23なる物語 まさかの……!!

 それから一カ月絶っても、月のものが来ない。


 嫌な予感が、体中を駆け抜けてゆくのを感じつつも、何も無かったことにした。

 月のものの周期が乱れる時だってあるわ。だから、そういうことなのよっ!


 しかし、待てども待てども、月のものが来ない。考え出すと怖くて倒れそうになるので、ベルティアは、何も考えず、時を過ごすことにした。


 このまま何もなく過ぎてゆけばよかったのだが、ベルティアが衝撃を受けるその「事実」が、ある時彼女を直撃した!!


 ある時、ベルティアは、ゲオンと食事している途中に嘔吐した。

「!!!」

 ベルティアの顔が真っ青に染まる。まさか……。悪い妄想で終わってほしいっ! こんなこと、あってはならないのだから……。


 それから数度、ベルティアは嘔吐した。

 ゲオンが、具合が悪いようだから、医者へ行けと言う。


 そこで、ゲオンが仕事へ出ている間、重い足を引きずりながら、仕方なく医者へ向かったのだった。


 医者へ行くと、望んでいなかった結果が待っていた。


 ヴォヴゥレの村の医師に妊娠を告げられた瞬間、ベルティアの心に、強い恐怖と不安が渦巻き、頭が動かなくなった。


 喜びなど、微塵も感じられず、強い恐怖で体が硬直する。

 目の前が黒い霧で包まれ、その場に倒れてしまったのだった。


 ……うそ……!? とうとうできてしまった……。どうしようっ!! 私があの時、避妊の魔術をかけ忘れたからだっ……! これは、禁忌を犯して甦りの魔法をかけた時よりも、重い事実だっ!


 ベルティアの意識は、不安と恐怖が渦巻く黒い霧の奥底へと沈んでいったのであった。


「汝、罰せられるが定めの者なり!」

 凛とした厳しい声が上方で聞こえてくる。

 ベルティアは、深い泥の底のさらに奥深くへと沈んでいった。


 泥の奥底へ沈んだベルティアを、朽ち果てた赤ん坊たちが、さらに下へと沈めてゆく。

 重苦しい泥の感覚が彼女の体にまとわりついた。泥が、彼女の体へ圧力をかけていく。


 赤ん坊たちがベルティアを沈めていったその先には、赤ん坊の両親たちが、ベルティアを待っていた。

 

赤ん坊の両親たちは皆、髑髏と化し、赤ん坊たちも徐々に髑髏となっていく。


「罪の証!!」

 再び上方から凛とした声が聞こえ、赤ん坊たちの両親が、その髑髏の口をケタケタと鳴らしながら笑った。


 赤ん坊の両親たちは、ベルティアを縛りつけ、火あぶりにした。


 ベルティアの体を、熱量を帯びた金色の炎が包み、彼女の体を焼いていった。

「いやぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~!!! ごめんなさ~~~~~~~~いっ!!」

 ベルティアは炎で焼かれながら、体中からひねり出すかのような悲鳴をあげていた。


 髑髏たちのケタケタと笑う「声」は、途絶えることなく、ベルティアの耳に響いていく。

 ……私は、汚い存在なんだ。髑髏たちに消されてしまってもいい、汚い存在なんだっ!!


「いやあっ! ごめんなさいっ!!!」

 ベルティアは、思わず飛び起きた。


 ここは一体どこだろうか? 下に柔らかい感触がある。大量の汗をかいている。呼吸が苦しいっ!!


 苦しすぎて、おぼれるように息を吸うベルティアを、大きな体が抱きしめた。

「ゲッ……ゲオン!?」

 ベルティアは、汗まみれの体を夫に抱かれながら、ベッドの上で、大きくゼイゼイと息を吐いていたのであった。


 

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