第2章 ベルティアとダンジョン!

6なる物語 ベルティア、ダンジョンへ行く!

 ベルティアは、考えた。

 ヴォヴゥレの村へ越してきたのはいい。


 ……でも自分は未だ、食い扶持のための仕事を見つけていない!!


 彼女は、よくよく考えた。


 将来はトーマスとは離れてもらって、ミリアと一緒に暮らしたいっ!! そうして、彼女とイチャラブ♡し続け、今度こそ、自分の目的を達成したいっ!!

 

 しかし、形ある現世で目的を達成するためには、やはり、食ってゆかねばならない。つまり、お金が必要なのだ。


 そこで彼女は、ヴォヴゥレの村で、お金になることを調べまくった。そして、金貨千枚の価値のある呪いの剣の情報を見つけてきたのだった。


 ヴォヴゥレの村から少し西へ行った森の中に、ダンジョンがある、というのだ。


 その奥に、何と金貨千枚の価値のある呪いの剣が存在するという。


 金貨千枚あれば、何年も食うに困ることはない! その剣を見つければ、生活の問題が解決する!


 だが、ベルティアの外見がネックとなった。

「お嬢さん、その剣を探し出すつもりなのかい?」

 その情報をくれたヴォヴゥレの村の老人が、心配そうな顔で、小さな体のベルティアを見た。


「そうよ」

 ベルティアは、笑顔で答える。


「それは、やめた方が良いですじゃ。

 なんでも、その剣は、お嬢さんのような小さな女の子が取れるような場所にはないですじゃ。

 ……それどころか、一流の強い冒険者のゲオンでさえも、取れる場所ではない、ということですじゃ」


「まっ!」

 いきなり年老いた翁から、ゲオンの名前が出たため、ベルティアは、怒りが湧いてくるのを感じた。あの男は、感じの悪い男だった。


 けれども、ゲオンなる男は、この村では、知られた冒険者で、かなりの強者らしい。


 だが……。

「あんなうぬぼれ天狗ヤローなんかに、負けるものですかっ!」

 ベルティアが怒鳴るかのような勢いで言ったため、老人はびっくりしたかのように、目を見開いた。


「お嬢さん! くれぐれも、ダンジョンに近づきなさるな。

 お嬢さんみたいな小さな子には、ダンジョンは、すごく危険じゃぞ。ダンジョンの中には、おっかない魔物が、うじゃうじゃいるからのう!」

 歩き始めたベルティアに、翁が言葉を発した。


 んもう、みんな私のこと、ちっさいちっさいって!! 私は、これでも大人なんだからぁっ! ベルティアは、怒りを覚えたが、心情を口にすることなく、黙ってその場を去っていったのだった。



 ベルティアは、ヴォヴゥレの西にある森の中へと入っていった。


 豹柄の模様のように差し込む木漏れ日の中を歩いていると、ぽっかりと穴をあける洞窟が見つかった。


地図によると、ここがダンジョンの入り口と書かれてある。

洞窟の奥は暗くて見えなく、まるで大蛇の口の中を覗いているかのようだった。


ベルティアは、大蛇の口のような洞窟の奥へと、何も装備することのない普通の恰好で、入っていった。



 どんどん奥へ進むと、金苔が光り輝き、ごつごつした洞窟の岩肌を照らし出している。

 金苔の光がことのほか明るいため、彼女は、明かりをつけることなく進んでいく。


 そうして、小1時間ほど進んだ時だった。


「たぁ~すけて、くれぇぇぇぇぇ~~~~~~~~~~~~っ!!!」

 ダンジョンの奥から、助けを求める声が、岩肌に響いてきたのである。


 ベルティアは、その人を助けんと、声のした方へと走っていった。



 なぜかそこに、和式のボットン便所が存在していた。


 ゲオンが、下半身を和式のボットン便所に落とし、はい上がれなくなっていた。

 和式のボットン便所に下半身を飲み込まれたこの男は、どう見ても、おマヌケそのものの姿だった。しかも、このお便所、とてつもなく臭う。


「うえぇ、くっさ~~~~~~いっ!!」

 ベルティアは鼻をつまみつつ、ゲオンを無視して、通り過ぎんとする。この男には、全く興味が湧かなかった。


「待て! 待てってば!! 俺を助けろよっ!!」

 ゲオンが懇願するような目で、ベルティアを見つめた。


「嫌よ! お便所ぐらい、1人で這い上がれるでしょ? それにあんた、相当強い冒険者だって村のおじいさんから聞いたわよ。だから、私は先を急ぐわね!」


 ベルティアがそそくさとその場を立ち去ろうとすると、

「下の方が何かにつっかえて、這い上がれねぇんだっ!! 俺を引っ張り出してくれぇ~~~~~~~っ!!!」

 去り行かんとするベルティアへ向け、ゲオンが大きく声を上げた。


 這い上がれそうにない、というのは、あながち嘘ではないらしい。

 その証拠に、強いと噂されていたゲオンが、自力で便所から這い出すことができていない。


 ベルティアは、臭さに顔をゆがめつつも、よくよく便器を確認した。


 便器の中に、牙があり、真っ赤な舌があった。その長くて真っ赤な、ねっとりとした舌が、ゲオンの下半身にからみついている。


 その、ぬめぬめと光る長い舌が、便器の奥へとゲオンを引き込もうとしている。ゲオンは、便器に食われそうになっていた。


「……スター・ウンチッチ……っ!!!」

 いきなりベルティアが、シリアスな表情をしながら、便器を見つめた。


 真剣な表情で「ウンチッチ」との言葉を使うベルティアは、滑稽そのものだった。が、ゲオンはそれどころではないようで、体をばたばたと、動かしている。


 必死で脱出しようとしているのだが、長くて真っ赤な生々しい舌が絡みつき、這い上がることができないようだ。


「うんこしようとしたら、実はそれは便所魔物だったんだぁ~~~っ!! 俺の腕を引っ張ってくれぇ~~~~~~~~っ!!」

 ゲオンが真剣な目でベルティアを見つめる。


 その最中にも、スター・ウンチッチは、ゲオンの体を丸のみしようと舌を絡め、中へ引っ張り込もうとしている。この男には興味がないので、食べられようが死のうが、正直どうでもいい。


 だが、ベルティアの中の良心が疼いた。


「しょうがない男ねっ!」

 ベルティアは、キツイうんこ臭の中、顔をゆがめつつ、ゲオンの体を引っ張った。


 その瞬間ゲオンを取り巻いているツラツラとよく濡れた真っ赤な舌が伸び、ベルティアの小さな体に迫ってきたのだ。


「あぶない!!」

 ゲオンは想わず顔を覆った!


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