第26話「光」

「まあそれはそうと、他に聞きたい事があるだろう?」

 弘法大師様がそう言った。


「あ、はい。ここにある力の源って何なんですか?」

「実は俺も父もあまり詳しい事は知りません。弘法大師様、あの力はいったい?」

 俺と兄ちゃんが尋ねると


「それはな、まずはあれを見るがいい」

 弘法大師様が指さしたのは、この学校ができた時からあるという背中に薪背負った某偉人の銅像だった。


「えと、あれがそうなんですか?」

「いや、銅像の下に埋まっている。でしたな信一殿?」

 弘法大師様が兄ちゃんを見て言った。


「そうです。そしてあの銅像は妖魔みたいな連中に力の源を奪われないよう、封印の役目も果たしています」

「そのようだな。妖魔があれを使えるはずがないが、念の為にだな」

「ええ。では取り出しますか?」

「待ちなさい。どうやら次の敵がおいでなさったようだ」

 何!?


「ほう、よくわかったな。気配は完全に消していたのに」

 そこにいたのは皺だらけの横に長い顔で肌が茶色、その肌と同じ色のローブを纏った老宇宙人だった。

 てか自転車の籠に乗って空飛んでた宇宙人みたいな奴だな。


「ワシはマドー星人の長で宇宙魔王軍の参謀、ダイマドじゃ」


「マドー星人、地球で言うところの魔法使いや超能力者みたいな事ができる奴等よ」

 ラッテが説明してくれた。

「げ、そんな奴もいるのかよ?」

「宇宙は広いんじゃ。お前さんらの知らんもんなど腐るほどあるじゃろうな」

 たしかにそうだよな。でも、


「なあ、あんた魔法使えるんだったら霊力とか神力とも使えそうだけど」

「あのな、魔法や超能力は大気中にあるエネルギーや己の中にあるものでなんとかできるが、神力はどこから発生したのか、どうやって人間の肉体に宿るのかワシでもわからんのじゃ」

「そ、そうなのかよ!?」

「そうじゃ。見た目は似ているが、本質は似ていない……とそれは後にして、同胞オークボとスノの仇、討たせてもらうぞ」

 ダイマドが身構えた。


「仇って、オークボはともかくスノは死んでないぞ」

「スノはもうアッチから戻ってこれんじゃろうな……戻そうにもヨボヨボのワシでは靡かんじゃろし、司令官では余計に進ませてしまうしのう」

「ん、司令官?」

「おっといらん事言うてしもた。では行くぞ!」

「うわっ!?」


 ダイマドが手をかざすと俺達全員が動けなくなった。

 そして、


「ギャアアアア!?」

 体中に電流が走ったかのような衝撃が襲った。


「ヒャヒャヒャヒャ、まだ全員目覚めとらん今ならワシ一人でもなんとかなるわ。さあ、二度と生まれ変わって来れんよう魂を粉々にしてやるわ!」

「な、何!?」 

 そんな効果があるのかこれ!?


「これ気持ちいいにゃあ~♡」

 マウは全身クネクネさせながら何かほざいてた。

「こんな時に何言うとんじゃー! てかこれ何とかしろー!」

「にゃあ~……これに対抗できたのって光だけだったわ。ああ、気持ちいい」

「記憶戻ってもそれは変わらんのかー!?」

「そりゃ元は同じだもん」

「……あ、そうだ。弘法大師様は、え?」


「う、まさかこの体に通用する力を持っているとは」

 弘法大師様までもがダメージを受けていた。

「だ、大丈夫ですか!?」

「あ、ああなんとかな。しかしあやつ、自身の力が神力に近いものだと気づいていないようだな。もし気づいたら我々全員が一瞬で消えてしまうだろう」

「え、それヤバイんじゃ?」

「ああ、だから今のうちに光殿を」

「いや、光なら対抗できるって言っても」

「気持ちはわかるが、このままでは」


 と、その時

「弘法大師様! 僕の記憶を呼び覚ましてください!」

 光が苦しそうにしながら叫んだ。

「……いいのだな?」

「ええ、後でどうなるかより今が!」

「わかった。……はあっ!」

 弘法大師様が錫杖を振りかざすと、光の体が輝きだした。


「ま、まさか? ええい! 貴様から消してやるわ!」

 ダイマドは光に向けて力を集中しだした。だが


「えーい!」

 光が気合を入れると、俺達も含めて電撃がなくなった。

「……ま、間に合わなんかったか」

 ダイマドは狼狽え出した。



「あ……僕ってそうだったんだ」

「思い出したようだな。光殿」

 弘法大師様が光の側に寄って話しかけた。

「ええ。僕って前世じゃ女の子だったんですね。名前も今と同じで『光』」

「ああ、そして」

「今はそれは置いときます。さあ行くぞダイマド!」

 光が身構えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る