第25話「目覚めた?」
「う、うーん、はっ?」
あ、スノが気がついた。
「おい、まだやる気か?」
俺達が身構えると
「……いいえ、あなた達と戦っても勝てそうもない。さあ、とどめを刺して。あの世でオークボが、愛する人が待ってるし」
スノは座り込んだまま言った。
「うーん、そう言われてもなあ。降参してる奴にこれ以上何もしたくないし」
「なら自分で死ぬわ」
そう言ってスノは氷で短剣を作り、それを喉に当てようとした。
ってやめ
「ちょっと待つにゃ!」
俺が止めようとする前にマウが止めに入……
「何、ほっとい、ええ!?」
見るとマウはすっぽんぽんになっていた。
「な、何を!?」
「にゃあ~、食べちゃお」
そしてスノを押し倒して、
「にゃあーー♡」
「ああ~~~♡」
百合の花が咲き乱れた……。
「あ……」
スノはうつろな目をしていた。
「ふにゃ~、ごちそうさま~」
と、マウが口元を手で拭っていた。
って。
ゴン!
俺はマウを思いっきりどついた。
「何するにゃー!?」
「それはこっちの台詞じゃー! いきなり何しやがるんじゃー!?」
「この子をイかしたかったんだにゃ」
「おい、それ言うなら『生かしたかった』だろ」
「どっちもだにゃ」
「もう一発殴ろうか?」
「あのオークボだってこの子は生きてて欲しいはずだにゃ。だからこれからもいかせてやるにゃ」
「あのなー!」
「相変わらずだなマウ殿、いや……様は」
弘法大師様が何か呟いていた。
とりあえずスノはまた気を失った。
次に目覚めた時は目覚めてるんだろうなあ、たぶん。
「あの、ラッテは覚醒したけど、俺達はどうすればいいんですか?」
気を取り直して聞くと弘法大師様は、
「政彦殿と奈美殿、信一殿は彦右衛門様に頼めばすぐにでも前世の記憶が蘇ってくるぞ」
そう言ったが、ん?
「弘法大師様、なんでうちのご先祖を様付けするんですか?」
「ん? 何故って当然だろうが」
弘法大師様は何を言ってるんだ? という表情だった。
「いや弘法大師様の方が年上でしょ。あ、ご先祖様って生前は藩のご家老様だったから、それでも何か違うな?」
すると弘法大師様は顔を顰めた。
「すまない。どうやら余計な事を言ったようだな」
「へ? あ、あのそれはいったい?」
「それはいずれ彦右衛門様が話してくれるだろう。だから今は聞かないでくれ」
うーん、よくわからんけど弘法大師様がそう言うなら。
「そして残るは光殿だが。さて、どうしたものかな」
「え、えと何か不都合でも?」
光が戸惑いがちに尋ねた。
「ああ。あなたの場合は下手に記憶を蘇らせると、精神が持たないかもしれんからなあ」
「あ、あのそれって?」
「あ、そうだにゃ……たしかに」
マウが頷きながら呟いた。
「なあマウ、何か思い出したのか?」
「……光は前世では女の子だったのよ」
マウは小声で話しだした。おそらく千年前の喋り方で。
「え、そうだったのか?」
「ええ。そして光は政彦、あなたが大好きだったのよ」
「なんだって!?」
俺は思わず叫んでしまった。
「静かに。でも前世の政彦は『自分は一生誰とも結婚しない』と言って断ったの」
「え、何で?」
「……それは私の口から言えない。ごめんなさい」
マウは悲しそうな顔で言った。
何だよ前世の俺は?
ま、まあもし光と……だったら俺はどうしていいかわからなくなっただろうな。
「もし記憶を完全に蘇らせたらもっと苦しむかもしれない。今世でも望みがないのかと……ふにゃ? あたし……そうにゃ、だから」
マウがいつもの口調に戻った。けど何言ってたかは覚えてるみたいだ。
「にゃあ。だから光は今世でも政彦が好きなんだにゃ。前世を覚えてなくても」
そうか。同性愛自体は否定しないけど、自分自身がと言われたら悪いが無理だ。
「それでもよければ私が記憶を起こすが、どうする?」
弘法大師様が尋ねたが、光は返事をしなかった。
「今すぐでなくてもいい。その気になったら言ってくれ」
「……はい」
返事は弱々しかった。
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