5なる物語 ミリアの策略!
「なんなのよ、このむさっ苦しいヤローは!!?」
空間全体に、ベルティアの甲高い声が、響き渡った。
「誰がむさっ苦しいヤローだ! お前こそ、まだ母ちゃんの乳吸ってそうな鼻息の荒いガキだろーがっ!!」
続いて、低い男性の声が響く。
「どうして、ここにムサイヤローがいるのよっ! 私はミリアと2人っきりで過ごしたいと思ってたのにっ!!」
今、目の前でベルティアと、筋肉質な18歳ほどの男が言い争っていた。
時は少し前に戻る。
「ああっ! ミリアから私を誘ってくれるなんて、ミリアったら、トーマスのいない今の時間帯に私を誘って、いっしょにお風呂でも入ろうって魂胆かしら? それにしても嬉しいっ♡!!」
ベルティアは、ミリアから声かけがあり、大変幸せであった。
ミリアの家の扉を開けるその時までは……。
扉を開けたら、その先にミリアと並んで、むさっ苦しい男がいたのだ。
「み……ミリアっ……!! ……ひょっとして、トーマスがいないのを見計らって、不倫!!?」
ムサイ男を見るなり、ベルティアの顔が青ざめた。ふっ……不倫は、私にとってもとてつもなくマズいっ!! ベルティアは、内心慌てていた。
「なぁ~に、おかしなこと言ってるんだい? こんなオバサンと若いゲオンが不倫だなんて、あるわけないだろ?」
「そっか~……。あ~、よかった!」
そこで胸を撫でおろすベルティアに、言葉の槍が突き刺さる。
「あんたに、ゲオンを紹介しようと思ってね。
占いで見たら、ゲオンはあんたと相性が抜群だから、それで、ね」
ミリアが、嬉しそうにほほ笑んだのだ。
わっ……私にミリア以外の人を愛せよと!!?
「冗談じゃあないわっ! こんなにむさっ苦しい男なんて、私、ごめんだわっ!」
ベルティアは、大きな声ではっきりと、吠えるように言った。ミリア以外の人を見るなんて、ごめんだった。
「おっ……俺だって、冗談じゃあないっ! ミリアが可愛い娘を紹介してくれるっていうから来てみたら、まだおっぱいも膨らみきっていない、こんなちっさいガキだなんて、俺こそ、冗談じゃないぜっ!!」
ゲオンと呼ばれた18歳ほどの男も、声を荒げる。
「あのね! 言っておくけど、こう見えても私は大人なの! ミリアもなによ! このむさっ苦しい男はっ!!?」
ベルティアがキーキー叫ぶ。せっかくミリアと2人っきりになれると思ったのに……!
このゲオンなる男の存在自体がムカついてたまらない!
「……こりゃあ困ったものだね。
ベルティア。あんたは、時に寂しそうだ。だから私の占いの常連客でもある冒険者のゲオンを紹介しようと思ったんだよ。これも、ひとえにあんたのためなんだよ」
ベルティアは、ミリアの言葉にため息をつく。
「ミリア……。私はね。こんな鼻息の荒いムサイ男なんて、どう転じても好きにはならないわよ。」
「ムサイって何だよ! 俺はこれでも結構、女の子にモテるんだぜ!」
「ええっ!!? 自分でモテるなんて、普通言う!!? どれだけあんた、うぬぼれているのよっ!!」
「やれやれ……。胸ちっさくて、背もちっさいくせに、よく吠えるガキだなっ!!」
ゲオンなる男の心ない言葉に、ベルティアは怒りで顔を真っ赤にする。
「なによっ! この天狗男がっ!! うぬぼれもいい加減にしなさいよっ!!」
「うぬぼれなんかじゃあねぇっ! 本当にモテるんだっ!!」
ミリアの見ている前で、瞬く間に2人は、口喧嘩をはじめてしまった。
「とにかく、こんなうぬぼれ男、ごめんだわっ!」
「俺だって、こんなおっぱいも背もちっさいガキなんて、ごめんだねっ! 俺はもっと、年齢がいっていて、大人のお姉さんじゃないと嫌だねっ!」
「ちっさい言うな! このうぬぼれ天狗男っ! あんたなんて、大っ嫌いよっ!!」
「俺こそ、お前なんかのような生意気なガキなんて、大っ嫌いだっ!!」
そこで2人は最後に思いっきり罵り合うと、ミリアの元から去っていったのであった。
「……やれやれ……。若いと血気盛んだねぇ~……。あたしは、良い組み合わせだと思うんだけれどもね~……。」
そこには、困ったような表情をする世話好きのミリアが、1人取り残されたのであった。
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