番外編「石見一家の異世界奮戦記 9」

 俺達は今、伯父さんと伯母さんの私室にいる。


 あれから城に戻ると、もう守護神様が知らせてくれたとかで皆大喜びでもみくちゃにされそうになったが、伯父さんが「皆疲れているのだから、今日の所はな」と止めてくれて、今ここにいる。


 ここにはキュアもいた。

 聞けばキュアは台座に封印されていたとかではなく、台座が使われる度に竜神様の一族の誰かが天界から派遣されるとの事で、今回はたまたまキュアだったんだって。


 そして役目が終わったら天界に戻るもよし、そのまま呼び出した相手に着いていってもよしと、本人の望むようにしていいそうだ。

 で、キュアは俺達と一緒に行く事を選んだ。



「ありがとう。もし皆が来てくれなかったら、この世界は滅亡していたところだったよ」

 伯父さんがそう言って頭を下げる。


「あ、いえそんな。俺達だけじゃなく、世界中の皆さんが力を貸してくれたおかげですよ」

 俺がそう言うと

「だがそれも政彦君がいなければ出来なかっただろう。本当に感謝しているよ」


「と言うかイマ、あなたはなんて無茶な事するの!? もしユウカ達が来なかったらどうなってたと思ってるの!?」

 伯母さんがイマさんを叱り飛ばす。


「ご、ごめんなさい母様。話している時間がなかったし、あいつらくらいならと思って」

「あのねえ!」


「まあまあ、私達もイマちゃんを助けるつもりが助けられたんだから、そのへんで」

 母さんがそう言ったので、伯母さんはそれ以上何も言わなくなった。


「ところで兄様、そもそも何で帰ってこいと?」

 母さんが話題を変えようとしたのか、伯父さんに尋ねた。


「忘れているようだが今年は建国三百年目だ。だから二日後の式典に出てもらおうと思ってな」

 あ、そういう事だったんだ。


「式典なんて今は無理でしょ。復興してからでも」

「いいや、簡略化するが行うぞ。建国祭だけでなく英雄達のお披露目の場でもあるからな」

「うーん、分かったわ」



「さてユウカ、輝彦さん。疲れている所悪いけど、あなた達とお話したいという人達がいるわよ」

 伯母さんが父さんと母さんに言う。


「え、誰が?」

 母さんが尋ねると

「誰って、お義父様とお義母様よ」

「あ……」

「さ、隣の部屋で待ってるから、行ってあげて」


 その後父さんと母さんは先代王と太后、俺達の祖父母が待っている部屋へ向かった。まずは四人で話したいとの事で、俺達はそのまま伯父さん達と話しながら待っていた。




 しばらくして部屋のドアが開いたかと思ったら

「おお、君達が政彦と道彦か。うんうん、二人共殆ど父親似だが、目元はユウカに似ているな」

 先代王である祖父ちゃんが笑みを浮かべて入ってきた。


 しかしこの祖父ちゃん、父さんと同年代に見えるくらい若々しいな。

 髪は染めてるのかもしれないが真っ黒だし、背筋はピンと伸びて足腰もしっかりしてそうだし。

 そう思っていると


「儂が反対などしなければ、君達の成長を見ることができたのになあ」

 そう言ってしょんぼりした。


 いや、俺はともかく道彦はどのみち無理だったよ。

 父さんや母さんですら見てないのだから、とは言わなかった。


「父様、養子だけどユウもいるわよ」

 母さんがユウを促すと


「おおそうか。さ、おいで」

「にゃあ~」

 ユウは祖父ちゃんにたかいたかいしてもらって嬉しそうにしていた。


「きゅ~」

 キュアが羨ましそうにユウを見ていると


「ん? 君もして欲しいか?」

「きゅー!」

 今度はキュアをたかいたかいした後、二人を肩に乗せて部屋の中を歩き出した。


「父様、もう七十歳なんだから無理しないでよ、もう」

 母さんが呆れながら言う。

「なんの。まだまだ衰えておらんぞお」


 祖父ちゃん、すっげー嬉しそうだな。

 もし俺達が小さい時に会えていたら、ああしてもらえたのかな。


「にゃあ、お祖父様もカッコイイにゃあ~、じゅる」

 マウがヨダレ垂らしながら何か呟いてるが

