評価
及第点。
そう評した僕の前で、アセレラとシスが二人して転がっている。
「わ、私は重くないですっ!決して、言いがかりは辞めてくださいっ!」
「わ、悪かったって。ごめん。俺が言い過ぎだな。お姉ちゃんは重くないよ」
「何か言い方が雑で気に入りませんっ!」
「そんな無茶なっ!?」
「女の子にとってデリケートな部分に触れたのだから当然ですっ!動いているはずなのに……ちょ、ちょっと肉がついてきて、私は色々と焦っているんですから!」
そして、そのままゆっくりと立ち上がった二人は体重についての話題で盛り上がっていく。
「お二人さん。良いかな?」
「あっ、はいっ!?」
「おぉう!?」
そんな二人へと僕は声をかけ、強引に会話を止めてしまう。
体重についての議論を深めているような時間的余裕は一切なかった。
「とりあえずは二人の成長を見れたので良しとするね」
「「……うっ」」
僕の言葉を嫌味と捉えたのか、二人はそっと僕から視線を外し始める。
「ふふっ、そんな落ち込むことないよ。しっかりと及第点とは伝えているだろう?十分な成長ぶりだ。君たちの努力は賞賛に値する」
特にシス。
申し訳ないが、君に関してはこれっぽちも期待していなかったのだ。
それなのにもかかわらずこの成長率。実に素晴らしい……ふふふ、これだから人材発掘は辞められないのだ。
時として何もないところに原石が転がっているのだから。
もう病みつきだよ……前世も、人材を発掘しているときが一番楽しかった。最高のギャンブルである。
「ということで、一旦。二人は剣聖も含めてこの王都から離れて自分の領地の方に戻るよ。もうこの屋敷とはお別れだね」
「……?」
「そう、か」
僕の言葉に対して、アセレラとシスはピンと来ていなさそうな表情を浮かべながらも頷く。
「今日中にここを出立するつもりだから、しっかりと引っ越しの準備をしておくように。君たち二人の所有物の中でもっていきたいものをまとめておいてくれ。もう、こちらには戻ってこないつもりで頼むよ」
だが、二人にも非常にかかわりのある話である。
何て言ったってこれから引っ越しを行うわけで、二人にもしっかりと引っ越しの準備をしてもらう必要がある。
「えっ!?今日ですか!?」
「うん、今日。ほら、早く荷物を片付けてきな」
「し、失礼します!」
「失礼します!負けてすみません!次は勝ちます!……ということで、俺は!」
自分の言葉を受けて、各々の部屋へと向かっていくアセレラとシスの二人を僕は静かに眺めるのだった。
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