戴冠式

 此度の戦場はこちらの完全なる勝利で終わった。

 文句のつけようのない完ぺきなものだったと言えるだろう。

 そんな勝利の美酒を味わった僕は早速、復興作業の進む王都へとやってきていた。

 そこで何をするのか。

 そんなものは簡単である。


「ノア・ルリック。貴方こそがまごうことなき疑いようのない国王である」

 

 僕の戴冠式である。

 ライヒが誇る帝城の祭壇。

 ライヒが皇帝の戴冠式にも用いられる祭壇で僕の戴冠式が執り行われていた。


「私こそが世界に覇を唱える王であることを宣言する」


 自分の前にいる大司教の言葉に対して僕が簡潔に言葉を返した後、自分が着ていた王の儀礼用ローブが外されて戴冠の椅子に座り、そのまま聖油を塗られていく。

 その後、僕はあらかじめ用意していた王笏を受け取る。

 そして、ここからがフィナーレだ。

 僕は大司教からライヒの皇帝が戴冠式の時にのみ被る歴史ある王冠を頭に頂く。


「……っ」


 頭にずっしりとした重みを感じる僕はそのままライヒの皇帝のために用意された玉座の方にゆっくりと歩んでいき、そのままそこへと優雅に着席する。

 冷遇されていた辺境伯の当主であった僕がライヒの玉座へと腰掛ける。


「神の御加護があらんことを」


 そんな僕へと大司教は淀みない声でお決まりの聖句を唱える。


「「「神よ王を救いたまえ!」」」

 

 そして、それに続いて今。

 僕の前に跪いている貴族たちが声を上げる。

 彼ら、自分の前に跪いている者たちはライヒの貴族たちである。

 ライヒの貴族が自国の皇帝が座るべき玉座へと腰下ろす反逆者へと、大司教の言葉に応じて口を開くのである。


「これを見ている我が領地の諸君。そして、世界の民よ」


 その賞賛の中で僕はゆっくりと口を開く。

 僕の言葉を聞くのは何も、この場にいるものたちだけではない。

 ここの映像は僕の魔法によってライヒの上空に投影されて生中継されている。


「新たなる時代の英傑。覇王が治めるアース王国の建国を、ノア・ルリックがここに宣言する」


 そのような中で。

 僕は堂々たる態度で改めて、独立を宣言する。

 この日、悪役貴族が覇王足ると世界に見せつけたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

悪役貴族は覇王たるか~悪役貴族に転生したので、傲慢かつ強欲に主人公の武も可愛いヒロインもすべてを手に入れようと思います~ リヒト @ninnjyasuraimu

現在ギフトを贈ることはできません

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