激突

「起きる前に終わらせるから、来てね」


「……はっ!?」

 

 僕は竜の前に降り立つと共にそのまま地面を蹴って加速。

 未だに眠りこけている竜の頭に向かって、僕は全力で飛び蹴りをぶちかます。

 僕の足が竜の頭の鱗を完全に破壊し、その体ごと大きくふきとばした中。


「ガァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?」


 強引に眠りから叩き起こされた竜が困惑の鳴き声を上げながら無様な姿で広場を転がっていく。

 それから、僕が手を緩めるはずがない。

 僕は更に地面を蹴って竜の元へと近づいていく。


「凍れ」


 そんな中で、僕は再び魔力でもって周りの気温へと介入。

 空気中の水分を凍らせて一振りの氷の剣を作り上げる。

 この世界の物質には魔力の込めやすい、込めにくいというのがあり、水並びに氷は込めやすい側に分類される。


「な、何それっ!?」


「死ねっ」


 こちらが魔力を込めれば込める分だけ吸い取って、そのまま硬く鋭くなってくれる氷の剣を振りかぶった僕は竜へと斬り抱える。


「がァっ!?」


 もはや半ば反射的に、慌てて片手をあげて僕の剣を受けようとした竜はそのまま片腕を切り裂かれる。


「えぇい」


 そんな僕と竜のぶつかり合い。

 あまりにも急に始まったそれに多少、面食らっていたリレーシアも慌てて戦闘に参加。

 弓を手に、魔力を込めた矢を幾つも放っていく。

 リレーシアの弓から放たれた矢は確実に竜の鱗を貫いて出血を強要させる。


「このまま終わらせる」


 片腕を落とされ、体に次々と弓矢が刺さっていく竜をこのまま落としてしまうべく剣を力づよく握って足を一歩踏み出す。


「……すぅ」


「……ッ!?」

 

 そのタイミングで、辺りの空気中にある魔力を強引にすべてを吸い寄せるかのごとき勢いで竜は息を吸う。


「……ありかよ、んなもん」


 分子と分子の間に衝撃を吸収する魔力を置くことによって、強引に分子の運動を抑制させて温度を下げることで顕現させていた僕の氷の剣。

 それを竜が空気中に散布させていた僕の魔力も吸ってしまったことでご破算。

 氷の剣がただの水となって地面へと流れてしまう。


「ガァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」


 そして、そのまま竜は力強い咆哮を一つ。

 竜の力強い咆哮は空気全体を震わせるほどの威力があった。

 それを受けて、僕の身体も思わず止まってしまった。

 その間にもう竜は翼をはためかせて空へと浮かび上がっている。


「ちっ」


 爆速で終わらせ、山全体への被害をゼロで済ませたかった僕は初手で竜を殺し切れなかったことに舌打ちを打ちながら、剣を握って構えるのだった。


 

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