第21話「彼があんなに」

「もう一つ聞くが、あんたらはその力を手に入れてどうするんだ?」

 兄ちゃんがまた聞いた。

「決まってるだろ、それを魔王様に捧げるのだ。そうすればもはや無敵だ」


「そうだろうな。で、どうやって?」

 兄ちゃんが尋ねるとオークボは無言になった。

 って何も考えナシか!?


「よし、それならその方法を教えるから、こいつらの命は助けてくれないか?」

 兄ちゃんが俺達を指さしてそんな事言った。

 

「なんだと、方法があるのか!?」

「ああ、この地球にはその力の源と言われている物があるんだ」

 え、そんなものがあるの?

「おい、本当かそれは!?」


「ああ。まあ理解できるかわからんが」

「ちょっと待て。おい、聞いていたか? おお……」

 オークボは左腕につけていた通信機で誰かと話しだした。

 たぶん仲間か?


「よし、他の仲間も賛成した。お前の望み通りそいつらは殺さん。ではその方法を教えてもらおうか」

 オークボは余裕の笑みを浮かべていたが、


「いいぞ。ただし……」

 兄ちゃんは口元をニヤリとさせたかと思うと

「ん?」

「俺に勝てたらな!」

 そう言ってどこからか出した日本刀を構えた。

 

「何!? ……げ、戦闘力が計測不能だと!? 馬鹿な、さっきまではほとんど数値がなかったぞ!?」

 オークボは左腕の機械を見た後でそう叫んだ。

 あれって戦闘力も測れるのかよ?

 てか計測不能って、どれだけだよ?


「アホかお前は。さっきから俺が気を溜めてたのに気づかなかったのか?」

「なんだと!?」

「お前といきなり戦っても勝てそうもないが、これだけの気があれば。オツムがカラでよかったぞ」

「何……おのれえええ!」

 オークボが怒りながら兄ちゃんに殴りかかっていった。

 だが、

 

「受けてみろ、我が祖先より伝わりし奥義、光竜剣!」

 兄ちゃんが刀を振り下ろすとそこから竜の形をした気(?)がオークボ目掛けて飛んでいき


「ウギャァーー!?」


 それが直撃し、奴は木っ端微塵になった……。



「し、信一兄ちゃんってあんなに強かったのかよ。あいつって魔王四天王とか言ってたし地球を破壊できるくらい強いんだろ?」

 俺達は驚きのあまり動けなかった。


「そりゃそうだろう。信一も彦右衛門様の子孫だし、そして」

「かつて大妖魔を倒した方の子孫でもあるんだしね」

 父さんと母さんはさも当然のように言った。


 ……待てよ?

 今母さんが「大妖魔を倒した方の子孫」とか言ったけど、もしかして。

「ああ。俺が前に書いた小説な、あれ一部事実だ」

 父さんが言った。


 父さんが前に書いた小説とは、たしか岡崎家の初代である三郎様はさる戦国大名の長男だったが、戦国の世に現れた大妖魔を倒すために家督を捨てて旅に出て、数年後に仲間達と共にそれを倒した。

 その後三郎様は徳川幕府の隠密として世の闇に現れる妖魔達と戦い続け、その生涯を閉じたという物語だった。


「そしてその力と使命は子孫に代々引き継がれ、今は信一がその役目をしているんだよ」

 父さんがそう締めくくった。


「そうだったのか」

「信一兄ちゃんが……」

 俺も奈美もそんな事今まで知らなかった。


「ああ。俺はずっと妖魔と戦ってたんだよ」

 兄ちゃんがこっちを向いて言った。

「すまんな、本当ならもっと早くお前達と一緒に侵略者達と戦いたかったが、妖魔共が侵略者が攻めて来た隙をついて暴れてたもんでな」

「いや、そんな。そっちも大変だったんだろ?」

「ああ。だがもう片付いたし、これからは俺も一緒に戦うぞ。俺もどうやら六人の戦士らしいしな」

「あ、うん!」



「あれ、どうしたのラッテさん?」

 光がラッテに声をかけたが返事がなかった。

 それにずっと兄ちゃんを見つめてる……何か顔が赤い?


「ふにゃ~、信一先生ってめちゃ強いにゃ~。よーし、いつか政彦と光と三人纏めて精をたっぷりぶっかけてもら」

 ドゴオ!

「おのれは何を言うとんじゃー!?」

「だってよんぴーしてみたいんだにゃー!」

 マウは頭を押さえながら叫んだ。

「しょうもない事覚えんなー!」

「ねえ政彦、僕にもぶっかけ……はあはあ」

「光、血迷ったかー!?」



「……もうそういうのって無いのかと思ったわ」

 奈美がボソッと呟く。

「それは無理だ。この物語は変態が書かれてないとつまらん、だろうな」

「そうよ。マウちゃんという変態娘がいるから見てくれる人も僅かにいるはずよ……たぶん、きっと」

 父さん母さん、そんな事言わんでくれ。


 ――――――


「オークボがやられるとはのう。迂闊に賛同してしもうたワシらのせいでもあるな」

「ええ。しかし参謀殿、奴等はもうかつての力が戻ってるのでは?」

「いや、まだあいつら誰も完全覚醒しとらんぞ」

「それであの強さですか。では覚醒したらかつてよりも」

「そうじゃな。だがどうやら今は一瞬しかあの強さにはならんようじゃ」

「ではその前に。よし。次は私が行きます」

「待て、司令官に伺ってから……ああ、そうじゃった。お前さんとオークボは」

「ええ……」

「わかったわい。司令官にはワシから言うておくからの。じゃがくれぐれも気をつけてな」

「参謀殿、ありがとうございます。では」

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