充実

 主人公を含める姉弟を無事に引き込むことの出来た僕はそれからというもの。

 最初から目をつけていたエルフたちを始めとして、今の僕で助けることが出来て自陣営に引き込めそうなゲームの登場人物や安価で雇うことの出来た弱小傭兵団など。

 かなり多くの戦力を僕は貪欲に集めていた。


「どうでしょうか?土地神様。こちらの山。つい最近まで竜が住んでいたこともあって、魔物の数が少ない静寂としたこの鉱山を今なら無料で譲渡致します。また、それに付随して鉱山で働くものたちに祈らせることはもちろんのこと、お供えものまでしっかりとさせていただきましょう。我が領内で採れる多くの農作物を是非とも」


 その果てには。

 とうとう土地神扱いされている魔物にまで勧誘の手を伸ばしていた。


『むぅ……悩ましいなぁ』


 土地神。

 それは元はただの魔物でありながらも強力な力に長い生、そして人々からの信仰心をくらうことで特別性を保持している魔物である。

 他の魔物を突き放す圧倒的な力はもちろんのこと、強力な知性まで兼ね備えているのだ。


「如何でしょうか?条件面でいえば決して悪くない者であるとは思うのですが」


『……確かに、そこまで悪いわけではないな。日々、我へと捧げられる信仰心も年々減っておる。信徒の確約というのは中々に嬉しいものがある』


「今は絶賛、一神教が流行っている最中でございますから。土着信仰は徐々に力を失っておりますね……何とも痛ましいことであると私も心を痛めております」


『人は移ろいやすい、仕方ないとはいえ、悲しいものだな』


「そうですね。ですが、我が領地は未だに一神教は流行っていませんよ」


『おぉ、それも嬉しいポイントである……っとと。肝心なところを忘れおったわ。何故、我の力を欲す?』


「力」


 僕は土地神の言葉に即答する。


「我が家の誇り、領地の安然を。それを守るための力が欲しい。世界の全てを相手に出来るような、圧倒的な力を欲しているのですよ。自分は。そのために、今の僕は動いているのです」


『世界に覇を唱える厄災を我に求める、と?貴公はそう告げるか?』


「そこまでは求めていませんよ」


 僕は自分の魔力を一部、漏らしながら言葉を続ける。


「世界に覇を唱えるとしても、それは僕になるでしょうから。土地神様にはささやかなお手伝いをしてもらいたいだけにございます」


『……なんと、貴公は大きな人であったか』


 僕が絶対の自信を込めて告げる言葉に対して、土地神様は驚きと共に言葉を漏らすのだった。

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