第12話「賑やかな食卓」
「ねえ父さん、面倒見るのはいいけど何で家に?」
「どこかに部屋借りるにも金がかかるだろうが。家なら部屋もたくさんあるから安上がりだろ」
父さんは「何言ってんだこいつは?」と言う目をしていた。
大丈夫だろなこいつ。
仲間の仇とか言って襲ってこないだろな。
「あの、私仇討ちなんて考えてないから」
ラッテは俺が思ってる事を察したのかそう言ってきた。
「なあ。俺が言うのもなんだけどさ、それでいいのかよ?」
「ええ。私はマウと一緒にいられたら……もっとして欲しいし」
・・・・・・は?
「にゃ? 何をだにゃ?」
「何ってナニを・・・・・・ああ」
ラッテは頬を赤らめて体をくねらせた。
どうやらマウに食われてアッチへ行っちゃったようだな。
「ねえ、この人って政彦が言ってたマウス星人?」
奈美はラッテを見て言った。
「ああ、そうだよ」
「ふ~ん、ラッテさんて私達と変わらない姿なのね」
あ、そういやそうだ。
ねずみの耳はないし目も黒い。
服装も白いトップスと黒のスラックスだった。
「あ、それはこれのおかげよ」
そう言ってラッテは左腕にはめている腕輪を見せてくれた。
「この腕輪を使えば異星人に変身できるの。異星探索の際によく使ってたわ」
なるほど、すげえ科学力だな。
それじゃ地球人は太刀打ち出来ないわ・・・・・・
「・・・・・・改めてごめんなさい。あなた達の星を攻撃して」
ラッテは頭を下げて謝罪してきた。
「あ、いやいいよもう」
ラッテに敵意はないとわかったし。
「お詫びになるかわからないけど……地球を狙っているのはマウス星人だけじゃないわよ」
ラッテは頭を下げたまま不穏な事を言った。
「え? まだ他にも侵略者がいるのか?」
「ええ。でも彼等は私達みたいに大々的に武力で来たりはしないわ。たとえば地球人に変身して内部からっていう感じのもいるわ」
「ふにゃ? じゃあもう誰かに変身して・・・・・・あ、政彦になってるかもしれないにゃ! だから身体検査を」
ゴラー!
違うとわかってるくせに俺の服脱がそうとすなー!
「ちょっとマウさんやめなさいよ! 政彦が偽物なわけないでしょうが!」
奈美はマウに怒鳴った。
「わからないにゃ~。あ、奈美はズボン脱がしてくれだにゃ」
「え・・・・・・そ、そうね。わからないわよね。じゃあ・・・・・・」
奈美も何やっとんじゃあー!?
血迷ったかー!?
「マウ、私も手伝うから後で私を脱がして・・・・・・」
ラッテもかーー!?
「ねえあなた。わたしはマウちゃんが政彦のお嫁さんにいいかなあ、と思ったけど」
「マウちゃんも悪くないんだが、俺は奈美ちゃんを推したいなあ。ずっと昔から政彦を・・・・・・だったし」
「あ、そうだったわね。う~ん・・・・・・まあ最後は政彦が決める事よね」
「そうだな。さてと、おーい皆、そろそろ夕飯にするぞ~。今日は寿司とかいろいろ取ってあるからな~」
父さんがそう言うと全員の動きが止まった。
「ふにゃ? 寿司って何だにゃ?」
あれ、マウは寿司を知らないのか?
千年前の日本には寿司ってもうあったらしいけどなあ。
当時と名前が違うのかな?
「わかんないにゃ。でも何か美味しそうな気がするにゃあ」
「私は知識だけありますが、実際に見た事はないです」
ラッテがそう言う。
「へえ。てかラッテは地球人の食べ物食べられるの?」
「私達の食べられる物は、だいたい地球人と同じですよ」
「そうなんだ。しかし今日は奮発したね父さん」
「まあ今日は皆の歓迎会でもあるからな」
あ、そういう事か。
普段は質素だけど使う時は使う、これはうちの伝統だし。
それから皆で乾杯してから夕飯にした。
テーブルには寿司や刺し身やフライ、デザートなどがあるオードブルセットがあった。
父さんと母さんは酒飲んでるが未成年の俺と奈美はジュースだ。
あ、マウとラッテも酒飲んでる・・・・・・
マウは見た目は中学生くらいだけど少なくとも千年は生きてるし、そもそも妖怪だから別にいいとは思う。
ラッテは宇宙人だけど、何歳なんだ?
「あ、私は二十四歳よ。歳の取り方も地球人と同じよ」
ラッテが察してくれたのか、自分からそう言った。
「へえ、そうなんだ。しかし改めて見るとラッテってほんと大人の女性、って感じだよな」
「あらそう? ありがと。・・・・・・あなたもよく見るといい男ね」
そう言ってラッテは俺の方に来て顔を近づけて
「マウもいいけど、あなたに食べられるのもいいわねえ」
頬を赤らめてそう言った。
「ちょっとやめなさいよ!」
「そうだにゃ! 政彦はあたしが」
奈美とマウが抗議してきた。
「なら皆で政彦に食べられたらいいじゃない」
ラッテはそう言った・・・・・・ってアホかー!
「それいいにゃ! さあ奈美も一緒に寝室に行くにゃ!」
「私は二人きりの方が・・・・・・って、何言わせるのよ!」
「・・・・・・おのれら」
「ねえあなた。こういう賑やかな食卓もいいわね」
「そうだな。これから毎日楽しくなりそうだな。他の侵略者ってのが気になるが」
「どんなのが来ても、この子達がなんとかするわよ」
「それもそうか」
「・・・・・・ふふふ」
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