才能
自分の前におずおずとした態度でソファへと座るアセレラとシスの二人を前に、僕は足を組みながら口を開く。
「さて、まずは僕について話すところから始めて行こうか」
委縮しきっている二人に対して僕は口を開く。
「まず、僕の名前はノア・ルリック。ルリック辺境伯の嫡男だ」
「へ、辺境爵……っ」
辺境伯とは本来、国境の警備を行う重要な貴族に与えられる階級であり、その存在の格としては侯爵家と同等か少し上という程度。
そんな正に雲の上の存在とも言える家格を持っていると言う事実に……まぁ、我が家は色々とおかしなおところがあるわけだけど。
「それで僕がなんで守るべき辺境を離れて帝都にいるのかというと、だ。色々あって我が家は人材不足でな。我が家に仕え、敏腕を振るってくれている優秀な人材を探しているのだ」
「「……?」」
人材発掘のために帝都にいるのだ、という僕に対してアセレラとシスの二人は揃って不思議そうな表情を浮かべる。
まぁ、それも当然だろう。
人材発掘するためにスラムを歩いているなんて実に不思議な話だろうからな。
「そこまで不思議そうな表情を浮かべないでくれ。君たち二人も僕が優秀だと思って接触した人間なんだよ?」
「えっ……?自分たちが、ですか?」
「……ど、どういう?」
僕の言葉に対して、二人は本気の困惑の表情を浮かべる。マジで何を言っているんだろうか?こいつは、とでも言いたげな視線である。
「アセレラには言ったであろう?僕に忠誠を誓え、と」
「……ッ!?」
「い、いや……あれ、はまさかご貴族様だとはとても思っていなくてっ!」
僕の言葉に全力でアセレラが首を横に振る。
「も、申し訳ありませんが……わ、私たちでは流石に力不足であると思うのですが。所詮、我々はスラムの人間に過ぎません。そんな誇れるものはないですが」
「才能を買った」
「才能、ですかぁ?」
「自分の目だな。二人は伸びると判断した。だから、こうして声をかけて、わざわざ助けもした……まさか、自分が動く前に一人が死にかけているとは思わなかった。助けられてよかったよ」
「そう、ですか……ほ、本当にぃ?我々二人に貴族様に認められるような才能があるとはとてもじゃありませんが、思えないのですが」
いきなり貴族を名乗る少年が現れ、自分たちに才能がある!などと言って近づいてきても信じられないだろう」
「駄目か?我が家に仕えてくれるというのなら給金として毎月銀貨五十枚あげるが」
「「やらせてください」」
だけど、金は正義だった。
金貨をテーブルの上に置いた僕は速攻で二人からの了承を勝ち取るのだった。
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