成長

 場所を我が家の領地から王都に移して。

 僕は王都の方に残してきていた主人公とその姉の様子を確認しに来ていた。


「どうでしょう?二人の様子は。剣聖殿」


「ん?あぁ……ノア君か」

 

 アセレラとシス。

 その二人の様子を知るため、僕が話しかけたのは一人のエルフである。

 彼女の名はアレクサントリーナ。圧倒的な剣の腕を持ち、剣聖という二つ名を世界に届かせているエルフの剣士である。

 アレクサントリーナには今、アセレラとシスの教育係を任せていたのだ。


「二人の様子……うん。すっごく良いよ。まず、アセレラ君の方。彼はどういうことかはわからないけど、魔力ではない別の力を有しているみたい。それを用いての彼の戦闘スタイルは豪快で強力。このまま成長したら、いつか私を追い越していくこともあるかも」


「ふむ」


 アセレラの成長は想定通りだ。

 主人公なのだから、軽々しく世界の中でも最強格のアレクサントリーナを超えるくらいしてもらいたい。 

 彼はチート系の主人公であり、本気で鍛えればラスボスどころから裏ボスまでフルボッコに出来るようなキャラなのだから。


「それで、シスの方に関してもだけど、この子も凄いね。シスはアセレラとは違って特別な力があるわけでもないけど、その実力はピカイチ。まず、保有している魔力量がすっごく多い。魔力量に関しては完全に才能の世界だから、ここのアベレージが高いだけで間違いなく天才の域。それに加えて、剣にも才能があるし、何よりも本人が真面目。あの子も強くなるね。絶対に」


「……へぇ?」


 だが、シスの高評価に関しては少々予想外だった……作中では何も出来ずに死んでしまっている彼女はその能力を見せることはなかったが。

 その才能はピカイチだったのか。

 これは何とも嬉しい誤算である。


「……ちょっとだけ、試してみようかな」


 今も、剣聖の指示によって。

 自分の屋敷の訓練場の方で僕にも気づかず熱心に素振りを行っている二人を眺めながら、僕は小さく独り言を漏らすのであった。

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