第16話「・・・・・・」

「・・・・・・まさか光、お前の先祖って、たけさん?」

「そうだよ。池免武蔵いけめんたけぞうは僕のご先祖様。といってもまだ生きてるけどね」


「う、嘘だろ!? だって文献によると池免武蔵は生涯独身・・・・・・あ、まだ生きてるからもしかして世間が忘れた頃にどっかで?」


「えっとね、母さんの実家の言い伝えでは、たけぞう様は若い頃おりん様という女性と一度だけ(ズキューン!)してね。それでおりん様は妊娠したけど、たけぞう様とはその後再会することなく息子を産んだんだって。そしてそこから延々と、僕の代まで血筋は続いてるんだ」


「・・・・・・そうだったのか」

「うん、あとたけぞう様から彦右衛門様とは親友だったって聞いてる。そして今は僕達も」

「そうだよなあ。俺達も友達だよな」


「・・・・・・やっぱ友達はやだ」

「はあ!? 何でだよ!?」


「・・・・・・僕はずっと政彦が」

 そう言って光は急に俺を押し倒してきた・・・・・・っておい!?

 まさか!?


「・・・・・・せめて一度だけでも、ハアハアハア」

 ちょ、ちょっと待てー!

 俺ソッチの趣味ねえー!

 てか誰か止めろー!


「ふにゃ~? 男の子同士のなんて滅多に見れないしにゃ~」

「興味があるから止めないわ・・・・・・ハアハア」

「ちょっと二人共・・・・・・ま、まあちょっと見てみたいような。てか小説の参考に」


 てめえらーーー!


 俺はその後なんとか逃げ出した・・・・・・




 結構遠くまで走って・・・・・・

「ふう、ここまで来れば・・・・・・」

「にゃあ」

 うわあ!

 あ、マウか・・・・・・いつの間に後ろに?


「政彦」

 ん、どうしたマウ? えらく真剣な顔して?

「・・・・・・もうここで終わりみたいだにゃ」

 は、終わりって?

 しかし何かいつもと雰囲気が違う。

「まさか偽物?」


「偽物、と言えばそうかもにゃ。だってここは夢の世界だもん」

「え? それってどういう事だよ?」


「あたしね、本当はあの筒から出してもらった後すぐにこの星を脅かす脅威を払ったんだにゃ。でもそれであたしの寿命も残り僅かになったにゃ・・・・・・だから最後は大好きな政彦とにゃんにゃんしたり楽しく過ごそうと思って、残りの力を全部使ってこの夢の世界を作ったんだにゃ」

 マウはそう語った。


「・・・・・・マジかよ、じゃあ今までの事は全部夢?」

「うん。でももうその夢も終わりだにゃ・・・・・・もうちょっと持つかと思ったのににゃ~・・・・・・にゃあ」

 マウの目から涙が流れていた。


 それでその言葉に嘘偽りはないと思った。

「政彦・・・・・・あたし本当に一目見た時から政彦が大好きだったにゃ・・・・・・だから最後のお願い聞いてほしいにゃ」

「なんだよ最後って。まだ終わってねえ、いや終わらせるか!」

「ううん、もうダメにゃ。だからお願い・・・・・・最後に(ズキューン!)しよ」

「最後のお願いでそれかよ。てか本当にもうダメなのかよ? これから皆で楽しく・・・・・・あ・・・・・・あれ?・・・・・・え!?」


 俺の頭の中に何かが・・・・・・あ、そうだ・・・・・・皆は・・・・・・


「思い出してきたかにゃ? この星の人はもうほとんど残ってないにゃ。政彦のお父さんもお母さんも、先生や大勢の友達も、もう死んじゃってるにゃ・・・・・・あ、奈美は生きてるから、起きたら早く戻って安心させてあげてにゃ」


「奈美が・・・・・・そうだ。奈美は」

「いとこ同士で恋人だにゃ。・・・・・・奈美にちょっとだけ政彦を借りてごめんなさいにゃ、って言っといて」


「言えるかよそんな事。俺がマウと・・・・・・したなんて言ったら殺されるわ」

「え・・・・・・言っといて何だけど、いいのかにゃ?」

「都合のいい事言うなら・・・・・・ここは夢の世界だろ。夢の世界の俺はマウが」

 そう言って俺はマウと・・・・・・


 ・・・・・・


 ・・・・・・


 ・・・・・・


 ・・・・・・





 どのくらいの時が過ぎたのだろう・・・・・・

「政彦・・・・・・ありがとにゃ。大好き」


 マウの体が透けていった・・・・・・

 そして、俺の意識が遠くなった。




「う、う~ん?」

「おお、気がついたかの」

 そこはどこかの山小屋のようだった。

 そして俺に声をかけたのは

「・・・・・・たけさん?」

 たけさんこと池免武蔵だった。

「そうじゃよ。どうやら帰ってきたようじゃな」

 そうか、ここは最初にマウと出会った場所だ・・・・・・

「ねえ、たけさんは知ってたの?」

「おお、わしだけじゃなくて彦右衛門さんもな。わしらはマウちゃんの目的を聞いてな、お前さんが目覚めるまでここで見守っていたんじゃ」

「そうだったのか・・・・・・」


「マウちゃんに聞いたんじゃがな、彼女があの筒にいたのは自分の意志でだったんじゃ。いずれ再びこの地球に脅威が来る、だがその時まで生きてる自信がない、いやたとえ生きていたとしても年老いて、力も衰えている・・・・・・だから弘法大師様にお願いして、若いままで封印してもらってたんじゃと」

 たけさんが説明してくれた。


「でもそれって、もし誰も気づかなかったらどうするつもりだったんだ?」

「それはな、この封印はかつてマウちゃんが愛した男の生まれ変わりにしか解けないようにしてもらったそうじゃ。そしてこの地球に脅威が訪れた時きっと彼・・・・・・政彦が自分を見つけてくれる。そう信じてたから、と言うとった」


 ・・・・・・


 マウ・・・・・・俺は・・・・・・


 ・・・・・・俺はその場で大声で泣いた。


 たけさんは黙って外へ出て行ってくれた。

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