壮絶な戦いが繰り広げられているような村々の中で。

 同じように街の方でも壮絶な戦いが繰り広げられていた。


「糞便を投げ捨ててやれっ!当主様曰く、汚いもの、不潔なものはやはり人体を容易に壊すらしいっ!汚いもので壊してやれぇっ!」


「うちのかみさんのパンツだぁー、くらえっ!!!」


「これはお父さんの靴下ぁーっ!」


「……汚いものってそういうことじゃないと思う」


 小さな魔物用の簡素な掘と塀しかなかった村とは違い、街には立派な城壁が備わっている。

 防備がしっかりとされている街において、元々その街を守る憲兵たちに中央から送られてきた小隊規模の当主麾下の騎士たちがその街に住む人たちと協力して防備に当たっていた。


「クソったれがっ!?何なんだ、あいつらァっ!もう叩いちゃいましょうよっ!隊長!」


「……攻城兵器の数が足らないのだっ!王家の連中がその身に固めていた多くの実力者並びに物資もろとも全滅してくれたらしくなぁっ!」


「だとしても、ですっ!このままずっと撃たれっぱなしですかっ!?相手はほとんど魔法も使えないのですよっ!?それに、相手がずっと糞便を投げつけてくるせいでこちらの衛生状況は最悪ですっ!食料も一部、駄目にさせられてました!兵量自体もきついですっ!」


「……ぐぬっ。上は何を考えているのだぁ。何も足らん。ふぅー」


 部下から詰められる街を攻め落とそうと囲んでいるライヒが中隊を指示する隊長は深々とため息を吐く。


「糞便を浄化していた魔法使いを転換。城壁への魔法に切り替えろ。魔法で衝撃を与えている間に騎兵で突っ込んで門を破壊する」


 そして、そのまま隊長は良く通る声で命令を下していく。


「我らは圧倒的な個を持つ精鋭たる騎士である無様に足掻く平民たちに現実を見せてやれ。策も要らん。力で踏みにじるのだ」

 

 隊長の命令にここまで我慢させられてきた騎士たちが勢いづき、戦闘のための準備を始めて行く。

 その瞬間。


「……はっ?」


 何処からともなく魔法が飛来し、その中隊が四分の一を消し飛ばしていく。


「……上、まだ……いるのか?あの男は」


 魔法。

 それが飛んできたのは遥か上空である。


「当主様だぁぁぁぁぁぁあああああああああああ!」


 この魔法は遥か上空で一度、王家の軍勢を全滅させたノアによる魔法であった。


「当主様が来たっ!当主様が来られたっ!見ておられるぅ」


「我々にはあの御方がついているっ!」


「勝つぞォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」


 その一撃はこれから行くぞと行き込んでいた騎士たちの出鼻を挫き、街に住まう者たちの士気を上げていくのだった。

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