演説
戦争における前哨戦。
我らが鉱山を襲ったフライングしたものたちは土地神の手によって問題なく処断された。
そして、それから約三日ほど。
既に大量の敵兵が集まっており、戦端が開かれるのに一週間もかからないだろうという時期に。
「諸君」
僕は自国の王都において、新時代の覇王として民衆たちの前で演説の声を響かせていた。
「卑劣にして傲慢。長い歴史の中で我らを軽視し続けた愚か者どもが今更になって我らの脅威を知ってこちらへと牙を剥けてきている」
僕が語るのは事実を一部、脚色したものである。
「実に愚かなことであり、我らが強大な力が敵を打ち破るであろう……だが、この戦いには大きな困難が伴う。敵は雪崩のように迫ってきており、その数に抵抗出来るかどうか……一部、被害が出る可能性がある」
危機感を煽る。
「ようやく、ここまで再生してきた我が祖国。僕の手によって浮ついた我が国。餓死者が減り、労働者が増えたことで輝くが戻りつつある街に。諸君たちが丹念に作り上げる今度こそ飢饉に負けぬとして作られた農地に。富を生む鉱山に。少しの被害も与えたくはない」
だが、自信を失わないほどに。熱狂を保てるくらいに。
「故に、我は望む。我が国を愛する者を。我ら一族を愛する者たちを。我こそが、我こそが偉大なる愛国者であると言う者がいるだろうか?国を守るために世界と戦うことを望む勇敢なる英雄はいるであろうか?」
「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」
現代の地球、先進諸国において戦争とは上に立つ者の都合で下々の人間が
国のために、誇りのために、利益のために戦うのは貴族の役目であり、平民が羨む特権であった。
ノブレス・オブリージュという単語と、第一次世界大戦で大量の貴族が機関銃の餌食になった事実がその何よりもの事実である。
己が貴族を倒して貴族としての特権を手にし、それへと飽きたその瞬間に興味を失うのは常々人間らしい……裏で特権階級が闘争を繰り広げて利益を勝ち取っている裏で民衆は腑抜けるばかり。
愚鈍なる牙の抜けた民衆が競い、力を高める特権階級に噛みつかれて民衆主義を崩壊させるのも時間の問題であろう。
まぁ、地球での話はどうでも良いのだ。
重要なのは戦うと言うことは特権階級であり、それを貰えると知った民衆たちは歓喜するという事実であろう
「共に、戦おう」
「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」
貴族と共に戦う。
それだけで、民衆は声高らかに叫ぶのだ。
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