DV彼氏と依存彼女

 これで、主人公に関してはもういいだろう。

 相手はどれだけ才能があろうともスラムの少年なのだ。姉を救ったという功績に、一番最初から全力で抱き込んだという実績があれば


「ねぇ、本当にあの子が強いの?私にはてんで見えないけど」

 

 満足げにしている僕に対して、自分の隣にいるリレーシアが声をかけてくる。


「あくまで才能を買っているだけ。未来への投資だよ。今に関しては別のに目を向けている」


「……別の?」


「そう。僕はエルフを味方の陣営に引き込むつもりなんだよ」


「え、エルフをっ!?」


 僕の言葉を受け、リレーシアは驚愕の表情をあげる。


「そうそう。あの人たちは孤立している上に、案外引き込みやすそうだからね」


 エルフは人からの奴隷狩りにあいやすい部類の種族である。

 それが故に多くのドラマがありながら、それでもしっかりと強い種族がエルフなのである。

 そんなの引き込むしかないわな。


「お前がいるじゃん。同胞が信頼する者には優しいのがエルフだろう?」


「私は奴隷なんだけど?性行為を無理強いされている」


「は?もう夜しないぞ」


「ごめんなさい」


 反発したリレーシアはいつものように秒殺されて撃沈する。


「よろしい」


「あ、あの……わ、私以外のエルフを手に入れても、捨てないでね?え、エルフはなんとなく好感度がわかるの。だ、だから私がノアに向けている好感度が高いことは他のエルフもわかってくれるの。だから、そ、その私はぁ……ゼノのこと、す、好きだからね?エルフとの交渉に置いても私を手元に置いておくと便利だから!だから!別のエルフがいても私を捨てないでほしい!」


「安心して、僕がリレーシアを捨てるようなことはないから」


 自分の手で精神的に不安とさせ、快楽堕ちまでさせ、日々結構ぞんざいに扱っていながらも。

 肝心なところではしっかりと僕は優しい言葉を投げかけて上げる。


「えへぇぇ。そ、それなら良いのよ!」


 これが彼女を依存させるDV彼氏かぁ……。

 前世においてあまり俗世の恋愛とは縁がなかった僕が、まさか異世界で問題になっていた現代日本の彼氏に自分がなるとは思っていなかった。


「それじゃあ、これからも忙しくなると思うけど、よろしくね?リレーシア」


「しょ、しょうがないわね!ノアがどうしても!って言うなら仕方ないわ!私の力を貸してやるわよ!せいぜいいっぱい感謝しなさいよね!」


 僕は自分の言葉を受け、胸を張ってそっぽ向きながらも好意的な態度を見せるリレーシアへと満足げに頷くのだった。

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