第4話 アイカツおじさんと世界最強の女児
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※この物語は、事実を基にしたフィクションである。
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「みんな~! こーんにーちはー!」
ステージに立った司会のお姉さんが集まった子供たちに呼びかけると、間髪入れず元気な声が返ってきた。お子様用の優先席の後ろでは親御さんたちが暖かく見守り、権助らアイカツ!グッズを身につけた大人たちは、さらにその後ろ。すっかり見慣れた光景である。
「それじゃあ早速、特別ゲストを呼んでみたいと思います!」
お姉さんの宣言と同時に沸き起こった大きな拍手に乗って、憧れのアイドルたちが、アニメやゲームと変わらぬ衣装を輝かせながらステージに上がった。
これから発売される新グッズの紹介や、ゲーム筐体のデモンストレーションといった販促活動をきっちりこなした後は、いよいよ(大人たちも)お待ちかねのミニライブの時間である。ミニとは言っても、この日は大勢が訪れる大きなイベントの中でのステージということもあり、がっつり5曲を披露する気合の入れようである。
そして、楽しい時間はあっという間に過ぎて……。本日、最後に歌う曲は。
「それでは聴いてください……『じゃんけんキラっと!プリ☆チャン』!」
* * *
「『アイカツフレンズ!』目当てで来たのに、まさか『プリ☆チャン』の無銭イベントが見られるとは。実にラッキーだった」
『プリパラ』の後継作となるタカラトミーの女児向けアイドルアニメ『キラッとプリ☆チャン』で声優と歌唱を務めるユニット「Run Girls, Run!」がステージから捌けると、権助は満足げに呟いた。どうやら、周囲に集まって見学していた他のアイカツおじさんたちも権助と同類のようである。
2019年8月17日(土)、午後一時。
権助はお盆休みを利用して、横浜市みなとみらいにある、ここパシフィコ横浜・展示ホールDで開催されている、ちゃおサマーツアー&フェスティバル2019、通称「ちゃおフェス」に遊びに来ていた。『ちゃお』とは、小学館が発行している小学生女児向け漫画雑誌で、男児で言うところの『コロコロコミック』の立ち位置である。この「ちゃおフェス」では、ちゃおとタイアップする様々な玩具メーカーやゲームメーカーが一堂に集まり、こうして新商品の宣伝やステージイベントを催すのだ。
「さて、ちょっと早いがそろそろ会場に向かうとするか」
腕に巻いた『アイカツ!』スマートキャンバスで時刻を確認する。こうしてイベントを満喫してはいるが、権助がここ横浜までやってきたのはちゃおフェスのためではない。本日18時より、隣接するパシフィコ横浜・国立大ホールにて開催される『BEST FRIENDS! スペシャルLIVE ~Thanks⇄OK~』に参戦するためである。このライブは、『アイカツフレンズ!』が歩んできた一年半の集大成とも言える一大イベントだ。しかもお盆休み中の開催とあれば、遠征しない理由はないだろう。
手元のスマホでキラキラッターを確認すると、物販エリアでは既に全国から集まったキラキラッター民たちがオフ会を開いているようだった。権助も彼らに合流すべく、ちゃおフェスを発とうとした……その時。
「あっ、権俵さん!」
振り向くと、声の主はツヅキさん。先日の「アイカツ!カーニバル!」にもサークル参加していた、マイキャラ推しの作家さんである。
「あ~! お久しぶりです! ツヅキさんも、これから物販ですか?」
「もちろん物販にも行きますけど、その前に……もし、まだお時間あるならあっちの『アイカツフレンズ!』ブースに行きませんか?」
女児向けイベントであるちゃおフェスには、もちろん我等が『アイカツフレンズ!』も出展している。しかし、先程ちらっと覗いた限りでは、オフィシャルショップでも取り扱いのあるグッズの展示と筐体が置いてあるくらいで、まさか子供に混じってフリープレイの列に並ぶわけにもいかない権助たちアイカツおじさんにとっては、特筆すべき見所があるとは思えなかった。……が。
「きっと、すごいものが見られると思いますよ」
ツヅキさんは、自信ありげにそう言った。
* * *
「よく見ると、なかなか豪勢なブースですね」
「すごいもの」が気になってツヅキさんと一緒に見に来た『アイカツフレンズ!』ブースは、前後に四台ずつ並べられた計八台ものデータカードダス筐体を挟むように、左右に可愛らしくデコレーションされた大型の中継モニターを配していた。
「皆様、『アイカツフレンズ!』ブースへようこそ!」
登場した司会のお姉さん二人が元気よく挨拶をすると、ブースの周囲から大きな拍手が起きた。権助は、彼女たちに見覚えがあった。
「へえ、綾見さんと中里さんが揃うとは。さすがちゃおフェス」
『アイカツ!』シリーズを含む子供向けイベントにおいて無くてはならない存在……それが「司会のお姉さん」である。『アイカツスターズ!』時代に歌唱担当と共に全国を行脚し、本人役で『アイカツスターズ!』第85話にも出演経験のある綾見有紀さんと、『アイカツフレンズ!』でその役目を受け継ぎ、アイドルカードお渡し会にミニライブにと活躍する中里陽芽さん。権助は、これまで何度も彼女たちが無軌道な子供たちを相手に完璧な回しをやってのける姿を見てきたのだった。そんなベテラン二人が揃ってMCとは、一体これから何が行われるというのか。
「それでは……いよいよ、ジュエリングカップ・中学生以下クラス、決勝大会を開催したいと思います!」
その宣言に合わせて、ブースの中に大きなボードが運ばれてきた。
トーナメント表。
8人ずつ名前の刻まれた左右のピラミッドが、中央に輝く「優勝」の文字で結合している。2ブロック制、ベスト16による決戦絵巻である。
正式名称「全国No.1アイドル決定戦 ジュエリングカップ」。
それは、文字通りNo.1アイドルを決める大会。2019年7月1日(月)~7月28日(日)の期間中、専用ステージでスコアアタックを行い、「中学生以下クラス」と「年齢制限無しクラス」でそれぞれ選出されたWEBランキング上位100名によって争われる決勝大会……その中からさらに絞られた16名による最後の決勝トーナメントが、今ここで行われようとしていた。
「今日ここでやるのは中学生以下クラスなんですが……見てください、あのトーナメント表。かわいらしい名前ばかりですが、並んでいるのはいずれも『アイカツ!』スコアタ界では有名な子供たちですよ。それに、この大会を見学に来た周りの大人たち。彼らの多くも『年齢制限無しクラス』では有名なスコアラーです」
先日のダイヤモンドフレンズカップで初めてスコアタの世界に足を踏み入れた権助は、経験の長いツヅキさんの解説に耳を傾けつつ、集まった子供たちに目を向けた。中学生以下とは言ってもさすがに全国大会、本当に小さい子供はおらず、やはり小学校高学年から中学生が多いようだ。
「それでは一回戦! ピーチちゃんとコムギちゃん、すかいちゃんとみこちゃんの対戦です!」
呼ばれた四人は、ステージの中央で二手に別れて立った。準決勝までは二組ずつの同時進行で、筐体のプレイ映像は左右の大型モニターにもそれぞれ映し出されている。
「まずは、コーデを決めてください!」
四人は迷うことなく、同じ組み合わせのドレス……『ハミングトパーズコーデ』を選択した。これは、現時点で決勝大会の課題曲『ひとりじゃない!』において理論値を叩き出すための唯一無二の「武装」であった。
「それでは……スタートッ!」
ゲームが始まり、権助は中継モニターに注目した。画面上部には、左右の端から中央へ向かって伸びた赤と青のポイントゲージがせめぎ合う。その下には、左右対称に二人分の譜面が流れていた。それらは、いつも和気あいあいと仲良く楽しく『アイカツフレンズ!』を遊んでいる権助には見慣れぬものだった。
(これは……対戦モードだ!)
自分との戦いだったダイヤモンドフレンズカップとは違い、一台の筐体でふたりのプレイヤーが隣り合って戦う。相手の動きや自分の緊張までもがダイレクトに伝わる距離。かつてゲームセンターで向かい合わせの対戦台が普及する以前の、原初の戦いの光景がそこにはあった。
(うわ、こんなに光る(*1)ものなのか……!)
流れてくるノーツが次々と「パーフェクト!」の文字に変わっていく。同じDCDプレイヤーである権助はその光景に息を呑んだ。データカードダス『アイカツ!』シリーズは、カードを揃えれば小さな子供でも簡単にクリアできるように設計されている一方で、ハイスコアの理論値を出すのが恐ろしく難しいことでも知られている。その最大の要因は(公表はされていないが)わずか2フレームしか猶予が無いと言われるパーフェクト判定の狭さにあった。つまり、今、目の前で連続パーフェクトを出している二人の子供は、2フレーム……30分の1秒の瞬間を寸分たがわず狙い撃ちし続けていることになる。
(*1:リズムゲーム用語で最高判定を出すこと)
「なんというレベルの戦いだ……」
とはいえ、そういつまでもパーフェクトだけを取り続けることはできない。連続ノーツの最後、2P側に一段劣る「ベリーグッド!」の文字が浮かびあがった。と同時にキラン、と甲高いSEが鳴った。これは、二人のプレイに優劣が発生したことを示す「コイン」と呼ばれるサインである。自分の譜面だけに集中しているプレイヤーに対し、聴覚へ勝負の途中経過が逐一送られてくることで、それはプレッシャーや油断に形を変え、プレイ内容に影響を及ぼすことになる。これこそが対戦モードを「真剣勝負」たらしめる特徴であった。
「来ますよ、専用スペシャルアピール!」
トップス・ボトムス・シューズの各コーデによって1ステージにつき三度発動するスペシャルアピールは、一気に高得点を稼げるポイントである。従来はボタンの早押しで発動できるプレイヤーが決定していたが、この『アイカツフレンズ!』二年目「かがやきのジュエル編」では、画面上部から降ってくる三色のノーツをより正確に叩けた方が発動できるシステムとなっている。
余談になるが、これは初代DCD『アイカツ!』における星座アピールの発動条件と同じであり、長年のプレイヤーにとっては懐かしさを覚えるものであった。
”みぎのおともだち スペシャルアピール成功!”
”ジュエリングデュエット!”
最初のアピールを2P側が勝ち取り、次のアピールでは引き分け。そして最後のアピールでは。
”ひだりのおともだち スペシャルアピール成功!”
”ジュエリングデュエット!”
「お互いに一勝一敗一分けでスペシャルアピールの成功数は同じ……となると、それ以外の細かなプレイ精度が勝負の分かれ目ですね」
「……いえ、そうとは限りません」
対戦が終わり、結果発表へ。すると、ツヅキさんの言葉通り、思っていた以上の大差でひだりのおともだち……1P側のピーチちゃんが勝利した。権助が不思議に思っていると。
「スペシャルアピールの成功数は同じだったのに、意外と点差が開いたね」
権助と同じ疑問を、前列で見学していた女性が隣の男性に向かって尋ねた。
「ああ、ハミングトパーズコーデはブーツが他の部位よりアピールポイントが50高いんだよ。だから三度目のスペシャルアピールだけ得点が高くなる。成功数は同じでも、そこで差が生まれるんだよ」
腕組みをしながら解説するその男性の元へ、試合を終えたピーチちゃんが駆け寄って来た。
「おとうさん!」
「うん、いい試合だったね」
ここからは余談になるが。
今さら言うまでもないが、データカードダス『アイカツ!』シリーズは1プレイ百円のアーケードゲームである。当然、練習するにもカードを集めるにもお金がかかる。まして日本一を競うレベルともなれば親御さんの協力は必要不可欠だ。これに関して眉をひそめる向きもあるかもしれない。けれど、たとえばスポーツの世界でも、競技の種別を問わず大人の資金援助無くして頂点を目指すことができないのは同じである。野球をするには野球道具が必要で、サッカーをするにもボールやユニフォームが要る。最もお金がかかるであろうフィギュアスケートに至っては月額20万円近い負担が必要と言われている。
果たしてゲームはスポーツなのか、という問いに対し、奇しくも今、世間では「eスポーツ」の名のもとにビデオゲームが競技として市民権を得つつあるが、日本のハイスコア文化はそれよりはるか以前のインベーダーゲームから始まり、既に四十年以上に渡って連綿と続く歴史がある。これまで『マイコンBASICマガジン』『ゲーメスト』『アルカディア』といった歴代アーケードゲーム専門誌が集計を続けてきたその文化を、キッズカードゲーム業界ではこうしてメーカー主導で受け継いでいるのである。
話が逸れたが、結局のところ、親子が仲良く同じ趣味を通じて良き思い出を作れることは、何にも増して尊いと感じるのである。
閑話休題。
「次は準決勝です! これに勝てばいよいよ決勝の舞台! それではピーチちゃんとユウちゃん、どうぞ!」
その対戦が中盤に差し掛かかろうとした時、それまで静かに魅入っていた観客たちがにわかにざわつき始めた。
「えっ……?」
少し遅れて、権助もその「異常事態」に気が付いた。
「コインの音が……聞こえない……」
二人のプレイに優劣が付いた事を示すコイン取得音が、先程からまるで聞こえてこないのだ。いや、筐体の故障ではない。実際に”まったく差が付かない”のだ。それは、あまりにも拮抗した実力者同士の戦いが呼んだ静寂だった。二つの譜面が、まるで鏡面に映したように対称にスコアを刻んでいく。画面中央のゲージが赤青どちらにも偏らず、ピクリとも動かない。
”スペシャルアピール!”
”ひきわけ”
”ひきわけ”
”ひきわけ”
双方、譲らず。二人ともに三連続パーフェクトを決めると、その難度の高さを知るオーディエンスから歓声と拍手が巻き起こった。しかし当人たちにしてみれば、もはや「猶予2フレーム9連続目押し」など出来て当然の領域。ここから先は、そんな大技で決着がつく世界ではないのだ。
そして曲が終わりを迎え……決着の時が来た。
「得点発表です! パーフェクト数……なんと同じ! ということは取得したコインの数で……わっ、コインも同数! これは予想がつきません! 果たして得点は……!?」
傍から見ていた権助には、どちらが勝ったのかまったく見当がつかなかった。おそらく、他の観客たちもそうだろう。それほどに二人の実力は伯仲していた。だが、勝負において勝者は一人。ドラムロールが止まり、表示された得点は……。
「……いっ、1点差! わずか1点差でユウちゃんの勝利です!」
会場から、どよめきと共に大きな拍手がユウちゃんに送られた。
「1点差なんて見たことが無い……」
思わずツヅキさんが呟いた。長らくスコアタを見てきた彼がそう言うのだから、やはりそれほどの名勝負だったのだろう。あまりにも次元の違う戦いに、権助は言葉が出なかった。……だが、戦いはまだ終わらない。
「さあ、ついに決勝戦ですっ……! これでジュエリングカップの優勝者……つまり、日本一……いや世界一が決まります! それでは、ユウちゃん、リリイちゃん、どうぞ!」
頂点を決める戦いが始まる。ステージに立ち、筐体の前で”構えた”二人のシルエットは驚くほど対照的だった。片や、筐体に向かって中腰で前のめりの姿勢をとるユウちゃん。片や、足元に敷いたクッションに膝立ちし、背筋を伸ばして臨むリリイちゃん。
「流派が違うんだ……」
また少し話が逸れるが……まだインターネットが今ほど普及していなかった1995年のことだ。当時、社会現象となっていたセガの3D対戦格闘ゲーム『バーチャファイター2』において、国内の猛者たちが突如、台湾からやってきたゲーマーの見たことの無いプレイスタイルに、まったく歯が立たず敗れ去るという事件が起きた。海を越えてやってきたその特殊なスタイルは「台湾ステップ」と名付けられ、今でも語り草となっている。これは、新たな流派や戦法が生まれれば即座にネットの海を通して世界中に共有されてしまう現代では、なかなか考えられないことだ。
しかし、まだ年端も行かぬ女児たちの狭いネットワーク圏内においては、いまだそんなロマン溢れる多様なプレイスタイルが生きている。権助は、そこに一人のゲーマーとして感動を覚えたのであった。
……だが、事の本質は更にその先にこそあった。
「これはっ……!」
司会のお姉さんが、いち早く「そのこと」に気付いて声を上げた。
「見てください……ふたりの手を! 同じ高さ! 同じ角度です!」
ボタンからおよそ10cmほどの高さで静止した二つの右手。手首を曲げ、人差し指と中指だけを前方に突き出したその姿は、中国拳法で言うところの蟷螂拳の構えに酷似していた。瓜二つのシルエットを持つ右手が、まったく同じタイミング、同じ軌道、同じ速度でボタンに打ち下ろされ、二つの「パーフェクト!」の文字が同時に浮かんだ。確かに、ノックバックが大きく、深くまで押し込まなければ反応しない『アイカツフレンズ!』筐体のボタンを一定のリズムで確実にヒットするためには、一般的な音ゲーに比べて、より「強く」「速く」打ち込む必要がある。そのために、高所から素早く打ち下ろす作戦は実に合理的だ。さらに言えば、「大きなボタン」という不確実性を排除するため、ピンポイントに指先だけを使用するというのもよく考えられている。
(しかし、ここまで同じ動きになるとは……これがスコアアタック最先端の結論か……!)
異なる流派がそれぞれに強さを求め続けた結果、最終的に同じスタイルに帰結するというのは、かつて総合格闘技が実際に通った道である。
(腕全体を大きく使ってリズムを取るプレイスタイル。いつも極力目立たないように縮こまってプレイしているアイカツおじさんには決して辿り着けない境地だ……!)
全国の女児先輩たちの思いを背負った二人が魅せる、最後のライブ。まるで精密な機械式時計のように、正確無比のリズムと速度で指先がボタンを突き、そしてまったく同じ速さで元の位置に戻ってゆく。三度に渡るスペシャルアピールを互角に決めたところで、それまで中央で激しくせめぎ合っていた赤と青のゲージが画面から消えた。ついに最終パート。権助は固唾を呑むことも忘れ、ただ、見入った。
そして戦いは終わりの時を迎え……一瞬の静寂が訪れた。
「……結果発表です!」
画面に並ぶ、二人のアイドル。
「どちらも、当然の81コンボッ! スペシャルアピールの数は互角! そしてコインの数、12対……7!」
たった一つのスポットライトを浴びたのは。
「優勝は…………ユウちゃんですっ!」
発表と同時に自然に沸き起こったこの日いちばんの喝采は、「がんばった子供たち」にではなく、最高の勝負を見せてくれた「競技者」としての彼女たちに向けて送られたものだった。今ここには、ファミ通も4Gamerも取材に来てはいない。Twitchの配信だって無い。けれど、ここには確かに「eスポーツ」があった。
戦いを終えた二人は、もう一緒に同じピースサインで一枚の写真に収まり、歯を見せて笑いあっていた。ただ一つの頂点を目指して競い合った者同士の絆は、きっとこれからも繋がっていくのだろう。
そして最後に、惜しくも準優勝となったリリイちゃんがマイクを握った。
「えっと……私は中学三年生なので、今年が最後の挑戦でした。……だから」
静かに、続く言葉を待つ観客たち。……が、次に出てきたのはありきたりな湿っぽい言葉ではなかった。彼女の眼が、観客たちに向かってギラリと光る。
「来年からは、年齢制限無しの部で頑張りたいと思います!」
その一言で、多くの成人スコアラーを含むギャラリーが一気にざわついた。
「たっ、大変ですよ皆さん! 来年から、とんでもないアイドルが参戦ですっ!」
早くもワクワクを止められない司会のお姉さんが、うわずった声で叫んだ。
てっぺんを目指す熱いアイドル活動は、これからも続いてゆくのだ。
-おわり-
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