第23話「そんな事が」
「え、えっと、何故そんなに若いんですか?」
俺はおそるおそる尋ねてみた。
「ああ、この体は我が神力で作った仮初めの体だからだよ。本当に千二百年も生きてたら、今頃即身仏のようにガリガリであろうなあ」
弘法大師様は笑いながらそう言った。
そういう事か……しかしそんな事出来るなんて凄え。
そして弘法大師様はマウを見て、
「千年ぶりですなマウ殿。あの時とはお互い姿が違いますが」
え、弘法大師様はともかくマウも?
「ふにゃ~? あたし実は前の事あまり覚えてないんだにゃ」
「おや、そうでしたか。はて?」
弘法大師様は首を傾げた。
その様子からして予想外みたいだが。
「ふーむ。もしかすると、その姿で封印してしまったからかもしれませんな」
「あの、弘法大師様。マウって以前はどんな姿だったんですか?」
俺が聞くと、
「ん? ああそうか、皆まだ知らないのだな。今言ってもいいが、それでは皆の覚醒の邪魔になるやもしれんな」
へ、それどういう事?
「まあそれより、皆私にいろいろと聞きたいのだろ?」
弘法大師様がそう言った。
「あ、はい。お聞きしたいのですが俺達は」
兄ちゃんが尋ねた。
「ああ、お前さん達はかつてこの地球の危機を救った六人の戦士達、その生まれ変わりだ」
「あの、これってもしかして弘法大師様が?」
「そうだ。千年後、つまり現代に奴が蘇ってくるのはわかっていたからな」
「そうですか……あの、弘法大師様は宇宙魔王を倒せないんですか?」
「ああ。たとえ私が全身全霊の気を放っても奴を一時的に封印するのがやっとだな」
弘法大師様でもデタラメな感じなのに、宇宙魔王ってそれ以上かよ。
「あの、何故私だけマウス星人として生まれたんでしょう? これもあなたが?」
今度はラッテが尋ねた。すると、
「どこの誰に生まれ変わるかまでは私にも読めなかった。まあ、ラッテ殿がマウス星人として産まれたのは、前世のあなたにはマウス星人の血が流れていたからかもな」
弘法大師様はそう言った。
「え、それはいったい?」
「私の知る所では前世のあなたの母君がマウス星人、父君がこの星の者だったのだ」
「そ、そうだったんですか?」
「ああ。母君はマウス星人達をこの星に住まわせて貰えるよう、当時この国の権力者であった父君にたった一人で頼みに来たらしい。母君の必死の思いに心打たれた父君はなんとかしようとしたが、いかんせん数が多すぎてな」
そうだろうなあ、以前聞いたけど当時のマウス星人って十万人はいたらしいし。
「記録では祖先は話し合いをしようとしたが、聞いてもらえず攻撃されたと」
「それは宇宙魔王が倒れた後、母君が他国へ交渉に行った時の事だろう。そちらで母君は……殺されてしまったのだ」
「え?」
「父君やあなたの仲間達のように異形の者でも差別しない者などそうそうおらん。正体を現した瞬間の事だったそうだ」
「だから祖先は武力行使で。母の仇討ちもあって」
「ああ。母君はマウス星の女王でもあったので、その怒りは凄まじいものであっただろう。前世のあなたは母を討った者は許さなかったが、地球への総攻撃はなんとか止めようとしてくれた……だが病にかかり、皆を止めきれないまま若くして命を落としたのだ」
そんな事があったのか。
だとしたら地球人にも非はあるけど。
「その後はマウ殿が彼等を倒した。生き残った者達は宇宙へ逃げ、そしてその後は皆が知ってる通りだ」
「そうだったのね。最初に地球に来た時、征服するはずの星なのに何故か懐かしく感じたのは」
「前世の記憶かもな……さて、まだ聞きたい事はあるだろうが、敵さんがお出ましになったぞ」
え?
すると俺達の前に髪も肌も白く、白いローブを纏った女性が現れた。
ってこいつも宇宙人か?
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