19なる物語 告白

「君が好きだ! 俺とずっと一緒に生きてほしいっ! 俺の傍にずっと未来永劫いてほしいっ!!」

 ベルティアは、ゲオンからの告白に、心の底から熱くなっていくのを感じていた。


 ゲオンの灰色の瞳は、真面目な輝きを宿し、ベルティアの姿を映し出している。告白は、とても嬉しかった。


 けれども……。


「それは、できないわ」

「どうして?」

 ゲオンの目に悲しい輝きが宿る。


「一緒になると、ずっと約束している人がいるの。……でもその人、私のことは、絶対に愛おしい人として見てくれないんだけれどもね……。」

 ベルティアは下を向き、自嘲した。寂しい光を宿した笑みだった。


 そう、私にはミリアがいるから……。ふり向いてなんてくれないけれども、彼女がいる……。


「絶対に振り向いてくれない人なのに、何でそんなに、そいつにこだわっているんだ? お前のことを、そんな風にひどい扱いするんだったら、そいつなんて捨てて、俺を選べよっ!」

 ゲオンの顔は、真剣そのものだ。


「それは、無理……。前から、その人と約束しているから……」

「約束を守らないそいつなんて、忘れちまえ! お前を悲しませるそいつのことは、忘れろっ! 俺はずっと、一生お前を愛し続けるからよ!」

「一生……か」

 ベルティアは、なぜかため息をつき、ゲオンの顔を見る。


「ゲオン……。あなたは私を愛してくれる。とっても短い時間だけれどもね」

 ベルティアが、妙なことを口にした。


「いいや。長い長い時間だ! だって一生かけて、お前を愛するからっ!!」

 ゲオンが向けた心から真面目な表情に、ベルティアの頬が熱くなる。


 今までずっと、愛されることなく、過ごしてきた。ずっとずっとベルティアは、孤独の中を生きてきた。


 ミリアのことを想ったその瞬間、悲しみの涙が溢れ出る。

 ミリアを想えば想うほど、辛く、悲しく、心が痛い……。


「お前を泣かせるそいつのことなんて、もう100%忘れちまえ! その代わり、俺はお前のことを、300%愛して、絶対に幸せにするからっ! ……だからもう、泣くな」

 ゲオンが、ベルティアの涙を拭った。


 ……心の底から愛おしい人……。自分のことを、その人はずっと忘れてしまっている。

 でも……もしかしたら、彼女が私のことを、思い出してくれる瞬間が訪れるかもしれないっ! そうするとやっぱ、1人で過ごすことがいいのだろうか……?


 今まで、この報われぬ想いを抱え、胸の痛み、苦しみをずっと抱え続けてきた。


 ずっとずっと、報われない深い想い……。その想いはいつも、ベルティアの繊細で小さな胸を傷つけ続けてきた。


 彼女には「私」を思い出してほしいっ! 彼女の傍に越してきて家を建てたのだって、彼女に私を思い出してほしいから。


 けれども、彼女にはもう、旦那さんがいて……。

 ベルティアの胸がズキリと痛み、再び涙が溢れだす。

 

 最初は、彼女にもう旦那さんがいると知った時、そっとしておくつもりだった。


 だけど、彼女のことを想えば想うほど、愛おしく甘く、切なくて、どうしても彼女の傍に行って、近くで彼女を見ていたかった……。


 でも、ずっとずっと私は、報われることなく、悲しい時を過ごしている。


 ……どれだけ、悲しくて胸の痛い時を過ごしてきたのだろうか……? 


「ゲオン、私もあなたを愛しているっ!!」

 ベルティアは、ゲオンに告げた。


 もう、報われぬ悲しい時の中を彷徨い歩くことに、疲れた。

 とてつもなく疲れた……。


 そう心から想った瞬間、ベルティアは、ゲオンと一緒になることを、心から決めたのであった。


 


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