前哨戦
突如として行ったルリック辺境伯家当主による戦線布告と王帝会議での蛮行。
それを受けてライヒは直ぐさま動き、戦乱の発端に向けて多くの王侯貴族がルリック辺境伯家に向けて多くの兵士を進軍させていた。
そんな中で、最も早くにルリック辺境伯領へとたどり着いたのは金の匂いを嗅ぎつけてきた傭兵たちであった。
「せっかくなんだし、一番おいしいところは貰っていくぜ。良いよなぁ?」
「この場にある財産の全てを貰っていても構いませんよ。私が望むのはあくまで鉱山の破壊ですので」
「ひひひ、どれだけの財産をため込んでやがるかなぁ?是非とも今後の俺たちを潤してくれよ?」
「女も楽しみだなぁ。若くて綺麗な女がいると良いのだが……最近は汚い売女しか抱けていないからな。今からでも女の味が楽しみだぜ」
「……はぁー」
金の匂いを嗅ぎつけて動き出した傭兵たち。
そして、更にもう一人。
彼らと強力するようにライヒが誇る剣である四大侯爵家の一つであるクリューソス侯爵家に仕える一つの駒。
たった一人で戦場における戦術を変えられるほどの力を持った個人、時には英雄とも呼ばれることのある騎士がルリック辺境伯家が誇る鉱山へとやってきていた。
「さぁっ!略奪を開始しようじゃないかっ!」
傭兵たち延べ1500人。
そして、それに加勢する一人の圧倒的な強者。
そんな布陣でルリック辺境伯家の鉱山を完全に破壊しようとした彼ら。
『我の支配せし土地に何の用だ?人間っ?』
そんな彼らの前に一つの影が立ちふさがる。
「……ッ!?」
その影。
それはノアの甘言に乗ってこの地へとやってきた土地神。
鉱山に住まう者たちからの強い信仰心を受けて急速に力を回復させている土地神であった。
「な、なんだっ!?この怪物はっ!?」
「ひぃっ!?魔物っ!」
「しゃ、しゃべったぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああ!?」
「ま、ま、まさか……土地神様、だっぺかぁ?」
「な、何だこいつはっ!ま、魔物かっ!?そ、それにしてはかなりデカいような気がするのが……一体、何のだ?」
突然現れた土地神に対して、傭兵たちの間で大きな驚きと恐怖が広がっていく。
「馬鹿、な……本物の、土地神が?」
そして、その驚きと恐怖は傭兵と共に来ていた騎士でさえも同じであった。
『答えを聞くまでもないか。我の土地を荒そうと欲す蛮族よ。神の怒りを知ると良い』
自分の前にいる人間たちへの強い殺意をその胸に抱いた土地神はその力を振るい始めるのだった。
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