来客

 アセレラとシス、それに剣聖を連れて僕が領地に戻ってきた頃。

 自分の領地にとあるお客様が来ているという報告が僕の元にもやってきていた。


「長らく不当に鉱山を占拠していた竜が去り、ようやく鉱山運営が開始されたのでしょう?でしたら、その鉱山や利益は国の為に使っていただかなければ……」


「そうは言われましてもですね?未だに鉱山の動きは悪く……」


「はて?嘘はいけませんなぁ。ルリック辺境伯閣下。既に鉱山経営は順調であり、自領にはその多くを流しているでしょう?嘘はいけませんぞぉ」


 報告にあった客人がいるのは応接室であり、その人物を今、僕の父上が応対している最中であった。

 客人。

 それは領地をもたず中央に威を構え、文官としてその力を振るうロロ子爵家の当主である。

 たかが子爵家の当主。それが今、辺境伯の当主である父上に対して高圧的な態度を見せながらの交渉を行っていた。


「失礼する」


 非常にムカつく交渉内容。

 格下が我らを舐めくさり、行われている交渉を打ち破るかのように僕は勢いよく扉を開ける。

 たった、今。

 僕の行動方針が正式に決定した。


「……ッ!?」


「の、ノアっ!?」


 僕の登場に二人が驚く中、悠然とした足取りでもって歩き、ロロ子爵家の当主の前に立つ。


「交渉事は良きことであるが、悪いな。その話は自分に頼む。たった今から僕が当主なのだな」

 

 そして、そのまま僕が告げるのは当主の移譲に関してだった。


「良いでしょう?お父様」


「う、うむ……子爵閣下。私は今、この時よりルリック辺境伯当主としての地位から降り、それを我が息子であるノアに譲ることととする。今、この時よりルリック辺境伯の当主はノアである」


「馬鹿なっ!?」


 目の前で行われているあまりにも早すぎる権力移譲。

 それを見ているロロ子爵家の当主は驚愕の声と共に立ちあがる。


「国王陛下の許しもなく現当主が禅譲するなどっ!異例のことであり、愚の骨頂!ありえないことですぞ!国王陛下を含め、我ら中央貴族一同は断じて認めないでしょう!今すぐの謝罪と撤回を要求させてもらおう!今ならば、それだけで私も引きあがりましょう!」

 

 そして、そのまま何をトチ狂ったのか、ロロ子爵家の当主は圧倒的な上から目線で僕と父上を断罪するかのように大きな声を上げる。


「子爵如きが中央貴族の代表面しないでいただこう。貴方は今すぐここを出て王都にただ知らせだけを持っていくと良い」


「んなっ!?」

 

 そんなロロ子爵家当主に対して、僕は冷たく言い放ち、さっさと帰れと命じるのだった。

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