妖怪猫女が侵略者退治して少年と(自主規制)しようとする物語

仁志隆生

第一部

第1話「少年と伝説の大妖怪」

 西暦二千◯◯年

 地球は外宇宙からの侵略者に襲われた。

 世界の国々はそれに立ち向かったが、侵略者の科学力の前には地球などゴミクズ当然だった。


 やがて世界の国々は次々と蹂躙されていき、残ったのは日本だけとなった。

 

 多くの者はもう諦めていたが、まだ諦めてない者もいた。


 この物語の主人公である少年が。



 彼の名は石見政彦。

 十六歳の高校一年生で背の高い痩せ型の少年。

 政彦の家は江戸時代から続くそこそこの名家だった。



 政彦は奴らに対抗する術を考えていた。

 そしてふと亡き祖父に昔聞いた事を思い出し、家の庭にある蔵に入って中をあさり始めた。

 そして何時間か過ぎて

「ん~と、あ、これがじいちゃんが言ってた本?」

 政彦は一冊の古びた書物を見つけた。それを開いてみるとそこにはこう書かれてあった。


 この大妖怪はかつて日ノ本最強と呼ばれていた。

 性格はまあともかく、悪い心の持ち主ではなかった。

 ある日この大妖怪は星からの脅威を討ち滅ぼしたが

 そのあと時の帝に報酬として無理難題を突きつけたので

 やむなく大剣豪で法力使いでもある池免武蔵いけめんたけぞうが全ての力を使って竹筒に封印した


と。


「最強の大妖怪。もしこれが本当なら奴らに対抗できるけど、後でどうなるか……ええい! 悩むより行動だ!」

 そう言って政彦はどこかへ向かった。



 政彦が辿り着いた場所は某県の山奥だった。

「ここか。しかしいい眺めだよな。まるで何事も無いかのようだ」

 そこには大きな滝があった。

 何百年も前から変わらずにそこに流れているかのように。


 政彦はそこから更に山奥へと進んでいった。

 そして小さな祠があった。


「ここに池免武蔵が封印したっていう大妖怪がいるのか?」

 政彦がそう呟くと

「わしが封印したわけじゃないわい」

 どこからともなく声がした。

「は? 誰だ!?」

「ここじゃよ」

 政彦は声がした方を見た。

 するとそこにいたのは、頭が禿げ上がり、顎に長い髭。やや皺があって優しげな顔立ちで、赤いちゃんちゃんこを着て仙人が持ってそうな杖をついている老人だった。


「あ、あんた誰?」

「わしかい? たけさんとでも呼んでくれ、ほっほっほ」

 その老人、たけさんはそう言った。

「で、お前さんはこれを探しに来たんじゃろ?」

 そう言ってたけさんは懐から竹筒を取り出した。

「あ、もしかしてそれが文献にあった竹筒?」

「そうじゃよ」


「そしてそれが伝説の大剣豪、池免武蔵が封印したっていう」

「だからさっきわしが封印したんじゃない言うだじゃろが。これはわしが若い頃にとある法師から貰ったもんなんじゃ。それがどこでどう間違ったのか、わしが封印したと後世に伝わったんじゃ」

「じいさん、まるであんたが池免武蔵のような口ぶりだな?」

 政彦がそう言うと

「お前さん本当に彦右衛門さんの子孫か? 顔はよう似とるのにおつむの方は似とらんのう、はあ」

 たけさんはため息をついた。

「え、それうちのご先祖様の名前。なんで知ってるの?」

「わしと彦右衛門さんは親友じゃからのう」

「は? 彦右衛門様って三百年くらい前のご先祖様だぞ」

「わしゃもう七百歳になったかのう? ほっほっ」

 たけさんは背筋を伸ばして笑いながら言った。


「本当かよ? マジであんたが?」

 政彦はまじまじとたけさんを見つめた。


「信じられんじゃろが、本当じゃ。わしは元は、まあこれはええかの」


「わかったよ。あんた少なくとも嘘言ってるようには見えないし。で、その竹筒の中に星の脅威を滅ぼしたっていう大妖怪がいるの?」

「そうらしいがの、わしも詳しくは知らんのじゃよ」

 政彦の質問にたけさんはそう答えた。


「え、たけさんはそれ開けたことないの?」

「ああ。下手に開けたら危ない、と言われてたからのう。でも今はそんな事言うておれんわな」

 たけさんは空を見上げた。


「うん、あいつらは」

「すまんのう、わしがもうちょっと若かったら、あんな奴ら全員蹴散らしてやるんじゃがのう」

 たけさんは本当にすまなそうな表情で言った。

「あ、いやそんなに気にしないでよ。てかここは俺達若い者に任せてよ」

「そうか、ありがとうな。ではこれは政彦、お前さんが開けてくれんかの」

 たけさんが竹筒を差し出して言う。

「え、いいけどなんで?」

「お前さんならこの大妖怪を制する事ができる筈じゃからのう。さ」

「え? う、うん、わかったよ」


 政彦はたけさんから竹筒を受け取ると、少し離れてからその蓋を開けた。

 すると

「うわああ!?」

 竹筒から勢い良く煙が吹き出して辺り一面の視界を塞ぐ程に広がった。



 やがて視界が晴れると

「ふに~、やっと出られたにゃあ」

「え?」


 そこにいたのはショートボブの黒髪で目がくりっと可愛らしく、頭に猫耳、お尻に尻尾がある巫女装束の中学生くらいの少女だった。



 そして政彦とこの少女(?)の物語は、ここから始まった。

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