7なる物語 魔法少女!?

 ベルティアの体が、いきなり金色の光に包まれた!


「スター・エンジェル・チェーーーンジ!」


 ベルティアが「呪文?」を唱えると、彼女の体を包む光がピンク色に変化し、

“カァァァァーーーーーーーーッ! ペッ!!”

 妙な「声」が、ピンク色の光の中から聞こえてきた。


 次の瞬間、ピンクの光の中から痰ぽろのようなものが飛び出し、スター・ウンチッチの長い舌に降りかかった。


 ジュウジュウと肉の焼ける音が辺りに響く。痰ぽろが、ウンチッチの舌を焼いたのだ。


 痰ぽろによってスター・ウンチッチの舌が焼けこげ、縮むと、ウンチッチは、甲高い摩擦音のような悲鳴をあげる。


「えっ……?」

 その姿を目にした瞬間、ウンチッチに飲まれそうになっているにもかかわらず、ゲオンの顔が紅色に染まり、熱を持つ。


「スター・エンジェル、参上よん♡!!」

 可愛らしい声でポーズを取ったのは、ベルティアだった。


 ピンク色の光から出てきた彼女は、とっても可愛らしい♡姿だった。


 ベルティアは、フリフリの可愛らしいピンク色のミニスカート姿で、ステッキを持っている。しかも、ツインテール姿が超似あっていて、可愛らしい。そのピンク色のステッキの先には、ピンク色のグロいオヤジの顔が乗っていた。


「まっ……魔法少女!!?」


「そうよん♡」

 びっくりして声を上げるゲオンに、魔法少女の可愛らしいフリフリのスカートの恰好をしたベルティアが、ウィンクする。


「なっ! 何でいきなり『魔法少女』なんだ!? 実は、魔女っ娘だったのかっ!?」

 ゲオンの灰色の目が、丸く見開かれる。


「いいえ。ただ、雰囲気でフリフリのキャピィーーーーン♡! に変身してみただけよ。

 私って顔とかめっちゃ可愛いから、こういう格好も似あうかもって思ったの! もちろん戦いも、魔法少女風で!」


 ゲオンを巻き込んだウンチッチの舌が長く伸び、ベルティアへと襲い来る。

 先ほど舌をやけどさせられ、スター・ウンチッチが、本格的に怒り出したらしい。

 

 ベルティア、いや魔法少女スター・エンジェル? は、機敏に動き、素早く追い来るウンチッチの舌を交わし続けている。


「萌え・ビーム!!」

 ベルティアことスター・エンジェルが詠唱(?)した。

 その途端、彼女が持つステッキの上に乗っているオヤジの顔が、デカい口を開く。

「萌えーーーーーーーーーー♡♡♡」

 オヤジが叫んだ。その瞬間、ピンクオヤジの口から、ピンク色の光線が出現する。


 ピンクの光線が、ゲオンも巻き込み、スター・ウンチッチの全身へとぶち当たる。


 すると、

“モェェェェェェェェーーーーーーーーーっ!!!♡”

「萌え―――――――――♡!!」

スター・ウンチッチの『声』にゲオンの声が重なり、妙な不協和音を奏でた。


 ゲオンの目が♡となった。スター・ウンチッチの目も♡と化している。


 ゲオンもスター・ウンチッチも、ピンク色の光線にやられたようだ。


「萌えっ、萌えっ、萌えっ、萌えっ萌え萌え萌えーーーーーーー♡!!」

「ちょっとゲオン! ……静かにしなさいよっ!!」


 目が♡と化したゲオンを、同じく♡目と化したウンチッチの口から一生懸命引き抜こうとベルティアが、ゲオンの上半身に手をかけ、引っ張る。


「萌え萌え萌えっ!!♡」

 ベルティアの声に、ゲオンは♡目になりながら、変な言葉? で返す。


「もう……! ゲオン、重いわねっ! いっくわよぉぉっ! うぐぅぅぅぅぅーーーーーーーーっ!!」

 ベルティアが力を込めた。すると、ゲオンの大きな体が引き抜かれる。


 ゲオンの下半身は、うんちっちのよだれと食したうんこで、べとべとになっていた。

 スター・ウンチッチの食料は、うんこなのである。


 そこで、ゲオンが正気に返る。

「魔法少女は可愛いけど、……ステッキがなぁ~……。ピンクのオヤジの顔がステッキの上に乗ってるのって、キモイなっ!」

 ゲオンがオヤジ顔を指さし、毒づいた。


 すると。

“カァァァァーーーーーーーーッ! ペッ!!!”

