24なる物語 決意

「大丈夫か? お前、かなりうなされてたぞ?」

 ゲオンが心配げな表情で、ベルティアの顔をのぞきこんだ。


「そんなに俺との間の子は、産みたくないのか?」

 そうだ! 私はゲオンの子を身ごもったんだ! ここは、医院の中の個室らしい。


 どうやら医師が、ゲオンに妊娠のことを告げたようだ。

 ゲオンの顔は、悲しみに歪んでいた。


 このままゲオンの元を離れ、1人で子を降ろし、何もなかったことにして、その後は、1人で過ごすことだってできる。つまり、完全に「責任」から逃げることもできる!


 私のような特殊な存在が子を産むよりも、その方が論理的には正解だ!

 

 ……けれども、ゲオンが好きでたまらない! その強い想いを消すことが、どうしてもできない。


 ゲオンと離れると思うと、身を引き裂かれるかのように辛く、悲しかった。


 ゲオンから離れて子を降ろし、1人でまた、生きていく! それが正解であることは、分かっている。


 でも、ゲオンとの楽しい時間が走馬灯のように思い出され、ベルティアの決意を打ち消していく。


 ……どうするべきか?

 ベルティアは1人、深く悩んでいた。


 迷路から永遠に出てこれぬかのような不安が襲い、体中が粉々に打ち砕かれてしまうかのような強い恐怖を感じる。


 自分は一体どうしたらいのか……?

 改めて考えてみようとするが、答えにぶち当たらず、心の迷路をさ迷い歩く。


 だが。

 とりあえず、1つの結論に達した。


 こうなってしまった以上、真実の一部を話そう! そう、強く決意した。

 この真実は、ゲオンが一生を終えるまで、話したくなかったんだけれども、仕方がない。


 本当は、絶対に知られたくなかった。

 でも、話さねばならないタイミングを迎えてしまったことを、ベルティアは、強く感じていた。


 しばらくゲオンと愛し合いながら、甘い時を過ごしたかった。真実を話すことなく、ただただ、愛し合っていたかった。


だが、どうしても真実の一部を話すことが、必要になってしまった。そのことをベルティアは、自覚した。

「ゲオン、あなたに話がある」

 そう言い、ベルティアは、ゲオンと共に、この医院をあとにした。


 2人を見送る医者は、不思議そうな目で、彼らを見ていたのだった。

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