番外編「石見一家の異世界奮戦記 8」

 宇宙空間に浮かぶ巨大な化け物がいた。

 見てくれはともかく、何というか凄まじい闇の気を放っている。


「あ、あれは大昔に最高神様が宇宙の彼方に封じた邪神だにゃ。多分あいつらが偶然見つけたようだにゃ」

 マウが震えながら言う。


「そうか。ってあんなのがいるなら、イマさんは必要なかったんじゃ?」


「ううん、あいつは人に従ったりしないにゃ。たぶんイマさんの力を使って操ろうとしていたんだと思うにゃ」

 

「じゃあ、私なら封印出来るのでしょうか?」

 イマさんが自分を指さしながら言う。


「出来なくはないけど、やったら死んじゃうにゃ」

 そう言ってマウは首を横に振る。


「私だって王家の者。民を救う為なら命を惜しむ気はありません」


「お父さんとお母さんより先に死んじゃダメだにゃ」

「そうよ。それに守護神様からも、あんたを助けてって言われてたんだからね」

 イヨさんもマウの後に続いて言った。


「では、他に手があるのですか?」

「そこまでは言ってくれなかったわ。いえ、手が無いのかもしれないわね」

 


「うーん……ここに信一兄ちゃんや奈美、光にラッテがいてくれたら太陽撃で倒せるかもしれないけど」


「あれは太陽撃でも消せないにゃ。もし出来るなら最高神様も封印しないにゃ」

「そうだよなあ」


 俺達がそう話していると


- グオオ……キエロ -

 

 邪神が目からビームを放った。

 そしてそれが遠くの小惑星に当たったかと思うと


「げええ!?」

 

 跡形もなく消えていた。


「な、なんちゅう破壊力だよ!」

「あそこは無人の星みたいだったからよかったけどにゃ、あれが地球に当たったら」

 マウが震えながら言う。


「義姉さん、あいつ邪神って言うくらいだから、次元くらい越えられるよね?」

 道彦がそう言うと、マウは無言で頷いた。


「それじゃいずれは、全ての世界をも」

 

「やはり私が封印するしかないですね」

 イマさんが手を合わせて術を使おうとすると


「だ、だから待つにゃ。皆でいい手を考えるにゃ」

 マウが慌ててイマさんを止めるが


「そんな悠長な事を言ってる間に、誰かが犠牲になったら……では」


「やめてって言ってるにゃあー!」

 マウが物凄い金切り声で叫びやがったので、イマさんだけじゃなく全員が固まった。


「あたしは家を、家族を守る女神。絶対皆を帰すにゃ。もうあんな思いは嫌だにゃ」

 マウが涙声でイマさんに言うと

 

「え? それはどういう事ですか?」

「それは……うん、またの機会ににゃ」


「え、ええ、分かりました」

 イマさんは少し悲しそうな顔になり、手を下ろした。

 何か分からんが、何かを察したのかな。 


「っと、何か手を打たないとな」

 父さんが邪神の方を見ながら言うと

「あれなら……いや、無理か」

 道彦が何か言おうとしたが止めた。

「何だよ? 手が浮かんだのなら言ってみろよ」

 俺がそう言うと

「思いついた事はついたんだけど、よく考えたらあれは僕達のリーダーだった勇者しか出来ないんだよ」

 道彦がそう言って首を横に振ったが

「そうにゃ、あれがあったにゃ!」

 マウがポンと手を叩いて叫んだ。


「は? 義姉さん、今からあの人を呼びに行く気?」

 道彦がおそるおそる尋ねると

「違うにゃ。あれは政彦も出来るんだにゃ」

 何だって?

「マウ、それどういう事だよ?」

 俺が尋ねると

「えっと、素質と言えばいいのかにゃあ? とにかくやり方言うから、やってにゃ」

「あ、ああ」


「じゃあ皆、政彦の刀に力を送るように念じるんだにゃ」

「ああ!」

 父さんや母さん、道彦にイヨさん、キュアが俺に向けて手をかざし


「それとイマさん、守護神様と話せないかにゃ?」

 マウが尋ねると


「え? ……あ、はい。念じたら答えてくれました」

 イマさんは少し目を閉じ、すぐに目を開けて言う。


「守護神様なら世界中の人達にテレパシー送れるはずにゃ。それで政彦に向けて力を送って欲しいと伝えてと言ってほしいにゃ」


「『もう分かってる。既に連絡済み』だそうです」

 イマさんがそう言った。


「じゃあ、政彦」

「ああ!」


 俺は刀を高々とあげた。

 するとあちこちから光の塊みたいなのが飛んできて、俺達の頭上に集まっていくと


「うわわわっ!」

 衝撃で思わずよろけそうになったが、マウが背中に抱きついて支えてくれた。

「大丈夫かにゃ?」

「ああ。やるか」

「にゃ!」


 その後もどんどん光が集まり、やがて惑星のように大きくなった。


- ヌ? イマイマシイモノガアルナ キエロ -


 それに気づいた邪神が、こちらに向けて光線を放とうとしてきやがったが


「させるか! ……くらえ、聖光大集結一心剣!」

 俺が刀を振り下ろすと、光の塊が勢い良く邪神目掛けて飛んでいき

 

- ヌ、ヌ……グオオーーー!? -


 邪神はその光に包まれ、やがて消えていった。


「ど、どうなった?」


「守護神様が仰ってますよ。邪神は完全に消え去ったと」

 イマさんが笑みを浮かべてそう言い


「よっし、やったぞー!」

 全員で歓声をあげた。

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