大魔の森林

 幸運なことに我が家における問題のほとんどが武力一つで解決出来るような内容であった。

 ということで諸問題のまず一つ目。

 大魔の森林における魔物の著しい増加に対処するため、僕はエルフを連れ立って件の場所へとやってきていた。


「いいね。実に良い」


 ゲームのヒロインとして活躍するエルフの実力はやはり素晴らしかった。

 

「一週間でここまでの戦果を挙げられるか」


 僕がエルフとこの場に来てから早いことで一週間。


「……あの、私はどれだけ戦い続ければ良いの?」


 血みどろになりながら森林から出てきたエルフを出迎える僕に対して、彼女は疑問の声を上げる。


「ずっとに決まっているだろう」


 エルフから魔物を取り上げた僕は彼女の疑問に軽く答えながら魔物の解体を始める。

 我が領内における問題の一つ。

 食糧問題を解決させるため、エルフが倒してきた魔物を食料に回るのだ。

 そのために僕がしなければならないのは魔物の解体と冷凍。

 領内の辺境にもしっかりと届けられるようにしていく。


「……ず、ずっと。ねぇ、魔物を狩りすぎるのも問題があるかもしれないわよ?この魔物を今後の食糧問題の解決に役立てるのでしょう?」


「何を言っている。どれだけお前が頑張ろうとも大して変わらないぞ?そもそもとしてこれの目的は魔物を減らすことであって飢饉の恒久的な解決ではない。この森の強力な魔物を狩ることで食糧問題解決は流石に脳筋が過ぎる」


 魔物は基本的にその場に溜まる空気中の魔力量に応じて生まれる凶暴な生物だ。

 ゆえに、魔物が多く発生する土地は永遠にそのままである……なので、魔物を使って食糧問題を解決させるのも不可能ではない。

 今後、技術革新が起こって人の持つ戦闘能力が上がれば可能だろう。


「下級の魔物は食べ物ではないからな」


 しかし、今の世界で恒久的に魔物を狩り続けられるだけの戦力は用意できない。

 食物とするのであればそれ相応に強力な魔物である必要もあるしな。魔物は何故かその強さによって味も変わるのだ。

 というか、そもそもとして衝撃を吸収する微細な魔力を展開することで粒子の振動を遅くさせてものを冷凍させるなどという芸当は僕くらいしか出来ないだろう。

 どちらにせよ、まずは冷凍技術からだ。


「……そ、それじゃあ……えっとぉ」


「どうした?眠いのか?それとも腹でも減ったか?」


「いやっ、ちがっ!?」


「安心しろ、魔法で解決してやる。ほれ」


 僕はエルフへと魔力で介入。

 眠気を覚まして栄養を流し込んで潤いを与えてやる。

 ついでに腸内に溜まっている排便も処理。

 彼女が何もしなくとも動き続けられるようにお手伝いしてあげる。


「……うぅ。私の体を魔力這いずり回っていくぅ……人間としての尊厳が破壊されていくぅ」


 そんな僕の幾重もの優しい手筈を受けるエルフは、崩れ落ちながらその瞳に涙を浮かべ始める。

 彼女は既に一週間飲まず食わず、寝ることもなくフルで働き続けている。

 もう色々と限界なのだろう。


「……私の、体に興味はない?」


 あれだけ嫌がっていた性に関することをカードに、エルフは色仕掛けを始めだす。

 本当に追い詰められているのかもしれない。


「ない。働け」


「うわぁぁぁぁぁぁぁああああああああああん!」

 

 まぁ、だからと言って僕が手を緩めて上げるつもりはないが。

 エルフの下手な色仕掛けを蹴り飛ばした僕はそのまま彼女を働かせていくのだった。

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