番外編「マウの異世界道中記 その1」

「適当にワープしたら違う世界に来ちゃったにゃあ。これからどうしようかにゃあ?」

 最終決戦後、政彦達の元を去ったマウは何処だかわからない場所に立っていた。


「にゃあ。お腹すいたし、とりあえず食べ物を探すにゃあ」

 マウはとぼとぼと歩き出した。




 しばらく歩いた後、

「きゃあああーーー!?」


「ふにゃ!? なんだにゃー!?」

 声が聞こえてきた方へ走って行くと、


「ハアハアハア……お嬢さん、オラとオトナのお医者さんごっこしようよ」

「嫌ああああ!」

 ブクブク太って脂切ったキモい魔物がうら若き女性に迫っていた。


「だ、誰かー!」

「誰も来ないよう。さあ、脱ぎ脱ぎし」



「キシャーー!」


「え、ギャアアーー!?」

 キモい魔物はマウに引っ掻かれ

「ニャアー!」

 グシャアッ!

「……!」


 股間を蹴られて死んだ。

 男としてはだが……。



「ふう。あ、大丈夫かにゃあ?」

 マウは女性に声をかけた。


「え、ええ。あの、ありがとうございました。あの、お礼にと言ってはなんですが、せめてご馳走でも」

「それはありがたいにゃ~……じゃあ遠慮なくあんたを」

「え?」

「あんた可愛らしいにゃ~。ジュル」

「へ? キャアア!?」

 マウはいきなりすっぽんぽんになり、


「にゃあああー!」

「あ、ああーー♡」

 

 ……百合の花が咲き乱れた。




 その後

「ふにゃ~、ごちそうさまでしたにゃ」

「お粗末さまでした、お姉さま……ああ」


 マウは女性をご馳走になった後、彼女の家でご馳走になっていた。

 

「にゃあ、では食後のデザートを」

「え、ああ~♡」


 そしてまた百合の花が咲き乱れ、おいこら。


 

「ふにゃ~。しかしあたしって女の子とばかりしてるにゃあ」


 そりゃあ、野郎との書くと消されるかもなあ。


「どうせあんた上手く書けないから大丈夫だにゃ」


 ……(泣)




 そして翌朝。

 マウと女性は朝食を取りながら話していた。

「にゃ~、ところで昨日の変態魔物みたいなの、他にもいるのかにゃ?」

「え、ええ。実は」


 ある日の事でした。

 近くの山の麓に突然大きな黒いお城が現れたのです。

 そしてそこから不気味な声が聞こえてきました。

「我は魔王、この地を支配する者なり」


 その後魔王の手下達が若い女性達を根こそぎ攫って……。

 

「私はこの村外れに住んでいたせいか難を逃れていましたが、とうとう昨日見つかってしまって」

 

「そうだったのかにゃ。よし、あたしがそいつらやっつけてあげるにゃ」

「え? いえ、いくらなんでもそれは」

「大丈夫にゃ。じゃあ行ってくるにゃあ」


 マウは魔王の城へと向かった。




 そしてあっさり城の中に入り、玉座の間まで来たが、ここまで誰とも出会わなかった。


「あれ? 留守かにゃ~?」

 マウがそう呟いた時


「いや、部下達じゃ間違いなくあなたやられるからさ、引っ込めたんだよ」

 いつの間にか玉座に黒いローブを纏った者が座っていた。


「ふにゃ!? 全然気配感じなかったにゃあ。で、あんたが魔王?」

「そうだよ。しかしどんな勇者が来るかと思ったら、まさか女神バステトがやって来るとはね」

 魔王はマウを「バステト」と呼んだ。


「!? ……どうやらインチキ魔王ではないようね」

 マウの口調が変わった。


「うん。でも安心して。僕は世界征服なんてするつもりはないよ。攫って来た人達も後で返してあげる」

「へ?」

 マウは魔王の言葉に驚いた。

「あの、あなたって何が目的なの?」

「僕が魔王と名乗り人々を攫ったのはね、恋人探しの為だったんだよ」


 ……


「ねえ、それなら別に攫わなくてもよかったんじゃないの?」

「そうは言ってもねえ。僕ってこんなだから、普通に交際申し込んでも」

 魔王はローブを脱ぎ、その素顔をマウに見せた。


「……え?」

 

「どう、驚いた?」

「そ、その顔は?」

 

 魔王の顔は左半分が焼け爛れ、口に出すのも憚られる有り様だった。

 だがマウが驚いたのはその事ではなく

「ま、政彦?」


 そう、残った右半分、その顔は政彦によく似ていた。


「ん? ああそうか。ねえ、よく似てる?」

「え、ええ。本当に瓜二つよ。他人の空似にしては似すぎ?」

 マウがそう呟いた時、魔王が首を横に振りながら言った。


「他人じゃないよ。僕は政彦の双子の弟だよ」


「へ? ……え、えええ!?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る