坊ちゃまがメイドの尻を撫でた? まさか……無意識なのですか?
遠く古き伝説の魔法使いヴァニタス・アーミタイルと同じ名を持つ侯爵家嫡男ヴァニタス・リンドブルム。
彼は小説『・・・・・・』の劇中に登場する悪役の一人であり、後の世で極悪非道の限りを尽くし、いずれ自らも支配し弄んだ奴隷へと落ちぶれ死にゆく運命にある男。
ある日魔法学園の長期休暇中、底すら見渡せない暗い沼に落ちた彼は、高熱に魘された後、自らがタイトルも思い出せない小説の中に転生したことを知る。
しかし、入学当初から悪行を重ねた彼はすでに魔法学園でも有名な問題児。学園に戻っても恐れられ、避けられ、陰ながら罵倒されるのは確定事項だろう。
……だが、それがどうした?
周囲の声を気にして品行方正に正しい道を歩く?
朧気にしか覚えていない小説のシナリオを辿り慎重に立ち回る?
馬鹿な。悩んでも仕方のないことに頭を使うのは無駄なことだ。
これはヴァニタス・リンドブルムという悪役貴族に転生した名もなき男が思うがままに生き、己が覇道を貫く物語。
「――――僕の前に立つな、主人公面」
果たして彼は最大の宿敵たる主人公の毒牙にかかることなく生き残ることができるのか。
生存の鍵となるのは何故か引き寄せられるように接近してくる綺羅星のように輝くヒロインたち。