勝鬨
今回の一戦。
それを決定づけたのは一番最初。
僕の一撃によって敵軍の中心であった国王陛下の旗を掲げる一団が全滅したことであろう。
あれによって僅かながらに存在していた戦闘計画は完全にご破算となり、多く固まっていた一人で戦況を変えられるような強者どもを大量に無くすことになった。
どこまでもこれが相手の軍勢の足を引っ張ったと言える。
この時点で実質的に相手の軍勢は機能不全となっていたのだ。
「諸君。もはや防衛線は終わった」
最初の攻勢において、細々として村々は惜しくも陥落してしまったが、それでも重要拠点は陥落することなく守り続けることができた。
そして、相手の一騎当千級の強者は剣聖やゲームの主人公たちの尽力によって全滅すことができた。
こうなればもう簡単である。
一つの拠点に貼り付けられ、消耗するばかりであった敵軍を一つ一つ。
こちらの一騎当千級の強者が潰していき、逃げた敵兵は確実に僕が打ち抜く。
これを繰り返すだけで相手の軍勢を滅ぼすことができた。
もう自分の領地に敵軍の姿はない。
「我が領地に敵軍の姿無し。諸君らの尽力がすべてにより、敵軍を壊滅することに成功したのだ。我らは勝った。我らは勝った。我らは勝った。我らは敵軍より自領を守りぬくことに成功したのだ」
それを受け、今なお上空に浮かんだままである僕は魔法によって己の声を拡散していく。
「勝鬨を上げよ」
そして、命令を一つ。
それを受けて地上の方から大きな、大きな勝鬨が上がってくる。
「……」
ここからでも民が此度の戦勝に歓喜し、大いに盛り上がっていることが理解できる。
ここまでやってもらって、僕がこの戦勝を無駄にするわけにはいかないだろう。
「さて、と……」
この戦場の様子を眺める、幾つもの魔法の目があることには気づいている。
もう、ここの趨勢が決まったことを相手も知っているであろう。
「終わらせにいきますか」
僕は小さく笑みを浮かべた後、自領から王都の方へと向かっていくのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます