悪役貴族は覇王たるか~悪役貴族に転生したので、傲慢かつ強欲に主人公の武も可愛いヒロインもすべてを手に入れようと思います~

リヒト

悪役貴族

プロローグ

 世界に覇を唱えんとする大国「ライヒ」。

 頂点に君臨なさる国王と、その下に傅く数多の貴族たち。

 それらが年に一度。一堂に会する王帝会議の場において、まだ少年と呼べるような少年が中央に立っていた。


「ルリック辺境伯が嫡男……いや、今はルリック辺境伯閣下、と呼ぶべきだろうか?」


 そんな少年へと初老の男性がゆっくりと声をかける。


「本国への通達もなしに行われた生前継承。どういうことか、ここで説明してくださりますかな?」


 初老の男性が少年へと向ける視線にも、言葉にもしっかりとした侮蔑の色が込められている。


「此度の件について、聞きたい諸君らの気持ちもわかる」

 

 そんな言葉に対して、これまで跪いていた少年はゆっくりと立ち上がりながら口を開く。


「だが、我から告げたいのはこれまで、諸君らが我が家にしてきた不当なる態度への疑念。説明をという旨の要求である」


「……っ!貴様!何を考えている!国王陛下の御前で頭を上げて口を開くなど!なんたる無礼かっ!」

 

 堂々たる態度で言葉を話す少年に対して初老の男性が声を荒げる。

 それだけではない、少年を囲んでいる多くの大人たちも彼に対して不満と憤りの視線と呟きを漏らしている。

 

「はて?この我がそこの朦朧したジジイの言葉の言うことを聞かねばならぬ道理が見えぬな」


 そんな中でも、少年はどこ吹く風。

 傲慢たる態度ではっきりと殿上の人である国王への侮蔑の言葉を口にする。


「な、何様のつもりであるがっ!」


 そんな少年の言葉に初老の男性が激昂する。

 その瞬間であった。



「うるせぇ」


 

 少年が動いたのは。

 いつの間にか少年の手に握られていたあまりにも巨大すぎる剣がこの場にいるあまりにも多くの人の命を消し飛ばしながら振るわれ、この場すらも。

 国王の元、少年を含めてすべての貴族が集められていた王城の最上階たる玉座の間さえもが少年の手によって崩壊させられたのは。


「すぅ、聞けっ!!!我、ノア・ルリックはライヒからの独立を宣言する!今日、この日より我こそが覇王である!」


 血の傘下。

 王城が崩れ、混乱が広がる中で少年は叫ぶ。


「我は何もせぬ!我らを軽視していた帝国にも、だ!我らはただそこに立ち、そこに暮らす!己からの攻勢などない!だが、諸君らが我らに対して宣戦を布告するというなれば迎え討とう!我らが一族の力をとくと知ることになるだろうよ!」


 崩れ去る王城の中で少年は軽く踊りながら空へと飛び出し、言葉を続ける。

 その言葉を世界へと刻みこみながら。


「それではごきげんよう。たった今より同胞ではなくなった諸君。此度の一撃はこれまでの挨拶である。過去にはあまり縛られぬように、私も、諸君も」


 そして、一方的に言葉を終えた少年はそのままその姿を忽然と消すのであった。

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