね。覚悟はよろしいですか?」
イマさんが指を鳴らしながらボスを睨む。
「おのれ、そう簡単にはいか……ギャアアアーー!?」
イマさんがすかさず回し蹴りを入れ、ボスをこっち側にふっ飛ばした。
そしてこっちに駆けて来て、ストンピングを繰り返す。
「さ、皆さんもご一緒にどうですか?」
イマさんが妖しい笑みを浮かべて言うと
「あ、ああ」
俺達は全員引いていたが、気を取り直してボスをフルボッコにしてやった。
ボスの名誉の為に言ってやるが、こいつは決して弱くない。
俺達がそれ以上に強いだけだ。
あとイマさん、スカート穿いてんだから回し蹴りすんな飛び跳ねるな、下着見えてたぞ。
黒くて面積小さいって……てかそれが家宝なのか?
「政彦はムッツリスケベだにゃ~。道彦は堂々としてるんだから自分もそうすればいいのににゃ~」
マウがニヒヒと笑いながら言ってきたが
「やかましい! てか心を読むな!」
やがて、ボスが虫の息になった頃
「お、おのれこうなったら、奥の手ギャアアア!?」
「アホか。誰が待ってやるか」
父さんがボスの脳天に刀を突き刺してトドメを刺したけど
「ふ、ふふふ。奥の手はもう発動した……先に行って、待っているぞ……グフッ!」
ボスは捨て台詞を吐いて息絶えた。
すると突然基地内が大きく揺れ出した。
「じ、地震か!? かなり大きいぞ!」
「というか基地が崩れそうだよ! 早く脱出しないと!」
俺と道彦が続けて言うと
「皆、ボクの側に来てきゅー!」
「え、ああ!」
俺達は言われた通りキュアの側に集まった。
「じゃ、きゅー!」
キュアが鳴くと俺達の足元にあの台座が現れ、あっという間に光に包まれてワープしたかと思うと、もう宇宙空間にいた。
「ほっ、助かった。ありがとキュア」
「きゅー! でもまだ敵がいるきゅ!」
キュアが指さした方を見ると
「え……げ!?」
なんと小惑星が細い腕を生やしていて、中央に大きな一つ目のある化け物と化していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます