戦端

 争いは、戦争は始まった。

 全体では一切統率の取れていない。

 ただ、貴族たちが各々勝手に率いている軍隊単位で我が領地へと流れ込んできていた。

 宣戦布告はなかった。

 だが、領地へと無断で侵入してきたのである。 

 それは間違いようのない宣戦布告であることは同義であろう……宣戦布告は先に僕が済ませているような気がするけど、それは気にしない。


「さて……みんな。頑張ってくれよ?」


 戦争が始まる中においても、こちらは何の陣地も用意していない。

 ただ戦力を散らばしてありとあらゆるところに少数を展開していた。

 自分が展開する作戦は簡単。

 徹底的なまでのゲリラ戦である。

 どうせ我が領地における農地は死んでいるのだ。特にライヒと面している部分は余計に。

 守る必要があるものも特にない。

 僕はライヒに面する自領の幾ばくかを荒すこと決めていた。

 

「戦場の跡地には防衛のための施設を乱立させておけばいいしね。人手だって今、我が領で満ち足りていることところの方が少ないのだし。


 僕たちは最終防衛ラインにまで敵を到達させなければ大勝利である。


「……さて。僕は僕の仕事をしようか」


 空上空に浮かび、意気揚々と進軍し続けている敵兵を眺める僕は魔法を発動させる。


「黒より黒き。深淵より深き深淵に」


 自分が発動させたのは声を拡散させる魔法であり、自分が響かせるのは己が使う魔法の詠唱である。


「覗き給い、手を伸ばしたる天が魔力は世界を穿ち、地獄の釜を開かんとする」


 うちのメイドたちに考えさせたまるで意味のない詠唱を唱えながら。


「世界に産まれし新たな覇王たる我が命ず……」


 僕はその内側で淡々魔法を発動させるための準備を整えていく。


絶対零度コキュートス


 自分が発動させるのはこの世界でも圧倒的に最上位の魔法。

 世界の全てを凍り付かせるような絶対的な魔法であった。

 僕が狙った対象である国王陛下の旗を掲げる一団はそのすべてが完全に凍結させられ、そこにいた剣聖クラスの強者であろうとも、ただの雑兵であるとも、その差もなく悉くの体を冷たいものへと変えてしまうのだった。


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る