 何とオヤジの顔がゲオンの顔へ向け、痰を吐きかけたのだ。吐き出された痰は、ゲオンの左頬へとくっついた。


「うわっ! どんな拷問よか酷い『拷問』だぁぁぁぁ~~~~~!!」

 ゲオンが情けなく叫ぶ。


「ただ可愛いだけの魔女っ娘だったら、つまんないでしょ? 遊び心ってのも大事よ! だから、ステッキをオヤジにしてみたのっ!」

 茶目っ気たっぷりにベルティアこと、スター・エンジェルが言う。

 

 茶目っ気たっぷりに、そんな事を言うベルティアに、痰を吐きかけられたゲオンの顔が、又もや赤面する。


 ベルティアは、普通の時でも可愛らしいのだが、フリフリスカートの魔法少女姿になると、もっともっと可愛い。

 ゲオンは、赤面せずにはいられぬような感じであった。


 だが。

 スター・ウンチッチも我に返り、自分をメロメロ♡にしたベルティア目掛けて、真っ赤な長細い舌を伸ばす。


「今度は俺の番だ!」

 ゲオンが背中の太い剣を抜き、スター・ウンチッチを、一瞬で真っ2つに裂いた。

 

 空間全体が割れるかのような悲鳴を上げつつ、ウンチッチは、塵となり、消え去っていったのだった。


「……ほぉ~、一瞬で倒したってか……。」

 そんなゲオンの姿を、ベルティアが目を丸くしながら見つめている。

 

 強いと言われているだけのことはある。この男の強さは、確かだ! ベルティアは、ゲオンのことを言っていた翁の顔を思いだしていた。

 


スター・ウンチッチが消え去っていった中から、2つの輝く真っ赤な石が現れる。

「これは、オラシオンっていう名前の石だ。真剣に願うと1つだけ神様が願いを叶えてくれるっていう石さ」

 ゲオンが知識を披露し、ベルティアの細い手の中に2つのうち1つの石を握らせた。


「結構高値で売れるんだ」

 ゲオンは、先ほどまで魔物に飲み込まれそうになっていたのに、楽しそうだ。


 ゲオンの言葉に、しかしベルティアは、複雑な表情を見せた。


 変身をとき、元の姿へ戻ると、濁ったような表情で、言葉を綴る。

「……あのね、ゲオン。神様なんてものは、いないのよ」

 なぜか悲し気なベルティアに、ゲオンは想わず彼女を抱きしめた。


「ちょっ……! いきなり女の子に何するのよっ!」


「悪い……! 俺の体が勝手に動いちまった。そんな風に神様を否定するなんて、今まで辛い経験してきたのかなぁって思ってな」

「……してないわ」

 ベルティアは、ゲオンの体から無理やり離れる。いきなり抱きつくなんて、この男の距離感は、おかしい! ベルティアは、ゲオンの方を向く。


「……ところでゲオン。下半身、無防備すぎよっ!」

 顔を真っ赤にし、彼女の顔が横を向く。


「ああっ!」

 ゲオンは、顔をポストのごとく真っ赤に染めた。

 用足しをしようとしていたのだ。

 ゲオンはズボンを脱ぎ、チンコ丸出しでいたのだった。



「それじゃあ、ゲオン! 私は先を急ぐから!」

 この男に構っているひまはない。私はさっさと、金貨千枚の剣の所へ行きたい! ベルティアは、ゲオンを残して歩きはじめる。


「ちょっと待てよ!」

 先を急ごうと歩き出す白金髪の美しい少女の手を、ゲオンがつかむ。


「うんこ臭い手で私に触れないでくれる?! あなた、強いからもう、大丈夫でしょ?」

 ベルティアが、臭いに顔を歪めながら、ゲオンを睨みつけた。


 こんなムサイヤローといつまでも一緒にいたくない! とにかく今は先を急ぎたい!!


 だが、ゲオンはうんこ臭を全身にくっつけつつも、ベルティアの手を離さなかった。


「離すわけにはいかねぇだろ? 俺は君に助けられはした。礼を言う。

 だが、それとはまた、別の問題がある。

 君はちっさいとはいえ、れっきとした女の子だ! か弱い女の子を、危険なダンジョンに1人放っておくことなんて、できるはずないだろ?」


「って、ちっさい言うな! 私は強いのよ。あなたもさっき、私に助けられたじゃない?」


「だけど、俺は君をダンジョンに1人にしとくなんてできないな!」

 ゲオンが真剣な表情で、ベルティアのマリンブルーの湖のような2つの瞳を見つめる。


「私はムサイ男といっしょなんて、嫌よ!」

 ベルティアは、1人で先を急ぎたいと言ってきかない。ミリアと一緒ならいいけども、こんなムサイヤローといっしょは、嫌だっ!


「じゃあ、俺がこのダンジョンを案内するってことではどうだ? 俺は何度となくここへ来ているぜ。

 ダンジョンのことは、よく知っている。

 俺がダンジョンを案内するよ! それに。さっきは運よく勝てたみたいだけど、君はちっさいから心配なんだ。

 とにかく、か弱い女の子をダンジョンに孤立させるなんて薄情なことは、男の俺にはできないってことだ!」


 『ダンジョンをよく知っている』その言葉に、ベルティアの心が動く。


 そうよ。私はここ、初めてだし。ゲオンはさっき、ものすんごくドジだったけど、でも強いし……。


 道案内してもらうのも、いいわね。

 それにこいつ、ミリアの所で会った時は、最悪な奴って思ったけど、私が感じたよりも良い奴そうだし……。


「それじゃあ、案内頼むわね。

 ……でもね。」

ベルティアが、困ったような表情をする。


「あんたね、さっきから臭いわよ! 女の子を連れて歩くんだったら、泉で体と服を洗いなさいねっ!!」

 ベルティアは、顔をしかめ、鼻をつまみつつ、ゲオンとは逆の方向を向いたのであった。



 

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