契約金
自陣営への主人公引き込み。
それはまず真っ先に自分が思っていたことだ。
圧倒的な戦力というのは何時の時代であっても魅力的であるし、悪役貴族としての生まれのことも考えると、自分の陣営に引き込んでしまえば主人公に殺されるという未来の可能性を限りなく低くすることもできるしね。
「ふっ、よし。それじゃあ契約完了ということで」
月、銀貨50枚。
貴族でもない平民にとっては凄まじい大金であり、四人家族が一ヶ月何不自由なく贅沢に生活できるような金額である。
それに釣られた二人を前に僕は笑みを浮かべながら、頷く。
「それじゃあ、後のことについては僕ではなくうちの家臣団が受け持つことになる。色々と慣れないところもあると思うが、頑張ってくれたまえ」
「はい!ご期待に添えるよう誠心誠意、努力してまいります!」
「おう!!!」
銀貨の魔力に取り憑かれた二人が僕の言葉に勢いよくうなづく。
「それじゃあ、テーブルの上に置いた金貨は二人への臨時ボーナス、契約金ということで渡しておこう。好きに使ってくれ」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええええええええっ!?」
僕の言葉を受け、シスが驚愕の声を上げて立ちあがる。
「こ、こ、こんな大金をっ!?」
「あぁ、最初の契約金だ」
「こ、こんなにですかっ!?」
「それだけ期待しているということだ」
「私たち二人は所詮、スラムの餓鬼なんですがっ!?」
「ふっ。スラムの子供たちに金貨を上げられるほどに我らは金銭的に裕福ということだとも」
僕はどこまでも食い下がってくるシスに対して不敵な笑みを浮かべながら告げる。
「我ら貴族は想像以上に金銭を保有しているのだよ。商会運営や金貸しなど多くの稼ぎ口を持っているのが通例でね。金貨一枚くらいならそこまでの出費でもないのだ」
「さ、流石はお貴族様……」
「ということで遠慮なく貰っておくとよい。スラム生まれであるがゆえに、これからかなりの出費も必要になってくるだろうし、我が家のメンツを考えてもあまり金を持っていない子たちを囲っておくのも都合が悪いのでな。貰ってくれ」
「う、……おぉ。き、金貨」
僕の言葉を受け、シスはどこまでも躊躇しながら、それでも金貨を手に取る。
「アセレラ」
そんなシスの隣で呆けていたアセレラへと僕は声をかける。
「は、はいっ!?」
「お姉ちゃんを大事にしろよ?」
「お、おぉう!?も、もちろん!で、です!」
「それでよい。では、後のことは任せた」
今度こそ、僕は後のことを部下に任せてこの部屋から退出するのだった。
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