白の炎

 アセレラへと迫るオーガストに対し、彼が発動したのは白の炎であった。


「な、なんだっ!?これはっ!!!」


 アセレラの間合いにオーガストが入るとともに展開される白の炎。

 それは一つの壁となってオーガストの動きを止め、その熱が彼に動揺を誘う


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁかあああああああああああああああああああああああっ!」


 その隙をもちろん、アセレラが見逃すわけがない。

 アセレラは無駄のない動きでオーガストへと斬りかかりに行く。


「ぬぉっ!?」


 それに対し、オーガストは無様な形で地面を転がりながらギリギリで慌てて回避していく。


「あついっ!」


 オーガストは一瞬で判断を下し、自分の体を覆っていた鎧を素手で破壊し、そのままインナーすらも引き破って上半身裸の姿となる。


「……っ」


「これならば少し耐えうるっ!」


 上半身裸となったオーガストは剣を構え、魔力で熱を耐えるようコーティングした姿でアセレラへと向きあう。


「……そ、そっか。この炎ってば熱いのかっ!?」

 

 そんなオーガストを前にするアセレラは驚愕の声を上げる。


「ぬ、ぬぅ?」


 これまで、アセレラが白い炎を使ってきた相手は剣聖であったり、よくわからない強者であるノアだったりと。

 何故か白い炎による熱がこれっぽちも効かない相手であった。

 だからこそ、すっかりとアセレラも白い炎の効果を忘れていたのである。


「あぁ……完全にノーマークだった能力だ」


「……気が抜けるなぁ」

 

 初当たり。

 その後とは思えない抜けた雰囲気にオーガストはなんとも言えない声を上げるのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る