「待てやコラ。でもまあ、たしかにダンディといえばいいのか、カッコイイよな」

「……政彦はソッチもありだったんだにゃ。しかもお祖父様とヤりたいだなんて」

「ぶん殴るぞ」



「あら、その娘があなたの?」

 祖母ちゃんがマウに気づいて尋ねる。

「ええ、俺の婚約者、マウです」


「あらあら。じゃあ生きているうちにひ孫の顔も見れるわね」

 祖母ちゃんはにっこり微笑み、そして


「輝彦さんのご両親はもう他界されていると聞いたわ。だからお二人の分まで、あなた達を見守らせてもらうわね」


「うん、ありがと祖母ちゃん」

「お祖母さんって若々しいから、玄孫もいけそうだね」

 道彦がそう言うと

「そうねえ。もう六十五だけどいけるかもね」

 うわ、そんな歳なんだ?

 髪は白いけど、顔だけ見ると四十代に見える。これが本当の美魔女か?



「そうだ。あの、どうして結婚に反対したんですか? もしかして父さんが異世界人だったからとかですか?」

 道彦が祖母ちゃんに尋ねると


「異世界人というだけなら反対しないわ。私達が反対した理由は、輝彦さんが過去の人だからよ」

「へ?」

「ここはあなた達から見るとね、約三百年後の世界なのよ」


「「そ、そうだったの!?」」

 俺達は思わずハモってしまった。


「ええ。時代が違う者が結ばれると時空に歪みが生じ、最悪世界が滅びるという話があったのよ」

「ああ。だがそれは違ったようだな」

 祖父ちゃんがユウとキュアを降ろして言うと


「いいえ、下手をするとそうなってましたよ」

 道彦が首を横に振って言った。


「え? なあ、それどういう事だよ?」

 俺が道彦に尋ねる。

「うーん。たとえばだけど、兄さんか僕の子孫が母さんだったとしたら、どうなると思う?」


「は? えーと、子孫が母さんで、どっかで父さんと結ばれて、俺達が生まれて、そしていつかまた母さんが生まれて、また父さんと……何か無限ループみたいになるな?」

「うん。それが何十回何百回も続くと、やがて関わった人全てに影響が及び、世界が」

 そう言って右手を握って広げ、バン、と声に出さずに言った。


「……マジ?」

「うん。この世のあらゆる事が分かる勇者に聞いたから、間違いない」


「なあ、父さんと母さんはそれ知らなかったのかよ?」

 俺が二人に尋ねると


「すまん、今初めて知った」

「う、う、もしそうだとしてもそんなの覆してやる、ってあの頃なら思ったわね」

 二人共項垂れてながら言うと


「バステトの力で見たけど、子孫じゃないのは確実だにゃ。それなら影響は殆ど無いにゃ」

 マウが調べてくれて、笑みを浮かべて言った。


「そうか、よかった。今更だが儂は、輝彦さんならユウカの婿に相応しいと思っていたんだ」

「あら、出て行った時は八つ裂きにしてやるって叫んでいたのに」

「それとこれとは別だ。出来れば世界の五分の一を領地とし、大公爵になって欲しいと思っているんだが」

 祖父ちゃんと祖母ちゃんがそんな事を話していると


「私は元の世界でやる事がありますので、すみません。そのお気持ちだけで」

 父さんが頭を下げながら言うと


「いいえ。輝彦さんには建前上でも爵位を受け取ってもらいます。そうしないと国民が納得しませんからね」

 伯父さんがやや強めの口調でそう言ったので、父さんは渋々頷いた。


「さて今日のところはもう休んで、明日またゆっくりお話しましょ」

 祖母ちゃんがそう言ったので、皆それぞれ充てがわれた部屋へ向かった。



  

「さてと、寝るか」

 ベッドに入ろうとすると

「ダメだにゃ。まだ寝かさないにゃ~」

 いつの間にかマウがすっぽんぽんでそこにいた。


「おい、今日は勘弁して」

「嫌だにゃ。早くお祖父様とお祖母様に曾孫の顔見せてあげるんだにゃー!」

「ウワアアアー!」


 ……俺は気を失うまで搾り取られた。

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