覇王

焦り

 ライヒにおいて最も重要な行事と言える王帝会議。

 その場で高らかに宣戦布告すると共に、大量の貴族家の当主を血祭りにあげて自分の領地の方に帰ってきた僕は今。


「何をしているのぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!?」


 発狂しているリレーシアからのお叱りの言葉を受けていた。


「いくら何でもやり過ぎよっ!!!……いや、本当にやりすぎよっ!」


 その内容は当然、王帝会議で僕がしでかしたことである。

 

「いやぁー、だってさ。あいつら上から目線でうざかっただからだ仕方ないだろう?心配せずとも食料はあるし、工業を回すための資源もある。別に自国だけで自給自足し、産業を守ることのできる我らが領地の中で独立することの何が問題だと?」


「宣戦布告するだけならまだいいわっ!でも、でもよ!流石に貴族を殺すのはやり過ぎよっ!完全にライヒを敵に回したわ!」


 僕の言葉を受けてもリレーシアは大きな言葉を上げる。


「あそこまでコケにされて、動かない貴族はいないわ!この街に群を無して大量の軍隊が攻め込んでくるはずよ!?そ、そんな状態でどうするつもりなのよ?」


 そんな彼女の瞳に浮かんでいるのは焦りである。

 ただ、奴隷としてこの場に連れてこられただけのリレーシアが、僕の領地を守るためにここまで考え、焦っている。

 それは非常に良い状況だと言えるだろう。

 素晴らしい……実りつつある。


「そもそも戦争を起こすことが目的なんだから当然だろう?」


 そんなことを考えながら僕はリレーシアの言葉に軽く答える。


「は?」


 僕の言葉に対して、リレーシアは理解出来ないと言わんばかりに首をかしげて困惑の声を漏らす。

 何を言っているんだ、こいつは。

 そんなことを言われているような気がした。


「そこまで焦る必要も動揺する必要もあるまい」


 そんなリレーシアを前にしても、僕は自分の態度を崩さない。


「勝つための準備はしてきた。ゆえに、勝てる」


 僕は自信満々な態度でもって、リレーシアへとそう断言するのだった。

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