決着

 一瞬だった。

 世界に舞い降りた極寒は竜を凍り付かせ、周りの木々にまで影響を与える。

 大きく気温が変わったせいで大気にも変貌が訪れ、暴風がこの場で吹き荒れる。


「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああ!?」


 それを前にリレーシアが悲鳴を上げているような中で。


「よっと」

 

 一人冷静な僕はすぐさま気温を上げていく。

 気温を上げるのも簡単だ。普通の魔力を分子にぶつけて強引に熱運動を起こさせるだけである。

 

「……あぁ、自分でやったことだけで周りへの被害はまぁまぁ酷いな」


 さんざんと繰り出した竜の業火に、僕の一撃。

 それによって山はそこそこのダメージを負ってしまっている。


「まぁ、自然だけだし全然良いか」


 それでも主な被害は山の上にある木々がほとんどで肝心の下の方は大丈夫。土砂崩れが起きそうなほどのダメージではないし、鉱山として活用する分ならば何の問題もないだろう。

 こちらの世界は石炭なんて要らないし。

 酸素を生成したり、二酸化炭素を酸素にしたりする魔法もある。

 気候変動に関して考える必要もない便利な世界であるがゆえに木が亡くなったことに関するダメージはそこまでない。


「さて、と」


 そんなことを考えている間に、凍り付いたまま空に滞空し、ちゃっかり生命も維持していた竜が。

 それでも何も出来ずにそのまま息絶え、地面へと体を落とした中で。


「……これから、はっと」

 

 僕は未来について頭を悩ませていく。


「……これで、産業は復活する。雇用が生まれる。水の汚染解除は冒険者の食い扶持の種として残しておこう。地下水は結構あるし」


 食糧不足はある程度何とかなる。

 原因不明の飢饉は未だ解決の糸口も見えないが……それでも、他の面ではかなりマシになってくるだろう。

 そうなれば。


「……戦力か」


 残る問題としては他の貴族が軽んじられているという事実である。


「主人公は何処にいたかな?」


 完全に地面に落ちて真っ二つになった龍の氷像をつんつんと突いているリレーシアを眺めながら僕は思考を回すのだった。

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