村々

 既にライヒと国境近くの村や町での女子供の非難は完了している。

 そして、これまで多くの人が営んできた仕事もそのほとんどが停止されてしまっている。

 

「敵が来たぞぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


 そんな中で、村や町の中に残っているのは完全武装している男たちである。

 武装した男たちが詰め寄せるとある一つの寂れた村。

 そんな村へと貴族によって率いられた


「すぅ」


 通常であれば、何の力もない村人たちに出来ることなど何もない。


「敵が来たぞぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


 だが、今回ばかりは別であった。


「うぉっ!?な、なんだっ!?村人がっ!?」


 この村に残った男たちは自分たちの村に迫ってきている敵兵の姿を見るなり目の色を変えてこの日の為に用意していた石や火炎瓶の投擲を始める。


「……ッ!?風のカーテンを張れっ!」


 村人たちが殺意でもってこちらへと攻撃してくる。

 それに対して、敵兵としては困惑するばかりである。


「殺せぇっ!」


「敵を皆殺しにするのだぁぁぁぁぁぁあああああああああああ!!!」

 

「飢饉の中から命を懸けて魔物を狩り、俺らの妻と子を救ってくれた当主様の為に命をかけろぉっ!」


 そんな中でも村人たちは全力で戦う。

 魔法に石と火炎瓶で対抗し、剣と鎧にただの農具と僅かな防具で抵抗し、元々は魔物用であった堀と塀で敵の進軍を遅らせる。


「訳もわからんが踏み鳴らしてやれっ!」


 村人たちは屈強な精神で抵抗しようとするが、それでも敵は鍛え上げられた本業である勝てるわけがない。


「負けるなぁっ!一人でも殺せっ!一人でも傷をっ!」


 それでも村人たちは引くことなく戦い続ける。


「やけぇっ!やけぇっ!肉をやけぇっ!!!敵に飯は渡すなよ!」」


 とうとう村唯一の食料にまで火をつけて相手に少しの物資も与えないように立ち回っていく徹底ぶりである。


「我らは何の為にここにいる!引く男たちもいる中でっ!貴族様たちも引いて良いとおっしゃった中でっ!残ったのはなぜだぁっ!」


 既に老体の域へと入っている村の長が吠える。


「「「当主様のためっ!!!」」」


「なぜだぁっ!」


「「「敵を殺すためっ!!!」」」


「なぜだぁっ!」


「「「我らが村で死ぬためっ!!!」」」


「死ぬぞぉっ!お前ぁっ!」


「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」


 狂気的な士気によって盛り上がる平民たちは血気盛んに己の命を懸けてその牙を剥けていく……そして、それらの光景は今後。

 ライヒの兵士たちが全ての村で見ることになる光景だった。

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